なんだか色々ありまして、現在ホイップ・ノーン(ほいっぷ・のーん)の借金は119,500Gもあります。
「ホイップちゃん! 急な仕事で悪いんだけど、やって欲しい事があるんだ!」
宿屋のホイップの自室に慌てて飛び込んで来たのは、空京で薬屋を営んでいるおやじでした。
その額には大粒の汗が浮かんでいます。
「ど、どうしたの!?」
服の整理をしていたホイップは、手にしていた服そっちのけでおやじの元へと駆けよります。
「実は……ジャタの森の近くにある村が火事に――!」
「えっ!?」
ホイップは驚きのあまり目をまんまるに見開きました。
「消防の為の車両が行くことが出来ないんだそうだ……。だからホイップちゃん達が行って魔法で消火をお願いしたいんだ! 人命の救助も必要だろう! あそこには……あそこには弟が住んでいるんだ! 頼む!」
そう言うと床に崩れ落ちながらホイップへと土下座をします。
「うん! 皆に連絡して急いで向かうね!」
「有難う……有難う!! このお礼は必ずするから!」
ホイップの手を取ると泣きながら頭を何度も下げるのでした。
「頭を上げておじさん。いつもお世話になってるんだもん、お礼なんていらないよ!」
そう言うとホイップは杖と携帯を持ち、階段を急いで下りて行きました。
おやじはその後ろをついていきます。
「ホイップちゃん!? どうしたんです? そんなに慌てて」
階段を下りたところで宿屋の青年主人グラン・リージュが声を掛けました。
「あっ! えっとね――」
ホイップは今聞いた話をかいつまんでグランに聞かせました。
「そうですか……それならボクも少しはお手伝い出来ると思います! 一緒に行きますよ!」
「有難う! でも、良いの? 宿は?」
「大丈夫ですよ。いつぞやの様にバイトさん達にお願いしていきますから。薬屋のおやじさんにはボクもお世話になってますから」
「有難う……有難う……本当に有難う!」
おやじはグランにも頭を下げます。
グランは近くにいたバイトさんの1人に話しかけ、事情を話すとバイトさんは快く見送ってくれました。
こうして、ホイップとグランは他の人に連絡を取りながら現地へと向かって行きました。
おやじは、その後ろを必死についていきます。
「これで計画の第一段階は無事に……ティセラ様、待っていてください」
ホイップを見つめながら誰かが呟きました。
今回は火事の消火活動と人命の救助になります。
村はそれほど大きくはありませんが、周りの森や林も巻き込んで大きな火事になっている可能性もあります。
魔法で火を消す手段がなくても出来る事は沢山ありそうです。
人命の救助は怪我人にはヒール、煙を吸い込んでしまった人にはキュアポイゾンが有効な手段となる事でしょう。
ホイップ達と一緒に村を助けてあげて下さい!