空京

それは幻のような、けれど「そこにある世界」のおとぎばなし――

　２０２１年９月。
　地球とパラミタ、二つの世界の命運をかけた戦いから、二ヶ月あまりが過ぎました。

「確かに今なら、未踏の地であるあの国――ティル・ナ・ノーグまで行けるかもな」

　空京万博も間もなく閉幕という時に、その話は上がりました。

　浮遊大陸パラミタ東部に位置する国、ティル・ナ・ノーグ。
　多くの妖精が集う平和な国と言われており、花妖精もそこの生まれとして知られています。

　しかし、まだその場所まで辿り着いた地球人は少なく、パラミタの中で最も未知の地域でもあります。
　これまでも何度か調査の試みがありましたが、エリュシオン帝国との戦争やマホロバでの動乱があったため、ティル・ナ・ノーグの地に足を踏み入れるのは困難な状況が続いていました。

　それが解決した今が、いい機会です。

　蒼空学園校長、山葉　涼司（やまは・りょうじ）の呼び掛けにより、蒼空学園を中心にシャンバラ各学校の生徒が集まり、調査団が結成されました。



　――浮遊大陸パラミタ東部。

「海、何か見つかった？」
「あ～……特には」

　今年入学した蒼空学園の一年生、雅羅・サンダース三世（まさら・さんだーすざさーど）と高円寺　海（こうえんじ・かい）は調査団の一員として、ここまでやってきました。

「それにしても、ずいぶん歩いた気がするわね。いつの間にか他の人達の姿も見えなくなっちゃったし。
　……あれは？」

　ふと、遠くに小屋が見えました。

「村……か？」

　雅羅と海はその小さな村らしき場所を見回します。
　すると草陰からガサッ、という音が聞こえてきました。

「子供、よね？」

　頭に咲いた牡丹の花を見るに、花妖精の子供のようです。

「あ、待って！」

　しかし、子供はそのまま二人に背を向けて走り出してしまいました。
　その後を追いかけると、そこには花畑が広がっていました。

　花畑の中に、蔦が絡まったジョウロで花に水を遣っている、一人の少女の姿が見えます。

「この地に人が訪れるなんて……いつ振りでしょうか」

　二人の姿に少し驚いたものの、すぐに彼女は微笑みを浮かべました。
　遠目からは分かりませんでしたが、彼女のエプロンドレスは長い年月を経ているのか、所々ほつれており、彼女の身体の皮膚は一部が剥がれていました。
　その下には金属が覗いています。

「私はドロシー・リデル（どろしー・りでる）と申します。
　ようこそ、ティル・ナ・ノーグへ」

　機械仕掛けの少女――ドロシーは一礼しました。

「ここが、ティル・ナ・ノーグ？」

「正確には、ティル・ナ・ノーグの『ハイ・ブラゼル地方』。その外れにあるのが、この村です」

　彼女によると、この村がティル・ナ・ノーグへの入口の一つ、とのことです。

「お疲れでしょう。よろしければ、こちらでゆっくりされてはいかがですか？」

「ええ、ではお言葉に甘えて」



　海と雅羅は、調査団に花妖精の村にいることを伝えました。少し前は無線が繋がりませんでしたが、今は近くにいるらしく有効でした。

「ではまだ見ぬ土地を知るために、遥か西の国からここまでいらしたのですね」

　ドロシーに対して、シャンバラ王国から調査団としてやって来たこと、近くに自分達の仲間がいることを話しました。

「実は、この地方には古くから伝わる『おとぎばなし』があるんです。子供達にもよく聞かせてるんですよ」

　その内容とは、次のようなものでした。

『遥か昔、「大いなるもの」と呼ばれる邪悪な存在が誕生し、ハイ・ブラゼルを、しいてはこの世界を飲み込もうとしていました。
　その危機を救ったのは異国からやって来た戦士達でした。
　彼らとハイ・ブラゼルの人達は一つになり、激しい戦いの末に「大いなるもの」を封印しました。
　そしてこの地に平和が訪れたのです』

「この話には、まだ続きがあります」

　ドロシーが静かに告げました。

「『異郷より来たりし者、閉ざされた世界に光を照らさん』}
　あなた達がここを訪れたのは、もしかしたら偶然ではないのかもしれませんね」

　そのとき、慌てた様子で花妖精の子供が駆けてきました。
　雅羅と海が最初に出会った牡丹の花の子です。

「どうしたの、ピオニアちゃん？」
「ドロシーおねーちゃん、大変だよ！　村外れの遺跡から、見たこともない場所に行けちゃった！」
「まさか……いえ、でも封印に綻びが生じ始めているのだとしたら」
「……一体どうしたんだ？」

　海が不安げな顔をしているドロシーに尋ねます。

「この村の外れには、かつて『大いなるもの』との戦いがあった時代の遺跡が存在するのです。先ほどのお話は、実際にあった出来事を元にしたものです。
　遺跡の数は四つ。
　封印の数も四つ。
　この村にはこのような言い伝えもあります。
　『「大いなるもの」蘇らんとする時、封印の地への道が開かれるだろう』と。
　ついにその時が来たのでしょう」

　ドロシーによれば、「その時」が来たら四つの遺跡の近くに異空間への入口――ゲートが現れ、ハイ・ブラゼルの『大いなるもの』が封印されている地へと飛ぶことが出来るようになるとのことです。

「みんな、大丈夫だった？」
「うん。最初はびっくりたけど、ちゃんとみんな戻ってきてるよ」

　そこへ、間もなく調査団が村へ到着するとの報せが入りました。
　それを聞き、雅羅はドロシーに提案します。

「もうすぐ、わたし達の仲間が来るわ。四つのゲートの先にある世界の調査。わたし達に任せてくれないかしら？」

　元々未踏の地の調査ということでやってきたわけであり、この現象は実に興味深いものでした。


　今、ハイ・ブラゼルを舞台に、新たなる「物語（おとぎばなし）」が始まろうとしています――。

　新たな冒険の始まりです。

　こちらは新シリーズ「重層世界のフェアリーテイル」のオープニングシナリオとなります。

　これまでの『蒼空のフロンティア』のメインストーリーからは独立したシリーズとなりますので、これから新たにゲームを始められる人でも、このガイドをお読み頂ければゲームに参加できるようになっています。お気軽にご参加下さい。

■このシナリオについて

　このシナリオの目的を改めて端的に表しますと、四つの遺跡のいずれかからそれぞれ別の「世界」に飛び、
　・そこがどんな場所か調査を行う
　ということが中心となります。

　それ以外にも花妖精の村で交流を楽しむ、ということも可能です。

　それぞれの世界では何らかの「異変」が起こっており、それを知ることも目的の一つと言えるでしょう。

　また、四つの世界は全く異なる文化を持っています。各世界は以下のようになっております（ＰＣはまだ詳しいことは知りませんが、各遺跡の特徴からどういった雰囲気の世界に通じているかの予想はついています）


【１】第一世界（イコン参加不可）
担当：風間　皇介

　人と幻獣が共に生きる、自然の豊かな世界です。
　ゲートを抜けた先には大平原が広がっており、少し歩けば村に辿り着けます。
　村に行くまでに幻獣と遭遇するかもしれません。
　この世界では魔法よりも、物理攻撃が強い力を持つ世界となります。
　こちらには、ＮＰＣ篁　透矢が同行します。

【２】第二世界（イコン参加不可）
担当：名も無き詩人

　魔法が一般化している、中世ヨーロッパのような世界です。
　ゲートを抜けた先は街となっています。
　多くの人で賑わっている場所ですが、人気のない裏路地などに行くと襲われることもあるかもしれません。
　第一世界とは対照的に、「魔法こそが力を持つ」世界となります。
　こちらには雅羅・サンダース三世が同行します。

【３】第三世界（イコン参加可）
担当：黒井　威匠

　高度に科学が発展した、近未来的な世界です。
　ゲートを抜けた先は軍隊の前線基地のような建物の近くです。
　イコンに乗った場合、未確認飛行物体からの攻撃を受けることになります。もちろん、戦闘ではなくただ偵察するということでも問題ありません。

【４】第四世界（イコン参加不可）
担当：丹野佑

　アメリカの西部開拓時代を彷彿とさせる、荒野と砂漠が広がる世界です。
　ゲートを抜けた先も荒野ですが、遠くに酒場のような木造の建物が見えます。
　カウボーイのような格好をした無法者と遭遇する可能性が高いでしょう。ですが、必ずしも戦闘アクションをかける必要はありません。

【５】花妖精の村（イコン参加不可）
担当：識上　蒼

　こちらは新規の方を含めた、キャラクター同士の交流を行いたい方向けとなります。村の中でピオニアをはじめとした花妖精の子供達や、ドロシーとほのぼのまったりする感じとなります。
　また、高円寺　海は花妖精の村で情報のまとめ役として待機しています。

■クラス適性
　上述の通り、各世界は全く異なる背景を持っています。
　そのため、一部のクラスはそれぞれの世界において高い適性を持ち、適性のないクラスよりも有利になります。
　各世界における適性クラスは以下の通りです。


・第一世界
　セイバー(剣士)、サムライ(侍)、フェイタルリーパー(大剣士)、ラヴェイジャー(梟雄)、ローグ(盗賊)、ニンジャ(忍者)、ナイト(騎士)、モンク(格闘家)、グラップラー(拳王)、ビーストマスター(魔獣使い)、ドルイド、ドラゴンライダー(龍の乗り手)、アドベンチャラー(冒険者)、スペランカー（洞窟探検者）

・第二世界
　ウィザード(魔法使い)、プリースト(僧侶)、フェルブレイド(魔剣士)、パラディン（聖騎士）、死霊術師(ネクロマンサー)、メイガス(賢人)、魔法少女、オンミョウジ（陰陽師）、ハイエロファント（神官）、ミンストレル（吟遊詩人）、ディーヴァ（歌姫）、シーアルジスト(召喚師)

・第三世界
　アーティフィサー(機工士)、サイオニック(超能力者)、コンジュラー（降霊者）
技術官僚(テクノクラート)、トランスヒューマン、スカイレイダー（空賊）

・第四世界
　ソルジャー(兵卒)、狙撃手(スナイパー)、ヘクススリンガー(魔銃士)、クイーン・ヴァンガード、ジャスティシア(判官)、トレーダー（商人）、バトラー(執事)、メイド(給仕)、セイヴァーシード(種もみ剣士)

■設定についてnew
・妖精の村について
　お茶会用の設備として、オーブン（調理用の石窯）があります。他、料理に必要な調理器具は一式揃っています。
　ただし電気やガスはなく、薪火が熱源です。

　紅茶になるようなハーブは生えています。探せば見つかると思います。

　妖精の村の広さは、四つの世界への入口がある遺跡まで範囲に含めると、大体１０ｈａくらいです。
　それなりに広い公園くらいです。

・連絡手段について
　携帯電話でのパートナー間の通話は可能です。

　籠手型・銃型ＨＣ共にアイテム説明にある使い方は可能です。

　その他可能なＰＣ間の通信につきましては、パートナー間での【精神感応】、他ＰＣ間での【テレパシー】はスキルの説明に則り、使用可能です。


■アクションの書き方について

　イコン参加可のシナリオでイコンを使用する場合、アクションを書く前に使用するイコンを選択します。

　アクションを書く際には、「目的」欄に必ず【１】～【５】のいずれかの番号を振って行動を書いてください。

　アクションの書き方については
　マニュアルなどに記載がございますのでそちらを参考にしてください。

　今回のように自由度が高いシナリオの場合、何をしていいか迷うこともあるかもしれません。
　その場合「サンプルアクション」を選んで頂ければ、サンプルとなる内容を記載しているのでそちらを元にアレンジして、自分なりのアクションを考えてみるのも良いでしょう。

■採用・不採用について
　無料版グランドシナリオはアクションの採用と不採用が存在します。
リアクションに出られない場合も存在するかも知れませんが、ご了承ください。
ただし、シナリオに参加すれば経験点や記念アイテムも配布されるので初めての方はふるってご参加ください。

■関連コンテンツ
　今回のシナリオに関連した「花妖精の村」というキャラクタークエストが公開されます。そちらもプレイされますと、より一層お楽しみ頂けるかと思います。

　また、キャンペーンページにハイ・ブラゼル地方のワールドマップが掲載されております。併せてご覧ください。


　それでは、皆様のご参加をお待ちしております。

2011年9月27日：追記
「■設定について」の項目を追加し、「・妖精の村について」「・連絡手段について」の説明を追記しました。

・【１】大平原で幻獣探し。

・【２】街で聞き込み調査。

・【３】イコンに乗って謎の飛行物体と対峙する。

・【４】無法者と戦う。

・【５】お茶会