イルミンスール魔法学校

「ね、エンジュ。キレイだよね」
　イルミネーションに彩られた街並み。
　キラキラしいその輝きを見上げ、市倉奈夏はご機嫌でした。
　紆余曲折を経て、パートナーであるエンジュと若干なりとも距離を縮められ、今こうして一緒にクリスマスを過ごす事が出来るのですから。
「……」
「エンジュ？」
　けれど応えはなく、振り返った奈夏が見たのは、夜空に向けて攻撃を仕掛けるエンジュの姿でした。
　更にエンジュの攻撃対象へと向けると、空中に浮かぶソリを引いたトナカイと、それから見覚えのある赤い服を着た女の子がいたりして。
「未確認飛行物体（アンノウン）を発見しました……撃破」
「えっあれっ？　ちょっあれ、サンタさんだから！？……って、早っ？！」
　奈夏が止める暇もありませんでした。

　ちゅどぉぉぉぉぉぉん。

　「うっひゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ！？」

　憐れ、サンタのフレデリカ・ニコラス嬢は撃墜されてしまったのでした……合掌。


「はぅ〜、酷い目に遭ったよ」
「すみませんごめんなさい本当に申し訳ありませんでした！」
「……すみません……あまりに奇抜で怪しかったもので……つい」
　そして今、奈夏とエンジュの目の前に居るのは、黒こげになったサンタ少女でした。
　聞けばこの女の子、サンタクロースとして親しまれている英霊・聖ニコラウスの孫娘だと言うのです。
「パラミタって本当に、本物のサンタクロースがいるのね」
　感心した奈夏でしたが次の瞬間には、青ざめフレデリカに謝り倒し始めたのでした。
「エンジュにサンタさんとか話してなかったんです、すみませんごめんなさい本当に……」
「まぁ過ぎた事はいいの。ケガも大した事、ないし」
　確かに幸い、サンタさんもトナカイさん達も大したケガではありませんでした。
「ただ、問題は……」
　墜落の際、バラまいてしまった子供達へのプレゼント。
　本やオモチャといった物は何とか無事だったのですが、クッキーやお菓子の家などが粉々に砕けてしまったようなのです。
「ふぇぇぇぇぇぇぇっ！？　ごっごめんなさぁぁぁぁぁぁい」
「今夜中に配らないと、なのですか？」
「うん。ツァンダ以外の場所には、友達とか応援を頼んだの。でも、ツァンダだけは何としても配らなくちゃ」
　そうしてフレデリカは、この事態を引き起こした少女達に有無を言わせぬ笑顔を向けました、にぃぃぃぃぃぃっこり。
「手伝って、くれるよね？」
「……ムリですっムリムリムリ、サンタさんとか絶対、無理ですって！」
　と、奈夏が悲鳴を上げました。
「大丈夫、だいじょ〜ぶ。一日サンタとか結構イケたし。このリストにね、配る家の場所と子供の名前・渡すプレゼントが書いてあるから」
「そうでなくて！　空飛ぶソリとか箒とか、煙突や窓から侵入とかって、ムリだから！」
　そういえば奈夏は空飛ぶ箒に乗る事も出来ない、蒼空学園生徒とは思えないガッカリな女の子だったのです。
「ん〜、じゃあキミはプレゼント製作担当で！」
「……プレゼント製作？」
「近くの孤児院のデカいキッチン借りられたの。で、そこで足りなくなったプレゼントを作って欲しいの」
「お菓子作り……でも、プケゼントを配るよりはマシ、かしら？」
「私は……プレゼントを配ります……」
「……ぁ、そっか、そうだよね、うん」
「じゃあ決まりという事で！　とりあえず二人とも、コレに着替えてね♪　後、他にも助っ人を呼ばないと」
　こうして、クリスマス大作戦☆、は始まったのでした。
「うぅ、折角のクリスマスなのに……」


「野郎共！　ついに時は来たぜ！」
「「「お〜！！！」」」
　その頃、ツァンダのあまり治安のよろしくない一角で、勇ましいというには可愛らし過ぎる声が上がっていました。
　声の主は、最近住みついたストリートチルドレンの子供達でした。
　ツァンダにも孤児院などの施設はあるのですが、それでも、零れ落ちてしまう存在というものはあるようで。
　薄汚れた格好をした子供達はそれでも皆、ギラギラした瞳をしていました。
「欲しいモノは自分の手で掴み取る！　プレゼントは俺達のモンだ！」
　クリスマスプレゼントは『良い子』しか貰えません。
　故に一度ももらった事のない子供ばかりでした。
　だからこその、サンタを襲撃してクリスマスプレゼントゲットだぜ！、な作戦なのでした。
　そうして。
「……いただき！？」
「………………？」
　エンジュ他、臨時サンタが、背負っていた袋を奪われるという事態が引き起こされたのです。
「うわっ、何？　プレゼントドロボー！……って子供？！」
「……アレは取り返します……アナタは配達を優先……させて下さい」
「分かったわ、気を付けて。……あの、くれぐれも無茶はしないでね」
「……善処します」
　刻一刻と時が過ぎる中。
「クッキーってどうやって作るんだろ？」
　聖なる夜、あっちもこっちも大変な事になっていくのでした。

　初めましての方も、またお会いできましたねの方も、藤崎ですこんにちは。
　クリスマスシナリオをお送りします。
　今回は、サンタとしてクリスマスプレゼントを子供達に配る、襲撃者からプレゼントを取り戻す・襲撃者を撃退する、プレゼントを作る、友達や恋人とクリスマスを楽しむ（巻き込まれないで済めば、ですが）、が主な行動になるかと思います。
　NPCとして「紅葉狩りしたいの」の奈夏とエンジュです、前作を知らなくても全く問題ありません。
　奈夏はあり得ないくらいロースペックな蒼空学園一年、エンジュはムダにハイスペックだけど常識知らずな機晶姫、なまだまだぎこちないパートナー同士です。
　それから、サンタ少女のフレデリカ嬢をお借りしました、可愛いサンタさん万歳！
　皆さんのアクションを楽しみにお待ちしています。

・クリスマスプレゼントを配る

・襲撃者を撃退する

・クリスマスプレゼントを作る

・クリスマスを過ごす