イルミンスール魔法学校

「大変です！　ケーキが襲ってきました！」
　そう、その日。
　蒼空学園は、シフォンケーキの強襲を受けたのです。


　事の発端は、蒼空学園の家庭科室で起こりました。
　家庭科室にいたのは、料理部に所属するリシェル・アストパーズと雪白　未散の仲良し二人組。クリスマスが近い事もあって、クリスマスケーキの試作にとココア味のシフォンケーキを焼いてみることにしたのです。
　そのときでした。面白い調理グッズを手に入れたと、リシェルが紋章入りのシールを取り出しました。
　その二枚のシールを貼れば、調理が速く済むというのです。二人は半信半疑、半分以上冗談のつもりで、調理器具にシールを貼りました。
一枚はオーブンに。シフォンケーキが大きく膨らむように。
一枚は生クリームを入れたボールに。生クリームの泡立てが速く終わるように。
　ところがこのシール、魔法がかかっていたのです。魔法シールは少女達の願いをかなえました。……ある意味、その効力のとおりに。
「えええ！？」
　シフォンケーキは膨らみました。いや膨らみすぎたのです。
　ほんの20センチほどだったケーキは、シフォン型からはみ出し、オーブンから飛び出し、さらに室内を覆いつくし、いまや学園の屋上に届きそうなサイズに大膨張しています。
　生クリームはといえば、攪拌が速くなる筈だったのに、なぜかクリームを入れたボールに足が生えました。
　そのまま走り去るボール。速い。速いです。中の生クリームを時々こぼしながらも、ボールは疾走します。こぼれた生クリームで転倒する生徒がいても、お構いなしに走り回っています。
　ただ、何かの抑制が働いているのか、蒼空学園の外周を周回しているようです。
　リシェルと未散にできたのは、自分たちにせまるシフォンケーキから逃れることだけでした。
　テーブルの下に隠れたので、今のところは無事でいます。が、放っておけばシフォンケーキの所為で窒息してしまうでしょう。また、走り回っているボールからこぼれた生クリームによって、転倒事故が続出するとも限りません。
　シールをはがせば暴走は止まります。家庭科室までケーキのトンネルを作り、何とかシールをはがしてください。閉じ込められてぐったりしているリシェルと未散の救出と回復も必要です。
　また、走り回っている生クリームの暴走を止めて下さい。掴まえてシールをはがせばおとなしくなります。
　うまく救出できれば、最後にみんなで美味しいシフォンケーキを味わうことができるでしょう。

　なお、リシェル・アストパーズは金髪碧眼の色白な少女、雪白　未散は黒髪黒目の少女です。二人とも、制服の上に料理部がそろいで作った白いフリルのエプロン、頭に三角巾をつけています。

　お初にお目にかかります。
　新しくゲームマスターとして活動させていただくことになりました、日曜　快晴と申します。

　のっけからゆるゆるなシナリオですので、皆様がのんびりと楽しんでくだされば幸いです。舞台は蒼空学園ですが、他校の皆さんも勿論ご参加可能です。その際は「たまたま蒼空学園に交流に来ていた」「ケーキの甘い匂いに誘われてやってきた」など、現場にいる理由付けをしていただければと思います。

　何しろ敵はシフォンケーキだけに、ジャンルは学園生活ですが内容はコメディ色の強いものとなると思います。万が一シリアスなアクションを望まれる方がいましたら、その旨記載をお願いします。

　なお、巨大化し続けるシフォンケーキや走り回る生クリームを止めるには、「オーブンの扉」と「生クリームの入ったボール」に貼った魔法シールをはがしてしまえばOKです。ただしシールがはがれてもケーキが小さくなることはありません。（その状態で止まるだけです）
　ちなみに家庭科室の位置ですが、蒼空学園の１階にあるとさせていただきます。東西に窓があり、東の窓はグラウンドに、西の窓は廊下に面しています。
　また、シフォンケーキを焼いていたオーブンは、すでに火が消えています。ケーキの膨張で扉が開いてしまったからです。
　リシェル・アストパーズと雪白　未散（ゆきしろ　みちる）が隠れているテーブルは、家庭科の授業で使用する大きな作業台です。頑丈ですからちょっとの衝撃では壊れませんが、周囲をケーキが埋め尽くしているため、二人は真っ暗な中でお互いの手を握ってうずくまっています。
　ちなみに二人の容姿の補足ですが、リシェルは胸先ほどの長さの金髪を耳の横で二つ結びにし、その上に三角巾をつけています。未散は肩口の長さの黒髪を後ろで一つに結び、同じく三角巾をつけています。リシェルより未散の方が１０センチほど身長が高く、スレンダーな体つきです。学年は二人とも同じ２年生とします。

・リシェルと未散を助ける

・生クリームの暴走を止める

・ケーキを食べる

・せっかくだからお茶の用意をする