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――臨時ニュースより――
眠っていた古王国時代の大型飛空艇の警備システムが突如起動し、
艇内で撮影を行っていた空京TVのクルーが閉じ込められるという事件が発生しました。
場所は、ジャンクヤード。
飛空艇から出現した大型の戦闘用機晶ロボットが入り口付近を徘徊しており、周囲も大変危険な状態となっています。
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ヒラニプラ近郊にある広大な廃棄物集積区域、ジャンクヤード。
当初は、遺跡で発掘されたものの利用価値や研究価値の無い物が集められた土地でしたが、
現在では、再処理に困る故障品だの型落ち品だのといった粗大ゴミも捨てられるようになっています。
定期的に飛空艇がやってきては、空から”ガラクタ”を降らせていく――そんな場所です。
15歳の少年ラットは、そこで暮らすジャンク屋の一人です。
今日の彼の仕事は、空京TV局のクルーたちを”亡霊艇”へ案内するガイドでした。
亡霊艇というのはジャンクヤードの中心に埋まっている古い大型飛空艇のことで、
この飛空艇はジャンクヤードが廃棄区域に指定される前から、この場所にその半身を沈めた格好で横たわっていたといいます。
今はジャンクに埋もれており、上部がかろうじて覗く程度となっています。
そして、その内部は、各所に分厚い隔壁が降りたまま機能停止しているため、発見された当時から一部のフロアにしか侵入できないままとなっていました。
一行は無事に飛空艇へ辿り着き、撮影を開始しました。
企画内容は、この廃墟のようになった飛空艇内を出演者たちがおっかなびっくり探検していくというもので……
「へぇー、なにここ? どうなってんの? うっわー、スゴーイ!」
出演者の一人である褐色の女性ウル・ジが、寂れた風景の中を大袈裟なリアクションで進んでいきます。
彼女は、最近売り出し中の女性タレントだとかなんとか。
ともかく、ラットには、こんな場所を映して何が楽しいのかよく分かりませんでした。
「……ま、金がもらえりゃ何でもいいけどさ」
と彼が欠伸を噛んだ途端――
飛空艇にヴッン、と音と震動が走りました。
突然、飛空艇内の隔壁が動き始め、
警備用と思われる機晶ロボや機晶姫が姿を現しました。
暴走しているのか、元々そのように設定されていたのか、それらはラットやウル・ジ、クルーたちに襲いかかってきました。
一気に場は混乱し、皆は散り散りに逃げ、気づいた時――ラットは一人、飛空艇の外へと転がり出ていました。
そして。
彼は何とか安全な場所へと逃げきり、皆へ助けを求めたのでした。