イルミンスール魔法学校

　――ヒラニプラ。

　山岳地帯にあるこの都市は、大小さまざまな坂が多いです。
　また、地球の工業地帯や下町の町工場のような光景が多く見られ、雑然とした雰囲気です。
　その中をシャンバラ教導団の生徒は登校します。

「遅刻遅刻〜！　入学早々遅刻したら李大尉に怒られる〜！」
「何！？」
「わきゃ！？」

　真新しい制服を着た、ショートカットのシャンバラ教導団の女子生徒が、パンをくわえて走っていました。
　町工場の角を曲がろうとしたところ、向こうから来た男子生徒とぶつかってしまい、尻餅をつきました。

「あいたたた〜」
「ごめん！」
「ううん、走っていたあたしも悪かったし」
「立てる？　その制服……君、新入生？」
「ありがとう。うん、今年入ったばかりなの。あなたも？」
「そうなんだ。まだ友達少なくてさ。よかったら友達にならない？」
「いいよ、よろしくね」

　そんなベタなお約束のシーンが起こっていました。

　――翌日。

「このままだと遅刻ですわ！　クーペリア大尉、普段は物静かですのに、遅刻には厳しいんですもの！」
「え！？」
「きゃう！？」

　真新しい制服を着た、縦ロールのシャンバラ教導団の女子生徒が、パンをくわえて走っていました。
　町工場の角を曲がろうとしたところ、向こうから来たボーイッシュな女子生徒とぶつかってしまい、尻餅をつきました。

「痛いですわ」
「大丈夫？」
「わたくしの方こそ申し訳ございませんわ、とんだ失態を」
「ははは、お互い急いでいたからね。おあいこってことで」
「お見かけしない顔ですが、失礼ですが、どちらの科ですの？」
「ボクは騎兵科に入ったばかりなんだ」
「わたくしは情報科ですわ。これも何かの縁ですの、一緒に登校しません？」

　そんなベタなお約束のシーンが今日も起こっていました。



「１週間の統計を取ったところ、この町工場の曲がり角は、４０．２２％の確率で、パンをくわえた女子生徒と衝突する……！」

　小暮　秀幸（こぐれ・ひでゆき）は、中指でメガネのフレームを押し上げながら呟きました。
　その手には、目撃情報や自分で実際に見た時の様子、数式などがびっしりと書き込まれた手帳が握られています。

「こちらはゆるやかな下り坂になっており、走ってくると自然と加速が付く。町工場の建物は大きく、曲がり角の向こう側が見えない。ここがシャンバラ教導団員の通学路として多く利用されている……など、様々な要因はあるものの、このパンをくわえた女子生徒と衝突する率の高さは偶然では説明がつかない何かがある。ここなら自分も……」

『小暮君、マグ・メル地方のことをウジウジ悩むくらいなら、慰めてくれる彼女くらい作ったら？』
『小暮、私の僕として側室の１人もいないのは嘆かわしいわよ』

　全身を振るわせる小暮の脳裏に、金元　ななな（かねもと・ななな）とパートナーの言葉がリフレインされました。

「この坂を曲がれば、自分にも出会いが……」
「この坂をパンをくわえて走れば、マナミンにも【運命の人】が……」

　噂を聞き付けたのか、年中無休で彼氏募集中の小谷　愛美（こたに・まなみ）も三斤分の食パンを抱えて来ていました。

「最近、生徒同士の接触事故が増えている？　そんなの、取り締まる必要あるのかね？」

　一方、教導団側からは長曽禰　広明（ながそね・ひろあき）が講師として問題のある曲がり角の見回りを命じられ、派遣されようとしていました。

「しかし、確かに偶然では片付けられない何かがあるな、この曲がり角には……取り締まるよりちょいと調べてみるか」

　出会いの季節は過ぎようとしていますが、ヒラニプラではまだまだ出会いの予感がありそうです。

　ゲームマスターを務めさせて頂きます、かむろ 焔と申します。
　どうぞよろしくお願い致します！

　ヒラニプラの一角にある町工場の曲がり角では、『パンをくわえて走る女子生徒が運命的な出会いをする』確率が、小暮君の統計曰く「４０．２２％」で起こっているとのことです。

パンをくわえた女子生徒と出会う
自らパンをくわえて走り出会う
長曽禰と一緒に取り締まる（出会いを演出する？）
この確率の原因を調べる

　の内容になっています。
　場所はヒラニプラですが、小谷愛美が食パン持参できているようにこの曲がり角の噂は全学校に広まっていますので、どの学校の生徒も気軽に参加して下さい。
　小暮やななな、長曽禰と面識のない方の参加も大歓迎です。

　このシナリオでは以下の行動が取りやすくなっています。
　もちろん、他にも行動が思い付きましたらアクションとして掛けて頂いて問題ございません。

・パンをくわえた女子生徒と出会う
　曲がり角の向こう側から歩いてきて、パンをくわえた女子生徒にぶつかられる側です。
　友達や恋人になれるかどうかは、その時の会話の雰囲気次第です。
　また、ぶつかる相手は異性とは限りません。
　ＰＣの指定がない場合、ぶつかる相手はこちらでランダムで決めさせていただきます。

　小暮はこちらに参加します。

・自らパンをくわえて走り出会う
　ゆるやかな下り坂の方から、パンをくわえて走り、曲がり角で運命の出会いをする側です。
　友達や恋人になれるかどうかは、その時の会話の雰囲気次第です。
　また、ぶつかる相手は異性とは限りません。
　ＰＣの指定がない場合、ぶつかる相手はこちらでランダムで決めさせていただきます。

　愛美はこちらに参加します。

・取り締まる
　列整理や出会いの演出など、上の２種類のアクションのサポートをしてください。
　素敵な演出をすれば、恋のキューピットになれるかも知れません？
　邪魔をする、という選択肢もありです。

　長曽禰はこちらに参加しますが、あまり乗り気ではないようです。

・この確率の原因を調べる
　小暮や長曽禰が言っていますが、この曲がり角のぶつかり率は高いといえます。
　何らかの理由があるかも知れません。
　皆さんで原因を考えてみて下さい。

　今回のシナリオでは、「この曲がり角の出会いが切っ掛けでパートナー契約した」「友達になった」「付き合い始めた」など、ＭＣとＬＣ、ＰＣ同士の出会いを演出いたします。
　このシナリオに限り、ＭＣとＬＣを別々のアクション（ＭＣがぶつかる側、ＬＣがぶつかられる側）を掛けて頂いてもダブルアクションとは致しません。
　ただし、運営チームから新しくＬＣが譲渡されるわけではございませんので、既存のＬＣをお使い下さい。

　なお、シナリオガイド中に書かれたＮＰＣ以外は登場しませんのでご注意下さい。

・パンをくわえた女子生徒と出会う

・自らパンをくわえて走り出会う

・出会いを演出する