イルミンスール魔法学校

「失敗か……」
　後催眠。
　ユイード・リントワーグを仕留め損ねた。いや、全身が水晶化しているのだから、壊し損ねた、であろうか。
　イルミンスール魔法学校、ベルバトス　ノーム（べるばとす・のーむ）教諭の研究室を飛び出したチェスナー・ローズの小さな背を見つめながら、
「まぁ、良いだろう。せいぜい暴れてもらおうか」
　と、鏖殺寺院の一人、フラッドボルグが、笑み零していました。


　川の水が減ってゆく。
　トカール村に沿流する川を前に、アリシア・ルード（ありしあ・るーど）は選択を迫られています。
　煮立った香生草の香りに誘われて、対岸には炎毛狼が集まっています。このまま水嵩が減れば、奴らは川を飛び越えて襲い来るでしょう。
　再びに発症したヴァルキリーの皮膚は黒紫に染まり、小さく痙攣しています。筋肉が縛り上げられるような痛みが呻声を上げさせるようです。
　診察・避難・解明・撃退・治療。
　早急に、そう本当にもう、猶予は無いようです。


　青龍鱗を奪った者の背が煙幕の中へ消えてゆく。
　女王候補、ミルザム・ツァンダの手が、その背を追い始めた時、クイーン・ヴァンガード隊員の一人がその手を振り止めました。
　地鳴りが迫っている。三槍蠍の大群がガラクの村へ迫っているのです。
　水晶化したまま砕ければ、例え水晶化を解除したとしても、体は砕けたまま。腕が砕け落ちたなら、解除した所で、腕は「もげた」ままなのです。
「青龍鱗を…　いえ、ヴァルキリーや村を護らなくては…　しかし…」
　失意が混乱を加速させている。ミルザムはどうにも視点が定まらないようでした。


「大きな、大きな泉を作るの」
　十二星華の一人、パッフェル・シャウラ（ぱっふぇる・しゃうら）は漆黒のグリフォンに座り乗ると、空からガラクの村を見下ろしました。
　ミルザム・ツァンダや生徒たちを煙幕が包んでおり、そこへ三槍蠍の大群が迫り来ています。
　パッフェルは静かにランチャーを構えると、村の外れへと「赤い光」を放ちました。木々や葉、草や隆起した土が次々と水晶と化してゆきます、それは、水晶の壁を成していくようにも見えました。
「大きな、大きな泉を作るの」
　壁を築き広げるように、パッフェルは次なる「赤い光」を放ち射したのでした。

　
　こんにちわ、古戝正規です。第２話（全３回）の始まりです。
　このシナリオは「【十二の星の華】狂楽の末に在る景色（第１回／全３回）」の続編となります。
　新規の方は「ガラクの村で調査・治療をしていた」、「トカール村で調査・治療をしていた」、「イルミンスール魔法学校に居た」をスタートととする事でご参加いただけます。もちろん「知らせを聞いて現地に向かう」とする事も可能です。
　前作をお読みの上でご参加いただくと、よりお楽しみいただけると思います。

　さて、補足をさせていただきます。

　ガラクの村に迫る「三槍蠍」は３トントラック程の体長と重量を持つ蠍で、その尾は３つに分かれ、槍の如くに突き迫ってきます。
　前作のリアクション内での戦闘描写などをアクションの参考にしていただければと思います。

　トカール村の対岸に集まっている「炎毛狼」は体高３ｍの化け狼で、寝ている時以外は炎の毛を逆立たせています。その為、極端に水を嫌います。　
　毒に苦しむヴァルキリーたちの痛みを和らげるための塗り薬を作る為に、村周辺に生える「香生草」を潰し、煮立たせたのですが、「炎毛狼」はその香りに誘われて集まって来たようです。

　チェスナー・ローズはアーティフィサー（機工士）です。ノーム教諭の研究室を飛び出した時点では、彼女は武器を所持していないようです。

　移動手段を武装していない場合は、全て自力で動く事となります。アクション作成の際にはご注意いただければと思います。

　それでは、ステキな”ひととき”となりますよう、一緒に楽しみましょう♪
　

・ユイードを追う。

・発症したヴァルキリーたちを避難させる

・三槍蠍と戦う

・パッフェルを追う