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シナリオガイド

百合園女学園、秋の文化交流会開催。……もっと知り合いませんか?
シナリオ名:もっと知りたい、百合園 / 担当マスター: 桂木京介

 秋晴れ。
 先日までの猛暑が嘘のようです。肌をなでるのは淡くかすかに冷気をふくんだ風で、その優しい吐息をもって少しずつ、夏を近くて遠い思い出に変えていくかのようです。
 空は高く、青く、見上げれば、薄く溶いた水彩絵の具のような雲が流れていくのが見えることでしょう。
 その爽やかな光景の中、整った芝生の上に、目にも鮮やかな毛氈(フェルト)が敷かれていました。中央には番傘が、やはり印象的な大輪をひらいております。
 ここはヴァイシャリーの郊外、傘の下で茶を点てているのは桜井 静香(さくらい・しずか)でした。ほのかなシナモン色の髪に、桃色のドレスがよく似合います。さすが百合園女学院の校長、慣れた手つきで碗を差し出しました。
「どうぞ」
 これを受け取るのは山葉 涼司(やまは・りょうじ)です。
「悪いな。正座は苦手で」
 彼は早々に宣言すると、膝を崩しあぐらの姿勢になりました。あまり礼儀正しくはないものの、左肘を膝の上に置き、右手でぐっと頂きます。
「うん。美味い」
 ぷはっと息を吐いて彼は言いました。
「良かった」
 笑顔の静香は、次の一杯を手早く用意しました。
「つぎ、ワタシ?」
 涼司の連れは緊張気味に問いました。彼女は正座していますが、力が入りすぎているのか膝に付いた腕、さらには両肩がずいぶんこわばっている様子です。丁寧になでつけられた長い黒髪、蒼空学園の制服姿でした。といっても、制服はサイズが少々小さいようで、袖がなんとなく短いのでした。
「礼儀とか気にしなくていいから。気楽にね?」
 静香が椀を渡すと、やや震える手で彼女はこれを受け取りました。なんとなく水平に回転させてみたりして、ぎこちなく両手でいただきます。
「どうだ?」
 涼司が問うと、
「ちょっと、苦い……」
 彼女――ローラは正直な感想を述べ、照れくさそうな顔をしたのでした。静香たちは微笑みました。
 晴れた空の下での茶会――これを野点(のだて)と言います。本日、涼司はヴァイシャリーの地に招かれ、こうして静香とラズィーヤ・ヴァイシャリー(らずぃーや・う゛ぁいしゃりー)の歓待を受けているのです。
「涼司さんが秘書のかたを連れておいでになるとは思いませんでしたわ」
 それも、こんなに可愛らしい方を――と、ローラのほうを見ながらラズィーヤは微笑しました。
「ま、俺も校長として忙しくなってきたんでな」
 あまりそのことを追求されたくないのか、涼司はほどほどな言葉で済ませます。この『秘書』が秘書らしい仕事を一切できないことはおろか、本当は字を読むことすらできずまだひらがなを勉強中であることなど決して口にしません。
 その一方で秘書ローラは、
「か、かわいらしい、か?」
 と、妙な訛りのある口調とともに頬を染めました。
 どことなく、アンバランスな印象のある彼女です。きめの細かい褐色の肌、背は、男性の涼司と比べても頭一つ分ほど高いでしょう。グラマーな一方、締まるところは締まっており、いわゆるモデル体型です。それなのに顔は、目と口が大きくチャーミングな童顔なのです。水着にハイヒールでもはかせれば、男性向け写真誌の表紙などすぐに飾れそうです。
 そんな彼女がその立派な姿態をもじもじと小さくかがめている仕草は、なんとなく借りてきた猫を思わせるのでした。
 しかし猫というのは大いに間違いです。むしろ彼女は『虎』と呼ぶほうが近いのです。
 ローラの正体が、かつて塵殺寺院に属していたクランジΡ(ロー)であることを涼司は言いません。本当は知っているのでしょうが、ラズィーヤもあえて指摘しません。静香も同様です。
「ところで」
 どうかな、今回の話? と静香は切り出しました。
「いいと思う。むしろ喜んで参加させてもらおう」
 涼司は二つ返事です。秘書のローラもわかっているのかいないのか、こくこくとうなずきました。

 本日は、二ヶ月ほど前、蒼空学園に招聘されたことに対する百合園女学院からの返礼なのです。
 あの日、蒼空学園の校長室で七夕の夜の祭を計画したように、やはり今日も、近々百合園でもちょっとしたイベントを催す計画について話し合いが持たれているのでした。
 お嬢様学校として知られ、麗しいイメージに包まれた秘密の花園、それが百合園女学院です。しかしその性質上、どうしても閉鎖的になってしまうのは事実、校長の桜井静香はこれを少々残念に思っており、この機会に他校との文化交流会を行うことにしたのです。
 これは、他校生に百合園女学院を知ってもらうという意味がある上、百合園の新入生にとっても、他校の生徒となじむことによって外の世界を知ることができるという利点もあります。『悪い虫がつくのではないか』と危惧する声もないではなかったのですが、えてして世間知らずになりがちな百合園生にとっては意味があること、と静香は考え、ラズィーヤの助けを得てこの計画を進めていました。
 といっても、百合園女学院自体は男子禁制なので一般人に解放するのは難しい。そこで、ヴァイシャリーの外れにある百合園のサブグラウンドに特設会場をしつらえることになりました。
 この地で秋晴れの一日、茶道部主導の野点や文化系部活動の発表会、箏曲の演奏会などを一斉に開催するという計画なのです。

 *****************

 イングリット・ネルソン(いんぐりっと・ねるそん)が戦っています。
 繰り返します。彼女は戦っています。
 イングリットの呼吸は荒く、こめかみには汗が浮いて玉となり、素足は足元の地面を掘るほどに強烈な摺り足の軌跡を描いていました。桜色の前髪が額に張り付いていました。
 場所は屋外、現在静香と涼司たちが野点を行っているその場所からいくらも離れていません。
 ここで彼女は戦っているのです……自分自身と。
 彼女が体得しているのは古流武術バリツ、柔術の一派ですがスポーツとしての性質が強い『柔道』とは違います。蹴りと掌底とはいえ『当てる』攻撃が存在しているところ、綺麗に投げることよりも相手をいかに効率的に戦闘不能にするかに高い有効性を認めているところ、転ばせた相手に跨り、俗に言うマウントポジションを取って集中攻撃を行うことを許可するどころか推奨しているところ……などの点において、日本を発祥の地として多様に進化した様々な柔術のうちでもとりわけ戦闘的な性格の強い格闘技なのです。
 イングリットは百合園女学院の柔道部に所属しています。柔道において強豪校として知られる百合園でも堂々の黒帯、主力選手として期待されてる彼女ですが、礼儀作法精神論まで含んだ『柔道』の意義は認めながらも、彼女の内側で大蛇のようにのたうつ戦士としての本能は、戦いの技術としての柔術、すなわちバリツを愛していました。
 今日も密かにイングリットは、バリツの技を自主トレーニングしているのです。バリツの技が錆びぬよう、また、さらなる鋭さを得るよう、己の中にある仮想の相手が目の前にあるものとして、その『敵』と激しい攻防を繰り広げているのでした。
 柔道部でバリツを出すわけにはいきません。それは異端であり、仮に許されたとして、イングリットの練習相手になる生徒はいないでしょう。
 舞い落ちてきた木の葉を、彼女の掌底が突きました。叩きつけるというよりは触れる、それも、ぴたっと一度、繰り出した右腕が葉に当たるや否や引くという瞬間的な一撃でした。
 しかしそれだけで、木の葉は真二つになって、ひらひらと舞い落ちたのでした。
(「対戦相手が……欲しい」)
 言葉には出さねど、イングリットは忸怩たる思いを抱いているのです。
 百合園女学院は学校としては理想的な環境で、強豪である柔道部を含めイングリットは大いに気に入っています。
 ただ一点、不満があるとすればそれは、身につけてきたバリツの技を思う存分ふるう相手を欠くことでしょうか。
 近々、文化交流会を企画していると、イングリットも校長から聞いております。
 練習試合という形式で構わないので、無差別級の格闘試合ができないか――ふとそんなことを彼女は考えました。

 *****************

 野点に戻ります。
「山葉涼司様、ようこそおいで下さいました」
 両手をつき、深々と挨拶するのは泉 美緒(いずみ・みお)です。
「ええと、そちらのお方は……?」
 美緒は失礼にならないようにローラに言いました。
「ああ、これは俺の私設秘書として面倒を見ているローラだ」
「ワタシ、ローラ、よろしく」
 ローラはにこにこと手を振ります。ところが、
「苗字はなんとおっしゃいますので?」
 と、美緒が訊いたので、彼女は困ったような顔をして涼司を見ました。
あ、決めてなかった……い、いや、うん、事情があって明かせないんだ」
 当たり障りのない苗字を本人と相談して決めよう、と涼司は密かに思うのでした。
 それはさておき、美緒は静香に奏上します。
「風雅な野点のお邪魔をして申し訳ありません。わたくし、文化交流会のアイデアを持って参りました。いかがかしらと思って、お伺いを立てに参ったのですが……」
「そんな畏まらなくても好きにやってくれればいいよ~」
 と気楽に言う静香に対し、美緒はいたって真剣です。それと申しますのも、と前置きして、
「花嫁修業の一環として、野外で皆様と料理を作ってふるまいたいと思っております」
 これを聞いてラズィーヤは咳き込みました。一部では有名な話ですが、野点や紅茶を淹れるといった作法については完璧に近い美緒なのですが、彼女は料理が苦手なのです。いえ、苦手などという生やさしいものではなく、下手を通り越して火災を引き起こし、それでいて犬の餌にもならないような黒っぽい変なものしか作ることができないと言われています。
 やめたほうが……と恐る恐るいいかけたラズィーヤですが、
「いいね~。野外料理大会なんて楽しそう。ぜひやってよ!」
 静香がすぐに承認を与えてしまいました。
「それで、何を作るつもりなんだ?」
 興味を持ったのか、涼司が問います。美緒は即答しました。
「王道ですが、カレーライスにしてみようかと」
 良かった、とラズィーヤは内心胸をなで下ろしていました。どんなに料理が下手な人でも初心者でも、作ってみればそれなりに美味くできる料理、それがカレーライスなのです。
「準備も簡単です」
 美緒は得意げに告げました。
「まずはご飯を炊き、そして、これを温めます」
 にょき。
 そんな効果音も与えたくなるような颯爽具合で、美緒が取り出したのはレトルトカレー、それも、ポピュラーな銘柄『VANカレー・ゴールド』なのでありました。
「おい、ちょっと待て」
 ところが涼司は即、ツッコミをいれていました。
それは料理じゃないだろ! カレーライスってのはなぁ、ぎこちない手つきながら一生懸命材料を切って……玉葱に涙し、ジャガイモの皮を剥きすぎたり、にんじんの切り方に困ったりして、アク取りして煮込んで、泣いて笑って作るもの、つまり、涙あり笑いありのドラマチック料理なんだよ! わかった。俺が教えてやるからちゃんと一から作るんだ。わかったな? な?」
 あの涼司にしては妙な力の入り具合です。彼にはカレーに格別のこだわりでもあるのでしょうか……?
 事情がよくわかっていないようですが、熱くなる彼とは対照的に、
「ワタシ、一緒にカレー、作りたい。きっと楽しい」
 と、ころころとローラは笑うのでした。


 文化の秋と申します。
 あるいはスポーツの秋。
 はたまた食欲の秋……?
 秋の一日を楽しく、興味深くすごす機会がやってまいりました。それも、百合園女学院の主催で。
 もっと知りましょう。知って下さい。百合園女学院のことを。
 静香やラズィーヤの野点に加わって文化的に過ごすもよし、イングリットと戦って武を極めるもよし、あるいは涼司や美緒、ローラと共にカレーを作って食べるのも良いでしょう。
 どのようにすごすかはあなたのお好み。いずれにせよ、有意義な秋の日にしたいものですね。
 ご来場をお待ちしています。

担当マスターより

▼担当マスター

桂木京介

▼マスターコメント

 マスターの桂木京介(かつらぎ・きょうすけ)です。よろしくお願いします。

【シナリオ概要】
 このシナリオは、百合園女学院主催の文化交流会を楽しむといった主旨のものとなっております。
 殺伐とした展開はないでしょう。塵殺寺院の刺客もきっとやってきません。また、学校による参加制限はありません。

●桜井静香主催の野点(のだて)について
 茶の湯といっても格式張ったものではないので、和装のお茶会として気楽にご参加下さい。
 談笑を中心とした優雅なひとときになりそうです。

●イングリット・ネルソンとの練習試合について
 無差別級となる格闘技の野試合です。柔道着の着用は必須ではありませんが素手での戦い限定となります。顔面への拳攻撃、目突きを含む急所攻撃は禁止です。相手がギブアップするか戦闘不能と判断されれば終了です。
 参加者が少なければイングリット・ネルソンが立て続けにバリツでお相手します。一定数以上の場合はトーナメントになるかもしれません。勝敗はマスター裁量とさせてください。

●涼司、美緒、ローラとのカレー作りについて
 涼司は本格的に辛いカレーを作ります。大人のカレーです。
 美緒は料理技術が破壊的なので、台無しなものを作りそうなので誰か助けてあげて下さい。
 ローラは参加メンバーの集まり方を見てどちらかを手伝いますが、参加者が多そうならば独自に甘口カレーを作ります。

 この三つのいずれかでも、それ以外でも参加できます。自由に考えてみましょう。(たとえば、きっと華道をやっているグループもあるので参加させてもらう、等)
 ただし、複数のイベントに関係しようとするとダブルアクションになってしまう可能性が高いのでお気をつけ下さい。MCとLCで別のイベントに参加するのもダブルアクション扱いになりそうです。


【NPCについて】
 シナリオガイドには、他校校長としては山葉涼司のみが登場していますが、波羅蜜多実業高等学校以外の各校校長も、七夕シナリオ(私が以前執筆した『あなたと私で天の河』)同様に招待されています。みなさんがうまくアクションに絡めてくれればきっと登場することでしょう。

 御神楽環菜は、エリザベートが呼んだので来場予定です。他に、『あなたと私で天の河』に登場したNPCで大きく運命が変化していない(死んだり行方不明になったりしていない)NPCならば基本的には登場可能です。
 ※桂木京介担当のNPCは基本的に死んでない限り登場OKですが、クランジΠ(パイ)、小山内南は登場しません。

 NPCとアクションを絡めたい場合、どのNPCと接触を持つか、そして、該当NPCとのこれまでの関係(初対面なのか友人同士なのか等)を書いておいてくれると大変助かります。


 以上、ほのぼのしたシナリオを目指しておりますが、基本は自由です。想像の翼をはためかせてアクションをかけてみてください。
 皆様のご参加、楽しみにお待ち申し上げております。

 それでは、次はリアクションでお目にかかりましょう。
 桂木京介でした。

▼サンプルアクション

・野点に参加。気楽に茶の湯を楽しむ。

・泉美緒の危険な(?)カレー作りを手伝う!

・イングリット・ネルソンに格闘技で挑戦。

▼予約受付締切日 (既に締切を迎えました)

2011年09月12日10:30まで

▼参加者募集締切日(既に締切を迎えました)

2011年09月13日10:30まで

▼アクション締切日(既に締切を迎えました)

2011年09月17日10:30まで

▼リアクション公開予定日(現在公開中です)

2011年10月04日


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