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絶望の禁書迷宮  救助編

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絶望の禁書迷宮  救助編

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シナリオガイド

唯一人のパートナーを喪い、彼はシャンバラの荒野で「契約者」から「一般地球人」に戻った……
シナリオ名:絶望の禁書迷宮  救助編 / 担当マスター: YAM

(僕がバカだった……荒野を甘く見ていた。ごめん、めい子……)
 視界を埋める血の色。体を襲う強烈な痛み。薄れゆく意識の中、杠 鷹勢(ゆずりは・たかせ)は、激しい悔恨と共に心の中で呟きました。
 パートナーの血に染まる荒野の土の上にその体は倒れ――完全に意識は途切れました。


「――行くぞ。扉は開かれた」
 倒れた二人の契約者を冷たい目で一瞥し、黒フードの魔導師は、地下への入口に向かいます。同じような恰好の魔道師たちが彼に従います。
 先頭に立つ一人が何やら小さく呪文を唱えると、細い光のようなものが宙に走り、地下の中へと伸びていきます。
「これこそ、あの書が中に存在する証。もはやここを護る結界は我らにとっては無意味。この光が我らの道となる」
 そして彼らは、中へと入っていきました。
 しかし、地下への入口の階段の下には、一人の青年が立っています。血走った目を見開いて。


「……『魔道書』か。しかし、我らが用があるのはお前ではない。道を開けてもらおうか」
 黒いフードの魔導師は、彼を鼻にもかけていない物言いでした。が。
「汚らわしい、卑劣な人間め。断じて貴様らになど、我らの棲み家の地は踏ませんっ!!」
 次の瞬間、力が弾け、夜明け前の荒野を白い閃光が一瞬、奔りました。



「おい、『ネミ』……! まさか、あいつら全員、『森』に閉じ込めたのか!?
(大丈夫。あいつらが『森』を突破して出てこないよう、外から魔力で囲ってくれ
「それじゃあ、お前の負担が……!」
(俺のことは心配ない。人間どもを『中』に入れないことの方が大事だ。
 この先誰が来ても皆、この森に誘い込んで野垂れ死にさせてやる……!)
「ネミ……」

****

 波羅蜜多実業高校の跡地にある地下書庫。
 そこにある本は、魔道書の存在の有無を調べるために目録に目を通したことのあるアーデルハイト・ワルプルギス曰く「寄付という名目の不要本廃棄じゃろう」というくらいの、素性も価値も不明の“ジャンク”な本ばかりだったそうです。
 衆人から忘れ去られたその地下書庫を探して、地球から、謎の魔導師の集団『石の学派』がやってきたのは、2週間ほど前。
 彼らは「地球上の魔法勢力図を塗り替える」という目的で魔法テロを企ており、そのためにある魔道書を求めているというのです。
 しかし、彼らは知りませんでした。




(人間など……皆、荒野で野垂れ死にすればいい!!)
(我らの安住の地に踏み込ませてなるものか。殺してでも排除する)




 場所も長らく不明となっていた地下書庫が、人間を軽蔑し憎悪する魔道書達の巣窟となっていたことを。

****

 地下書庫の前には、地に倒れる一人の蒼空学園生。
 地上から来た魔道師に雇われ、利用された彼――杠 鷹勢の命は風前の灯でした。
 書庫の前でモンスターに襲われた彼は負傷し、また、彼の唯一人のパートナーである強化人間の御堂 めい子(みどう・めいこ)は、彼を庇って命を落としました。
 深い傷、パートナーロストの衝撃に加え、彼女が死んだことで鷹勢は、その瞬間に契約者ではなくなったのです。
 本来パラミタ大陸が受け入れることのない、一般地球人に戻ってしまったのです。


「……! これでは、テレポートは無理ですぅ」
 『石の学派』の一人が空京で逮捕されたことで彼らの企てを知ったエリザベート・ワルプルギス(えりざべーと・わるぷるぎす)は、地下書庫の場所を割り出し、テレポートで駆けつけたものの、倒れている鷹勢を見て愕然と呟きました。
「精神がないですぅ。ロストのショックでどこかへ飛んでしまったのでしょうかぁ? この体をテレポートで運べば、例え体が助かっても廃人は確定ですぅ」
 なんと、鷹勢の体から、彼の精神がどこかに抜け出てしまっているのです。
「一体どこに、……!?」
 エリザベートは、複雑な結界に守られた地下書庫の入口に、何者かの紡ぎ出す幻想空間の口が開いているのを知覚しました。
 


 

担当マスターより

▼担当マスター

YAM

▼マスターコメント

 こんにちは、YAMです。
 3作目のシナリオです。よろしくお願いいたします。

 パートナーが一人しかいない契約者の地球人が、“パラミタ大陸上で”そのパートナーと突然死に別れてしまったら……
 一人のコントラクターの悲劇、そして命の危機が、シャンバラ大荒野を舞台に展開します。
 参加される皆様に、彼の命は委ねられました……

 そしてこのシナリオは、人間嫌いの魔道書たちの巣窟『禁書迷宮』を巡る、最初の物語となります。

 どの学校の生徒さんでも参加可能です。


【地下書庫について】
 上記のとおり、ドージェが波羅蜜多実業高校の校舎を破壊した後、更地になった敷地の一隅に忘れ去られた地下書庫です。
 収められているのはいずれも、出どころのよくわからない怪しげな『ガラクタ』本ばかりで、恐らく学校関係者が「どういう扱いにしていいのか」分からなくて書庫に放り込んでほったらかしにしていたものだと思われます。
 そんなガラクタな本の中に、そこまで「力のある」魔道書があるとは思えませんが……地上から来た魔導師たちは、何故かここに在ると睨んでいます。

 しかし、この書庫に存在する魔道書は全員「人間嫌い」であり、この書庫に人間が入ってくることを断固として拒んでいます。
 自分たちを書庫に放り込んだきり忘れていたパラ実関係者に腹を立てているのではなく、この書庫に流れ着くまでの何年もの間、それぞれに虐げられ迫害されてきた歴史があるためです。
 そして、人間が嫌いな分、仲間たちで強く結束しています。
 彼らによって、この地下書庫の周りには幾重もの複雑な結界が張り巡らされており、侵入するのはまず不可能です。
 また、その結界の影響で周辺には特殊な磁場が形成されているらしく、この周辺では「小型結界装置」が正常に作動しません。

【杠 鷹勢について】
 18歳の蒼空学園高等部の生徒です。
 とある名門旧家の出なのですが、将来のことで家族と折り合えず、家出同然でパラミタにやってきました。
 パートナーの御堂 めい子は三十代半ばの女性でした。
 もともと杠家で「ねえや」として働いていて、早くに母を亡くした鷹勢の母代りとも姉代りともなっていました。
 鷹勢が家を出た時、彼を放っておけずについていき、彼が確実にパラミタに渡れるよう手術を受けて強化人間となり、契約したのです。

 鷹勢は読書が好きで、本はもちろん、古書・古文書にも目がありません。
 『忘れられたパラ実の地下書庫』のことを偶然知り、その蔵書に(くだらないものばかり、と言われていますが)興味を持ちました。
 彼にそれを教えたのは、正体を隠して近づいた『石の学派』の一人です。

【地上から来た魔道師たち『石の学派』】
 シナリオガイド本文の通り、「地球上の魔法勢力図を塗り替える」ことを企む秘密結社です。
 小さな結社ですが、中世ヨーロッパの魔術最盛期に結成されたもので、歴史はあると自負しています。
 欧州魔法連合の転覆をも視野に入れており、実力はまだ未知数ですが、企みだけならワルプルギス家に敵対していると言えるでしょう。
 今回、十数人ほどいますが、いずれも非契約者です。
 そのため、小型結界装置が効かなくなる書庫周辺に近づくことができず、自分たちの代わりに書庫に近づいて扉を開けてくれる者が必要でした。
 そこで彼らは、杠 鷹勢を利用したのです。
 鷹勢とめい子は書庫の扉を開きましたが、そこに近付こうとした魔導師たちに、荒野に住むドラゴンが襲いかかってきました。
 二人は戦って何とか駆逐したものの、めい子が落命し、鷹勢も重傷を負いました。
 書庫に入ることしか考えていなかった魔導師は誰一人、自分たちのために戦う二人に手を貸そうとはしませんでした。

 何重もの結界に守られた書庫内に彼らが入っていけるのは、何か特別な手段を持っているためのようです。

【幻想空間】
 扉さえ開けばあとは簡単に結界を突破できると考えていた魔導師たちは、一人の魔道書の紡ぐ幻想空間に飲み込まれました。
 この空間を作ったのは魔道書『森の祭祀録 ネミ』です。

 この幻想空間の中では、霧深い森の中を彷徨うことになります。
 森の中には黒い人影が無数に存在します。その中で、金色の木の枝を身に着けている影は、こちらを認識した途端襲ってきます。
 (持っていない影はこちらに注意を払わず、どこかへ向かっていきます)
 彼らは幻影ですが、闇魔法による殺傷能力を備えています。
 防御力は高くなく、物理攻撃でも魔法でも倒せますが、すぐにまた影を結んで実体化します。
 彼らを消すには、枝を取り上げるしかありません。
 枝は壊すことも、壊さずに入手することもできます。枝が手元になくなった時点で幻影は消えます。
 枝を壊してもデメリットはありませんが、枝を持っていると攻撃されなくなるようです。
 幻影は無制限に湧いて出てきます。枝を持った集団に取り囲まれるとなかなか厄介です。


 この森の中には石の学派の魔導師たちとともに、パートナーロストのショックで肉体から飛び出してしまった鷹勢の精神も紛れ込んでしまっています。
 彼はロストのせいで弱っています。まともに幻影と戦い続けられるとは思えません。
 また、もしも石の学派の魔導師に出くわしたら、彼らは口封じのため鷹勢を消そうとするでしょう。
 彼の精神を守り、肉体に無事に戻すためには、この森に入って彼を探すしかありません。口が開いているので、入ることは簡単です。

 石の学派はまた、契約者たちに出会っても、攻撃魔法で襲いかかってきます。
 彼らは彷徨いながらも、自力でこの幻想世界を内部から崩壊させようと試みています。

【幻想の森を出るには】
 入るのは簡単な幻想空間ですが、出口は封じられていて、今のままでは出ることができません。
 空間を作り出すネミが彼らを出すまいと頑張っている上に、外部から他の魔道書たちが、この幻想空間を破らせまいとして魔力で囲ってしまっています。

 彼らが頑張るのは、侵入者=石の学派を、この地下書庫の内部に進めまいとしているからです。
 幻想空間が破られれば、鷹勢の精神は解放されて肉体に戻りますが、同時に侵入者たちも解放されます。
 しかし、鷹勢を助けるためには、幻想空間は一旦解除してもらわねばなりません。
 ですが先述の通り、魔道書達は人間を憎み、信頼していません。説得は困難を極めるでしょう。

 ただ、石の学派が実力行使で無理矢理空間を内部から破る可能性もあります。
 その場合、ネミも他の魔道書も無傷では済みません。その可能性を訴えて交渉するという手もありです。

 ネミに力を貸している魔道書達は姿を隠していますが、入り口近くにいるので、呼びかければ声は届きます。
 ネミ本体も、彼らの中の誰かが所持し、守っています。
 地下書庫で、人間が入れるのは、扉を開けてすぐの下り階段を降りたところまでです。
 エリザベートは幻想空間には入らず、ここから、空間を解除するよう魔道書たちに呼びかけるようです。

 幻想空間と外部とでは、精神感応でならやり取りできます。MCが空間内に入り、LCが外部にいて魔道書とのやり取りの結果を伝える、というようなアクションは可能です。
 HCは全く使えないとは断言できませんが、結界で特殊な力場が形成されているため、完全に作動するという保証もできません。

【鷹勢の搬送】
 契約者でなくなった彼には、シャンバラ大荒野に生息するモンスターや野獣、パラミタ大陸の異物排除反応的な天災が迫っています。
 襲撃が想定されるモンスターはドラゴン、恐竜、レッサーワイバーンなど。有翼の魔物の襲来も考えられます。
 天災は、砂嵐や竜巻などが考えられます。
 出来るだけ急いで空京に運ぶ必要があります。

 にもかかわらず、シナリオガイド本文にあるような理由で、テレポートのように非物質的な力で一瞬で移動するような手段はとれません。

 また、小型結界装置があっても、先述の理由で地下書庫周辺では作動できません。
 加えて、鷹勢の精神が地下書庫内で異空間に囚われている影響か、彼に対しては、シャンバラ大荒野内では結界装置が効果を発揮しません。

 蒼空学園からの要請で、空京からの緊急救助隊が向かっていますが、危険なので荒野にまでは入ってこられないようです。
 荒野を南下してヒラニプラ近辺辺りまで搬送できれば、その先は結界装置も使用でき、空京の医療機関に搬送してひとまず彼を助けることは出来ます。
 結界装置に相当するものが準備できる場合、鷹勢の精神の解放が早ければ、荒野南端部の辺りでそれを使うことができるかもしれません。
 しかし基本的に、大荒野の中央部は結界なしで突破しなくてはならないと思って下さい。

【ところで…】
 絶命した御堂 めい子の遺骸は、地下書庫前から消えています。エリザベートが到着した時にはもうありませんでした。
 石の学派が運び去ったと思われますが、目的は不明です。

▼サンプルアクション

・天災やモンスターと戦いつつ鷹勢の搬送

・幻想空間に入って鷹勢の精神を守る

・魔道書たちを説得し、幻想空間解除を訴える

▼予約受付締切日 (予約枠が残っている為延長されています)

2012年06月11日10:30まで

▼参加者募集締切日(既に締切を迎えました)

2012年06月12日10:30まで

▼アクション締切日(既に締切を迎えました)

2012年06月16日10:30まで

▼リアクション公開予定日(現在公開中です)

2012年06月29日


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