「あ、あああああああ! 痛いですー!」
シャンバラ大荒野の外れ、昼なお暗い森の中にひっそりとたたずむ不気味な館から、今日もいたいけな乙女たちの悲痛な叫び声がもれ聞こえてきます。
地元の住民からSの館と呼ばれるその館の主サッド・ヘタインは、猟奇的趣味の持ち主で、主に仕える多数のメイドたちの何人かを、毎晩のように呼び出して些細なことで難癖をつけ、「お仕置き」と称して縛って叩いたりすることで有名なのです。
主は、責め苦を受けたメイドたちのあげる悲鳴を聞くたびにほくそ笑み、歪んだ快楽に溺れているのですから、変態そのものといえます。
恐ろしい館には、主であるサッドのほか、サッドに雇われている、ネクロマンサーのシビト・イジロウと、ビーストマスターのグルル・キバツメとが館の警備やメイドたちの監視にあたっています。
館の廊下には、シビトの召還した多数の骸骨戦士が警備にあたっているほか、ビーストの操るライオンソルジャー(鎧を着ていて、火を吹くライオン)が気の向くままに走りまわっていて、外部から入り込んだ者はたちまち屠られてしまいます。
館の周囲には深い掘が巡らされ、堀の中の暗い水の中には、おびただしい数の巨大なワニが生息していて、正気の人間なら決して近づく気にはなれないでしょう。
ある日、地元の住民たちは、館から生命がけで脱走してきたという、全身傷だらけで、半裸に近い姿の女子が倒れているのを発見しました。
百合園女学院から誘拐されて館で働かされていたというその女子生徒の口から、恐るべき事実がもたらされます。
「館の地下に、鉄格子の牢獄があって、何百人もの女の人たちが鎖につながれているんです。みんな、あちこちから誘拐されてきた人です。館の主であるサッドは一千年以上生きているという吸血鬼で、毎晩のように館の広間に女の人たちを呼び出しては、自分の楽しみのために虐めているんです。そして、ああ! 泉さんも、泉さんもあの中に!」
そこまで話して、女子生徒の目から、大粒の涙がこぼれ始めます。
「次の満月の夜に、サッドは館で恐ろしい悪魔の宴を開催するつもりです。とびきりの美少女を何人もはりつけにして、招待客の前で屈辱を味わわせるつもりなんです! そして、泉さんは、虐めを受けたあげくにサッドの信仰する邪神にいけにえとして捧げられてしまうんです! みなさん、お願いです! 館にとらわれているみんなを、そして、泉さんを助けて下さい!」
その女子生徒の話のとおり、満月の夜が近づくと、館から現れた不気味な使者たちが、真っ赤な用紙の招待状を付近の村人に配り始めました。
その招待状には、ディナーショーとして新入りメイド・泉美緒の公開拷問を行うと記されていたのです。
「ざけんなよ、クソ野郎!」
招待状をみた瞬間、それまで館を恐れて近づこうとしなかったパラ実生たちの怒りがついに爆発しました。
泉美緒といえば、百合園女学院の新入生ですが、けしからん巨乳の持ち主として、ネット等で情報を知ったパラ実生の一部に熱心なファンができていて、本人に直接会った生徒はほとんどいない状況にも関わらず、ひそかに「オレの彼女」と思い込むヤバい生徒さえ出てきていたのです。
「美少女を独占して、自分たちだけいい思いしやがって! ただでさえムカつくってのに、よりによってオレたちの美緒ちゃんを虐めるだと!? ふざけるのもいい加減にしろってんだ! おう、いくぞ、支度だ!」
怒り心頭に発したパラ実生たちは、館に殴り込む決意を固め、次々に集合していきます。
もはや、彼らの脳裏に死の恐怖などは存在していないかのようです。
館の扉は普段はかたく閉ざされており、宴が開催される満月の夜にのみ開くため、パラ実生たちが殴り込むのもそのときだと思われます。
最近になって泉美緒を含む何人かの生徒の失踪に気づいた百合園女学院にも、Sの館で開かれる悪魔の宴の情報はもたらされ、既に救援隊が出発している模様です。
各校からも、失踪した女子生徒を探して、何人かの生徒が館に踏み込み覚悟でいるようです。
一方、館の地下牢では。
「あれー? 気がつけば、わたくし、どうしてここにいるんでしょう? 何ですか、これ? あはは、まるでワンちゃんみたいですわ」
牢獄の中で、泉美緒がニッコリ笑って、自分の首にはめられた首輪と、首輪から伸びる鎖をいじっています。
牢獄の外では、サッドが邪悪な笑みを浮かべながら泉と、その巨乳を鑑賞しています。
「フハハハハ! その姿、似合うぞ! もうすぐ宴の夜がくる。そのとき、お前は生まれたままの姿になって、私の前で泣きながら許しを乞うのだ!」
サッドの瞳は濁った光を放っていて、その唇からはよだれが垂れています。
欲望のおもむくまま生きてきたサッドは、その恐るべき生涯の果てに待ち受ける、自己破滅的な陶酔に酔いしれているかのようでした。
「えーと、許しを乞う、んですか? 何だか知らないけど、宴って、面白そうですわね。ワンワン! よかったら、わたくしを散歩に連れていって下さいね☆」
事態の深刻さを理解しない泉は、自分の首輪の鎖を引っ張ってニッコリ笑います。
その姿をみて、サッドは異様に興奮しているようでした。
さあ、あなたも、Sの館に踏み込み、サッドたち極悪人を地獄送りにし、泉美緒を始めとする、美少女の囚人たちを救出しましょう!