イルミンスール魔法学校

　小さな白薔薇が泣いている。
　通りがかったその人は思いました。
　雨は追い討ちをかけるように降り続けます。
　この人の国には、人の心に赤い薔薇か、良くても砂の薔薇が咲きます。
　天頂の如き、蒼い薔薇が咲くことを、この人は望んでいました。
　その人の名前はジェイダス・観世院（じぇいだす・かんぜいん）といいました。
　この薔薇の園――薔薇の学舎の校長先生です。

　校長先生は声をかけました。
「何をそんなに泣いている？」
　その子はルシェール・ユキト・リノイエという名前でした。この学舎にやってきたばかりの少年です。
　少年もこの人が校長先生だと、声を聞けば顔を上げなくてもわかります。
「いじめられた……のではないな。傷も、なにも見当たらない…寂しいのか？」
　最後の言葉に、ルシェールは肩を震わせました。
　目線を上げれば、校長先生の姿が見えました。
　ルシェールは我慢ができなくなり、校長先生に抱きつきました。
「誰かと遊ばないのか？　自分から行かなければ、お前はいつでも独りだぞ」
「ちがう…の。家族に…会いたいの」
　校長先生は溜息を吐きました。
　ルシェールの親は忙しくて、なかなか遊びに来れないのです。どうやら、この子に我慢の限界が来たようでした。
「俺ね…もうすぐ誕生日なの…お誕生日会したいって言ったら、ソルヴェーグが……やだ、って」
　どうやら、パートナーに出席を拒否されたか、開催するのを面倒がられたのでしょうか。
　パートナーとの絆が上手く繋がっていないようです。これでは双方にとっても良くありません。
　校長先生は思案しました。
　任せる（押し付ける）のに丁度良い相手がいます。教諭の名前はサラディハール・メトセラ＝リリエンスール。
　この子のパートナーとは、友人同士です。
「そうか。では、誰かに頼めばいい。お前にはそういう相手がいるだろうに」
「で、でもぉ。サラ・リリはソルヴェーグの友達だけど……先生だもん」
「教師だからこそ、できることもあるかもしれないだろう。それに、お前と違って大人だ」
「うん」
「外出は許可しよう。誕生日会でも何でもするといい」
「ほ、本当？」
　寄宿学校に入ったら外に出てはいけないと思い込んでいたようです。
「外出を許可することぐらい何でもないことだ。それほどに会いたいのなら、外泊でもするといいだろう」
「わ、わぁぁぁ♪　ありがとうございます！　校長先生、大好きーー♪」
　また、ルシェールは校長先生に抱きつきました。
　他の生徒がいたのなら、その場で止められるところでしょう。でも、ここには誰もいません。
　小さな薔薇は薔薇園の主に、そっと、頬にお礼のキスをしました。


　　　　☆　☆　☆　☆　☆　☆　☆　☆　☆　☆　☆　☆　☆　☆　☆　☆　☆　☆　☆　☆


「ルシェール…何で私に言わなかったんですか……」
　サラディハール先生は言いました。
　校長先生から話を聞いたサラディハール先生は、自分が近くにいながら気が付かなかったことを後悔していました。
「遠慮する必要はなかったんですよ？」
「サラリリは…ソルヴェーグの友達だし」
「ソルヴェーグの……友達…」
　サラディハール先生はガックリと肩を落としました。
　愛称で呼んでくれる少年に、そんな遠慮があったことがショックでした。
「そうですか、まあ、いいでしょう……貴方の誕生日は７月７日でしたね」
「うん」
「七夕という行事を日本ではするのでしょう？　サマーヴァレンタインというのだそうですね。願い事もかけるというではありませんか。そんなロマンティックな行事と貴方のバースデーなら、きっと友達は来てくれますし。喜んでくれますよ」
「そっかぁ。誰か好きな人と来てもいいよって言ったら嬉しいかもね♪　そういう風にしようっと」　
「そうですね。お一人の方は…パーティーを楽しみつつ、告白したい人を連れてくれば良いキッカケになりそうですね」
「わあ！　それって、キューピッドになるみたいだね♪」
「あとは何かありますかねぇ」
「やっぱり、枕投げは基本だよね！」
「それって、基本なんですか。地球人って、変わっていますね。試合なら負けませんよ？」
　先生、かなり乗り気です。
「浴衣があれば、お代官様ごっこもできるのにな。みんなとやりたいな」
「着物ならここで借りれますよ。七夕宿泊プランのセットになってますし。地球人相手のイベントをメインにやっているところってあるんですねえ」
　そう言って、サラディハール先生はプリントを何枚か渡しました。行事関係のプランを使えば、手間もかかりません。
「ここ、プールもあるし、カラオケのステージってば、本格的だよ！　アイドルごっこできるね……あれ？」
　いくつかのホテルの記事を眺め、そして、ルシェールはあるホテルの記事に注目しました。
　【Ｈｏｔｅｌ　ｄｉ　Ｆｒｏｎｔｉｅｒａ　空京】と書いてありました。
　そして、その記事にはルシェールの祖母の名前があったのです。
「サラ・リリ！　おばあちゃんが空京に来てる！」
「えっ？」
「ホテルでお仕事なんだ……どうして教えてくれなかったのかな」
　ルシェールのおばあちゃんは、七夕のイベントでホテルから呼ばれているようです。和服部門のメインイベントの責任者に名前が連ねてありました。
「さあ？　でも、丁度良いではないですか。ここで誕生日会をしましょう。会場の予約はリノイエ家の名前を出さず、私か、校長先生の名前ですればいいのです」
「え？　サラ・リリか、校長先生の名前で？」
「そうです。いきなり行って驚かせましょう」
　校長先生の名前を出すと少々問題な気もするのですが、融通を聞いてもらえそうだし、何かあったときは押し付けてしまおうとサラディハール先生は考えていたりしました。
「でも、何で校長先生なの？」
「言いだしっぺはあの人ですから、責任を持っていただこうじゃないですか」
「責任？」
「大人の事情です」
　サラディハール先生は嫣然と微笑みました。
　ルシェールには大人の事情はよくわかりません。

　それよりも、七夕にパーティーです。
　空京に降り立ってから数ヶ月にして、はじめてのパーティー。
　ルシェールの心は躍ります。
「じゃあ、電話をかけるね！」
　ルシェールは嬉しそうに言いました。

みなさまこんにちは、黒織肖（くろしき・あやか）です。
色々と長くなりましたが、☆のラインより上は『話の経緯』でございます。
人数により、描写多めになるよ〜という布石でございますので、何卒ご容赦を。

前回、最初の方に布石を打っておいたのですが、ルシェールの誕生日というシナリオです♪
『もうすぐ１２歳』ということは、誕生日シナリオやるよ〜ということだったのですね。
今回も、薔薇学のシナリオですが、舞台は空京なので他校の生徒も参加できます。
ぜひ、パーティーに参加してください。
前回、前々回にご参加の方は、他校生徒でもパーティーに入れますしＮＰＣと関わりを持ったとされる表現、称号を得た人たちは連絡があったということでお願いします。

今回の内容は、「七夕に誕生日パーティー＆お泊り会＆薔薇学の校長先生と遊ぼう！」です。

ホテルは七夕行事一色で、恋人同士のお客さんを呼ぼうとしています。そんなわけで、ホテルの雰囲気はそういう感じになっています（笑）
ラブ一色のホテルの中に、プチ修学旅行ご一行様が乱入（？）な形になっていますので、恋人同士の方もいらっしゃってくださいね！
…とここまで書いたらお分かりかと思いますが、そういったアクションが来た場合、もれなくＢＬ表現が入ります。
苦手な方のために、別章仕立てにいたします。

★○○章　〜〜〜　★

このようなページがありましたら、そこはＢＬのページになります。
普通（異性同士ＯＲ女同士）の場合は、【★】が【☆】に変わります。
ついでに、いろんな意味で薔薇薔薇します（え；）
読むときはご注意ください。

それと、黒織の書くものですから、スイッチが入った時点でコメディータッチになります。ラブコメっぽい感じでしょうか。
なお、ＮＰＣの坂上　樹に絡みますと、もれなく「のぞき事件」のフラグが立ちます。

『蒼空のフロンティア』も一周年です。この一年はどうでしたか？　楽しかったですか？

七夕は恋人同士の感謝の気持ちを伝え合う日。
普段から言えない「ありがとう」の気持ちを伝えてみてはいかがでしょうか。


以下は、諸注意や情報などです。


１、参加者について
　　・薔薇の学舎所属のＭＣ＆ＬＣ
　　・黒織肖のＮＰＣと知り合いのＭＣ＆ＬＣ
　　以上、主に２パターンの参加条件になります。

　　☆例外☆
　　・七夕シナリオですので、薔薇の学舎の生徒と恋人同士・友達・知人の方は参加可能です。


　【それ以外の方が参加した場合の措置】
　　パーティー参加の理由付けがシナリオに合っていない場合、活躍することは難しくなります。
　　通りすがりの人になってしまいますのでご注意ください。

※　注意１：バイトをしていたなどの理由での、シナリオ参加は不可です。
　　注意２：いずれの場合も、『話を聞いて参加表明をした』などの一文を入れて下さい。いきなりいるのもビックリですし。

２、ホテルについて
　　校長先生がお泊りになるのに、お安いところにはお泊めいたしません（笑）
　　ホテルは本館、別館、洋館、日本庭園、ガーデン、チャペル、などで構成されています。
　　本館、別館は同じ部屋の作りで、洋室、和室の二種類です。
　　ロイヤルスイート、ジャパニアススイート（和室）、スイート、スタンダート（ツイン・ダブル）などとなっています。
　　本館一階の中央には、高さ三階分の噴水があります。
　　ビリヤード、ボーリング、プール、スパ、露天風呂、サウナ、ヘアサロン、雑貨ショップ、レストラン、図書館、写真館ドレス＆和服の着付けサービスもあります。
　　カラオケは専用の部屋で、１００人前後は入るぐらいの大きさになっています。
　　露店風呂は混浴と男女別と三種類あります。

３、イベント内容
　　ルシェールのお誕生日会、七夕イベント（笹の飾りつけ、お願いの短冊、灯篭流し、着物の着付け）、自由行動です。
　　着物の着付けは、ルシェールのおばあちゃんがしてくれます。
　　着物は浴衣でも、振袖でも内掛けでも、何でもあります。
　　誕生会がご飯の時間ですので必須項目ですが、あとはご自由にセレクトしてください。
　　掲示板などを使って、班行動をしてみてもいいかもしれません。

４、ルシェールのおばあちゃんについて
　　おばあちゃんは京都と東京を中心に活動を展開しているデザイナー兼呉服屋さんです。
　　今回は、お仕事で空京に来たようです。
　　物言いは厳しい昔気質の方ですが、心の暖かい人です。

☆アクションには【言いたいこと（言わせたいこと）】を追加で書いてくださると助かります。
　皆様のアクションをお待ち申し上げております。

・パーティーに参加する（薔薇学生徒）

・パーティーに参加する（ＮＰＣの知人・友人）

・パーティーに参加する（薔薇学生徒の知人・友人・恋人）

・パーティーに参加する（過去二回分の関係者）