イルミンスール魔法学校

　シャンバラの北東部、エリュシオンの南西部に位置する国、カナン。

　約束の地といわれるこの国は「世界樹セフィロトの化身であり豊穣と戦の女神イナンナ」とそれを補佐する神官の力により、国は緑にあふれる豊かな国、でした。


　砂に埋もれた岬の先で、この国の領主であるドン・マルドゥークは10歳前後の褐色の肌の少女に一礼をしました。
「それでは、行って参ります」
「ねぇマルドゥーク、やっぱり……」
　少女が歩み寄るのをマルドゥークは首を振って制して、
「良いのです。妻も……娘もきっと分かってくれます」
　マルドゥークの恰幅の良い体が乗り込むと、パラミタラクダの足はズッと砂に沈み込みました。
「東西シャンバラへの応援要請は密使にて通達済みです。カナンの現状を話せばきっと……いや、何としても協力して貰えるよう説得します」
「でも……」
「女神様」
　彼は真っ直ぐに褐色の肌の少女の瞳を見つめると、
「この国を、救いましょう」
　彼はパラミタの地を目指して一人、歩んで行きました。

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　―――蒼空学園、校長室。

「蒼空学園としては是非ともドン・マルドゥークさんに協力したいと思う。ジェイダス校長はどうだ？」
『差し伸べられた手を振り払う理由はない。パラミタに住む者としてカナンと良い友好関係を築いてきたいと思う』
『わっちも、困っている人を助けるのに理由は必要ないでありんす！』
『（私も賛成だ。エリュシオンの龍騎士はカナンを経由してシャンバラに来ている）』
『そのルートの１つが潰せますしねぇ。イルミンスールの上を飛んできてウルサイですぅ』
『カナンを押さえられれば、後は教導団が第４師団を派遣しているコンロンのみになるのだよ』
『機動力の高いコントラクター達を派遣した方が、現地での小回りも利くだろう』

　山葉　涼司（やまは・りょうじ）の呼び掛けに、モニター越しに各校の校長達は皆賛同しました。
　征服王ネルガルからカナンを奪還するべく、ドン・マルドゥークはシャンバラの各校を回り、有志を募りました。それが今実ったのです。
　この場にはいませんが、百合園女学院のラズィーヤ・ヴァイシャリー（らずぃーや・う゛ぁいしゃりー）も賛同し、波羅蜜多実業高等学校の掲示板に依頼書を貼り出しました。

「何とも頼もしい事か」

　ドン・マルドゥークは心押される思いがしました。
　今回の敵は「一国」。イナンナの力を手に入れた征服王ネルガルに、彼に従う神官たち、更にはカナンの各地に放たれたモンスターとも戦うことになるでしょう。
　東西シャンバラの協力を得られたこと、そして生徒が多く集まってくれているとなれば。カナンの地で待つイナンナにも、また今もモンスター達とのゲリラ戦を繰り広げている民たちにも良い報告ができることでしょう。

「待っていてください、女神様」

　ドン・マルドゥークは改めてカナン奪回を心に誓うのでした。



　金　鋭峰（じん・るいふぉん）の提案により、各校の生徒達に依頼が出されました。
　また、生徒達の派遣は、一匹狼の女空賊フリューネ・ロスヴァイセ（ふりゅーね・ろすう゛ぁいせ）が有する古代戦艦ルミナスヴァルキリーで行われることになりました。
　フリューネはドン・マルドゥークに協力する事に加えて、彼女が所有する戦艦を提供すると名乗り出たのでした。
　しかし、ルミナスヴァルキリーに搭乗できる人数には限りがあります。

「それにルミナスヴァルキリーは目立ちますから、ある程度の人数はジャタの森から陸路でカナンに入った方がいいかもしれません。そちらはわたくしが同行いたします」

　フリューネの5000年前の先祖、ユーフォリア・ロスヴァイセが陸路からのカナン入りを提案しました。
　彼女は“マッハ”の異名を持つヴァルキリーで、5000年前の戦いでは鏖殺寺院の飛空艇を単独で千機撃墜したといわれています。

「そうして頂けると助かります。ジャタの森を越えた国境にオレの部下を待たせましょう」

　ドン・マルドゥークは机上に広げられた地図に合流地点の丸を付けました。

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「何？　マルドゥークがシャンバラに？」

　カナンの中央、神聖都キシュの宮内にて、征服王ネルガルは黒水晶に目を剥きました。
　水晶に映る人影は、怯むことなく報告を続けます。ドン・マルドゥークが蒼空学園を訪れた事、東西シャンバラがカナン奪還の協力要請に応じた事、更にはユーフォリアが陸路から西カナンを目指している事も含まれていました。

「マルドゥーク……。奴のところは妻の他に娘も捕えてあったな。見せしめに砕いてくれようか」

　ネルガルが部下を呼びつけようとした時、背後でヘルハウンドの咆哮が幾つもに上がりました。
「何じゃ、お前等も奴の裏切りが許せぬか」
　頭上では首輪を付けられたワイバーンが、応えるように翼を羽ばたかせて寄声を上げています。

「よかろう、共に駄民をついばみに行くとするか。向かい来るシャンバラの者共々にのう。駄民と言えば、ワシは鷹山からＡ級四天王という称号をもらっておったな。丁度いい、駄民の同士討ちも面白い」

　裂けるように口端を上げると、蔑むように黒水晶を見下ろしたのでした。

　「【カナン再生記】　降砂の大地に挑む勇者たち」がご好評につき、第二弾をお送りいたします。
　ドン・マルドゥークは各学校を回って協力を呼び掛けていますので、学校に関係なく気軽に参加いただけます。
　ただ、申し訳ございませんが、既に「【カナン再生記】　降砂の大地に挑む勇者たち」へ参加された方はご参加をご遠慮くださいますようお願いいたします。
　連続参加された場合は見送り扱いとし、描写されませんのでご注意ください。

　本シナリオは新シリーズ『カナン再生記』のプロローグ的な内容です。
　カナンの各種設定などを紹介した特設ページも開設され、各学校入口から行けますので是非ご覧ください。

　皆さんは、ユーフォリアと一緒にジャタの森を越え、陸路より西カナンに入ります。西カナンとの国境にはドン・マルドゥークの部下が案内人として待機しています。
　カナンは荒廃が進み、特に西カナンは砂漠化していますので、十分装備を整えてください。特に乗り物は砂漠で使えないものも出てきます。

　また、ネルガルが何やら画策しているようです。
　彼が指揮する神官軍は翼竜ワイバーンと、地獄の番犬ヘルハウンドを従えています。空を飛ぶワイバーンは足が砂に取られやすい砂漠では強敵ですし、ヘルハウンドは炎のブレスを吐きます。
　神官軍やモンスター軍団、シャンバラではお馴染の集団（！？）と遭遇する可能性もありますので、気を引き締めて臨んでください。

・西カナンの現状を確認する

・神官軍と戦う

・カナンでもヒャッハー！！