【カナン再生記】黒と白の心(第2回/全3回) リアクション公開中! |
シナリオガイド石像奪還計画――砦攻めへの進軍が始まる!
シナリオ名:【カナン再生記】黒と白の心(第2回/全3回) / 担当マスター:
夜光ヤナギ
「シャムス」 ◆ 砂漠の空を飛ぶのは小型飛空艇であり、砂上の大地を駆けるのは馬でありました。 南カナンの地へと集まるのは、各地より集められた兵士や志願兵。そして、シャンバラよりやってくる援軍の数々です。 戦いへ向けた空気が漂う中で、荒野と砂漠しかなかった大地にわずかな開拓の原型が見え始めています。街の住民も活気を取り戻しつつあり、来たる戦の日に備えているのでした。 「陽動?」 「そうです」 シャムスに怪訝な声をかけたのは、わずか10歳程度にしか見えないカナンの豊穣の女神イナンナでした。 彼女に返事を返して、シャムスは机の上の駒を動かします。 同時に、ニヌアに残るシャンバラの勇士やロベルダがその駒に目を移しました。 「ただ砦を攻めるだけでは、敵を倒すことはできません。まずは人質――エンヘドゥを奪還しなければオレも兵士たちも自由に攻撃をすることができない」 「だから、ある程度の戦力で敵の気を引く間に、別の部隊が石像を取り戻すの?」 「……その通りです。部隊は二つに分かれます。陽動部隊と奪還部隊。オレが目立った行動をすれば、エンヘドゥはすぐに利用されてしまうかもしれません。オレは……奪還部隊で動きます。イナンナ様には、陽動部隊をお願いしたいのです」 「…………」 イナンナは、考え込むようにしばらく口を閉ざしました。 やがて、その小さな唇が返事を返します。 「そうね。“攻め”への象徴としても、あたしが前線に立つ方がいいのかもしれない。……陽動は、任されたわ」 「わたくしも、ついていますわ」 と――イナンナたちの目は、穏やかでありながらも凛とした声を発する女性に向けられました。 そこにいたのは、かの一匹狼の空賊、フリューネ・ロスヴァイセ(ふりゅーね・ろすう゛ぁいせ)の5000年前の祖、ユーフォリア・ロスヴァイセでした。 「陽動部隊にイナンナ様だけではなくわたくしもいるとなれば、より大きな陽動効果が得られると思いますわ」 「ありがとうございます、ユーフォリアさん。わざわざ援軍を送ってくださるだけでなく、自らも戦地に赴いていただけるとは……」 「気になさることはないですわ。いつの時代であろうとも、わたくしの使命は変わりません。……それがシャンバラであろうとカナンであろうとも。わたくしの力がお役に立てるのであれば、尽力を尽くさせていただきますわ」 ユーフォリアはそう言って、穏やかに微笑んでみせました。 ユーフォリア、イナンナ、シャンバラの勇士たち、そして我が南カナンの民。シャムスにとって、皆が心強い味方でした。 「シャムス様、準備が整いました」 話し合いの最中、部屋に入室した兵士がシャムスにそう告げました。 「いよいよか……」 シャムスは呟きます。 「そうね」 それに答えるのは、イナンナです。 彼女の真摯な瞳が、シャムスを見つめていました。 自分のために戦地に赴かせてしまう。そんな心配そうな色がイナンナの顔に浮かんでいます。 「……覚悟は決まっております」 だから、シャムスはイナンナに向きなおりました。そして決然とした顔でイナンナに笑ってみせます。 「そんな顔をしないでください。これは……オレたちの戦いでもあるのです。オレたちが、自分たちの居場所を取り戻すための戦いなのです。そこには、オレたちの誇りと信念があります」 そう。だから、彼らは立ちあがるのです。 エンヘドゥを救うため、そして、南カナンの地を取り戻すため。 立ちあがったのはシャムスだけではなく、その地に住む人々、その地を愛する者たちです。 そして、その思いに応えようと、遠くシャンバラの地からも。 シャムスの真っ直ぐな瞳に、イナンナはそれ以上何も言いませんでした。 漆黒の鎧を身に纏って、ロベルダとイナンナとともに、シャムスは居城から姿を見せました 領主を見た兵士たちは、士気を高めるような盛大な歓声をあげます。 「皆の者よ!」 水を張ったように、シンと静まる兵士たち。 「……戦いのときはきた」 シャムスの声は、兵士たちの間に響き渡りました。 「あの日、あの時、我らはネルガルの支配に敗北した。しかし、今一度立ちあがるときがきたのだ。砦にあるとされるは、人質となった我が双子の妹エンヘドゥである。だが、これは逆に好機。エンヘドゥを救い、そして砦を壊滅させ、我が南カナンをまずは解放する!」 兵士たちは、高揚と興奮の声をあげます。 戦いが始まる。まずは『神聖都の砦』。今こそ、敵にひと泡を吹かせてやる。 「南カナンを、そして、あの美しきカナンの姿を、我らの手で取り戻すのだ!!」 「うおおおおおおおおおおおぉぉぉ!!」 兵士たちの雄叫びのような声が、戦いの鐘となったのでした。 ◆ 「そうですか……南カナンの方々が」 「はっ……! いかがいたしましょうか?」 「そりゃあ、攻めてこられるのでしたら反撃しなくてはいけませんよ? チェスでも動かなければ負けてしまいますからねぇ」 不気味に笑うモートは、それ以上何も言いませんでした。 つまり、「敵の攻撃に備えて反撃の準備をしろ」という命令か。モートの性格をそれなりに知っている部下は、そのように解釈して、丁寧に会釈するとモートの部屋から退室していきました。 「チェスの駒ですか。実にあなたらしいですね」 すると、部屋の隅から、いつの間にいたのか女神官が姿を現わしました。アバドン――ネルガルに仕える女神官が現われたことに、モートはさして驚きの様子を見せません。 「いらっしゃっていたのなら、一言申し上げて下さればよろしいものを……いやはや、趣味が悪いですねぇ」 「あなたに言われたくありませんね」 一応は部下という立場とはいえ、何を考えているか分からぬ男。アバドンは注意深く相手を見ながら、続けて告げました。 「しかし……本当に大丈夫なのですか? 南カナンは一度破られたとはいえ軍事力は計りしれません。手立てはあるので……?」 「それはもちろん。知っていますか、アバドン様? 人の心は強き者ほど殻が壊れてしまっては脆いものですよ? ひゃひゃひゃ……例えば、双子の絆などはねぇ」 腐ったような声。アバドンの顔は自然としかめられました。 だが、それ故に……頼もしくもあります。 「ネルガル様も心配はしておいでですが、あなたを、ひいては私を信頼して南カナンを一任しております。なにせ、最近では各地で多くの反乱が起きているものですから……そちらでも手を焼いているのです」 「東と西ですか? そういえば、東のバァルさんは面白い方でしたねぇ。あの方の目は私、好きですよ?」 「バァル様ですか。反乱軍との戦いへ向けて進軍されたようですが、果たしてどうなるものか」 龍の逝く穴より強力な竜を連れてきたのは良いが、結局はバァル自身にかかっていると言っても過言ではないのでしょう。モートではありませんが、人の心はやはり脆きもの。 アバドンも心中穏やかではいられませんでした。 「いずれにしても……お任せしましたよ、影の魔女」 「ひゃひゃひゃ。お任せくださいませ。こちらには最強の駒があるのでねぇ」 モートは水晶化されて人形のようになった少女を指先でひょいとつまみあげました。 盤上に置かれるであろうその駒はキングかナイトか、あるいはクイーンか。それは、アバドンですら分からぬことでした。 ついに南カナンは『神聖都の砦』を攻めるため進軍! 泉美那――いや、エンヘドゥの運命は? 歯車となるのは、あなたです! 担当マスターより▼担当マスター ▼マスターコメント
初めましての方は初めまして。 ▼サンプルアクション ・陽動部隊として敵の気をひく ・シャムスと石像を奪還する ・モンスターと戦う ・拠点で働く ▼予約受付締切日 (既に締切を迎えました) 2011年01月31日10:30まで ▼参加者募集締切日(既に締切を迎えました) 2011年02月01日10:30まで ▼アクション締切日(既に締切を迎えました) 2011年02月05日10:30まで ▼リアクション公開予定日(現在公開中です) 2011年02月21日 |
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