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シナリオガイド

これが最後のリストラ?リストレイターの力を結集し、知識を食い荒らすものを救おう!
シナリオ名:ようこそ! リンド・ユング・フートへ 4 / 担当マスター: 寺岡 志乃

    ここはリンド・ユング・フート。
    人の無意識の底にある、知識の源。
    そこを流れる1つの川、1つの夢、それは1つの意識――――――



 リストレーションの終わった童話『マッチ売りの少女』を抱えて、スウィップ スウェップ(すうぃっぷ・すうぇっぷ)は七色ラメが輝くリボンロードを走っていました。
 その道の先にあるのは白亜の宮殿とも呼ぶべき場所。この集団無意識世界の図書館リンド・ユング・フートの中枢、館長や検閲官たちの住まう光輝く優美な神殿でした。
 スウィップは筆頭司書。普通の司書であれば手続きを必要とする窓口もフリーパスです。
 門をくぐった彼女はそのまま走り続け、シャランシャランと鈴のような音をたてるいくつもの扉をくぐり抜けて、その先にある検閲官室へと飛び込みました。

「検閲官さま!! どういうことでしょうか!?」

 彼女の声を聞いて、この部屋でただ1人の検閲官がひざの上に乗せていた本から顔を上げます。
 ほのかな燐光を発する肢体。長く大量の青白いひげが滝のように流れ、彼の足元を埋めています。彼は青い宝石をはめ込んだような瞳から『青の検閲官』あるいは決して崩れない冷静沈着さから『氷の検閲官』と司書たちに呼ばれる、リンド・ユング・フートの長老的存在でした。

「スウィップ、まずは落ち着きなさい。そしてゆっくりと頭のなかで整理をしてから口を開きなさい」
「は、はい……申し訳ありません」

 スウィップは言われるままに深呼吸し、動揺を鎮めてから、先ほどリストレイターから聞いたことを話しました。
 それは、リストレーションをしている最中、青い人のような影を見たというものでした。

「青い人影って、あたしたち司書ですよね!? 司書が本のなかへ入ったとき、とる姿です。でもどうして司書がリストレ中の本のなかにいるんですか? しかも外にいたあたしは全然気付けませんでした!」
「司書がいた?」

 スウィップの報告に氷の検閲官は、表情こそ変えませんでしたが驚いているのはあきらかでした。そしてすぐに、思い当たったように小さくうなずきます。

「そうか。一瞬でもあちらとつながったというわけだね。やはりきみが…」
「検閲官さま?」

 首を伸びきらせて見つめるスウィップを、検閲官はじっと見下ろしました。普段であればどこか突き放したような、威厳ある態度で司書たちを見る厳粛な瞳が、このときばかりはどことなく悲しそうです。
 そして説明を待つスウィップを手招きし、作り出したイスに腰掛けさせると、ゆっくりと話し始めました。
 それはこういうことでした。

 リンド・ユング・フートの本を破壊している『知識を食い荒らすもの』、その正体は迷い込んできた人の意識体です。
 彼女はリストレイターたちのようにこちらの住人に呼び込まれてきたのではなく、全くの偶然からこの無意識世界の階層まで下りてきてしまったジーナという名前の女性でした。
 迷い込んだ彼女を見つけたのが司書リヴィンドル・レヴィンドルです。彼は彼女にここがどこかの説明をし、本来の居場所である意識世界へ導こうとしました。ジーナもまた、元の場所へ戻ることに異論はなく、リヴィンドルの誘導によって意識の階層を上がっていたのですが……。

「彼女は思い出してしまったのだよ。自分が病院のベッドで発作を起こし、今まさに死にかけていることをね」

『いや!! 戻りたくない!!』

 ジーナは死の恐怖からパニックを起こし、きびすを返して無意識世界へ戻ろうとしました。その際に、リヴィンドルにぶつかってしまったのです。

「きみももう知っているね? こちらの世界の住人は、呼び込みの魔法によって召喚された者以外の生きた人間の意識体には触れてはならないということを」

 スウィップは硬い表情でうなずきました。そのため先日バラバラになって落ちてきた友人松原 タケシ(まつばら・たけし)の意識を救えず、彼の友人たちが彼を救いに下りてくるまで見守ることしかできなかったのです。
 無意識世界の住人・リヴィンドルは否応なく彼女の暴走に巻き込まれてしまいました。

「今現在も2人の意識はからまったまま、深淵と呼ばれる虚無へ向かって落ちている。その距離はジーナの死までの時間だ。飛速はどんどん早くなっていて、わたしたちの時間でもおそらくあと十数時間というところだろう」

 2人はジーナの死というレールを走っており、彼らがどこにいるかを外側から見つけるのは困難です。
 リヴィンドルはジーナの死の落下に巻き込まれたまま、必死に仲間へSOSを送ってきていました。それが、あの『食い荒らされたような本(知識)』です。彼も司書なので、一部でも残っていればその本が修復可能であることを知っています。自分の周囲を通りすぎていく本を捕まえ、本を完全破壊しないように一部を残しつつ、必死に事のあらましや自分の状況を残していっていたのでした。

「もちろんそれはわれわれが回収し、確認を終えてからきみたち修復チームへ渡していた」
「でも! じゃあ通りすぎた本に、どうしてリヴィンドルの姿があったんですか!?」
「それはおそらく幻影だ。よほど強烈に焼きついたか、そこに彼らの一部が引っかかったのだろうな。それがきみに反応したんだろう。やはり同じ意識世界の意識体として響き合うものがあったと――どうしたのだね?」
「あ、あたしが……意識体…?」

 スウィップは大きなショックを受けていました。それも当然でしょう、彼女はずっと自分を無意識世界の住人だと思っていたのですから。自身の存在が根底からひっくり返されたようなものです。
 それと知って、彼女を見る検閲官の視線がさらに憐れむような眼差しになりした。

「どうやらきみは、自分が何者かも忘れてしまっていたようだね。もうそんなにもきみの意識は流れてしまっていたのか。無理もない。あれから何千年も経った」
「あたし……あたしは…」
「きみはこの世界の住人ではない。5000年前意識世界から下りてきた人間の意識体だ」

 無意識世界はパラミタにいる人々の無意識が溶け合い、混ざり合ったものです。そこに何のコーティングもなしに下りてきた意識はどうしても溶けやすく、水に放り込んだ砂玉のように流れてしまうのでした。

「……あたしが、ここの住人じゃないことは、分かりました…」

 スウィップはうなだれ、つぶやきます。
 検閲官は絶対に嘘を口にしたりしません。彼が言った以上それは覆しようのない事実、受け入れるしかないのだと。

「でもそれなら、あたしがジーナたちを見つけることができるんじゃないですか? あたしとジーナは感応するんでしょ? それを利用して――」
「わたしたちがその可能性について考えなかったと思うかね? そしてわたしたちはそれはしてはならないと結論した。
 絶対にきみを彼女に近付けるわけにはいかない。もしも接触すれば、きみも彼女のパニックに捕まってしまう。同じ意識体として、それこそリヴィンドルの比ではない。しかもそうして忘れてしまったきみには彼女の死の恐怖に対抗する強さがない。おそらくきみとしての意識を残すこともできないだろう。
 心配しなくていい。今われわれはリヴィンドルを救うため、特殊な網を作っている。この世界の住人だけを引っかけるものだ。ジーナはすり抜けるから、深淵へ落ちるのは彼女だけだ」
「えっ!? じゃあジーナはどうなるんですか!?」

 検閲官は断言しました。

「ジーナは救えない。死の瞬間、意識は例外なくあの深淵をくぐらなければならない」

 それはスウィップも聞かされて知っていました。
 でも、ならジーナは死の恐怖にとらわれたまま、1人あの虚無の穴へと落ちていかなくてはならないのでしょうか?
 スウィップの胸に、いつか見た虚無の深淵の姿が浮かびます。
 ぽっかりと大きく口をあけた真っ暗な闇。そこへ悲鳴を上げながら落下していく女性。
 直前でリヴィンドルは救われたのに、自分だけが落ちていく――――

「そんなことってない」

 ぎり、と唇を噛み締め、スウィップは周囲をきょろきょろ見回すと、ただよっていた1冊の本を掴みとりました。
 それもまた、リストラを必要としている本です。
 表に金打ちされていたタイトルは『青い鳥』

「この本をリストレーションさせてください。きっとあたしとみんなで、ジーナを救ってみせます!」



 スウィップはいつもの丘に立ち、意識世界を見上げました。
 決意に満ちた目をして握り締めたタクトを振り上げ、召喚の魔法を始めます。

「みんな、あたしに力を貸して。この本をリストレーションして、ジーナの正気を取り戻したいの!」

担当マスターより

▼担当マスター

寺岡 志乃

▼マスターコメント

 こんにちは、または初めまして、寺岡 志乃といいます。
 こちらのシナリオは、何でもアリのドリームシナリオになります。
 今回で4回目になりますが、1話完結のシナリオですので初めての方でも問題なく参加できます。
 もうすっかりわたしの年始シナリオになっているような(笑)


 4回目にしてついに『知識を食い荒らすもの』の正体が判明しました。(ついでにスウィップも)
 今回のシナリオは、2人をどうにかする話となります。

 とはいっても、基本的にすることは前回までと同じ、本のリストレーションです。
 スウィップは『青い鳥』をリストレーションし、その内容を直接ジーナに送り込むことで正気を取り戻させるつもりでいます。ショック療法、本のイメージを送り込んでの説得みたいなものです。

 その『青い鳥』ですが、この本の中では今、森のなかの一軒家で両親とともに暮らす兄と妹という表現しかありません
 もちろんリンド・ユング・フートへ来た全員がこの話を知っているはずなのですが、そこから先を全く覚えていません
 『青い鳥』というタイトル以外、全くド忘れ状態です。想像力を駆使してここから物語を作り上げてください。

 ちなみに『青い鳥』の主たる場面は以下のようになります。

 【1】チルチルとミチル兄妹を魔女が訪ねてくるシーン。
 【2】『思い出の国』で老人たちと会って青い鳥を手に入れるシーン。
 【3】『夜のごてん』で戦傷を負った人や病気の人に会って青い鳥を手に入れるシーン。
 【4】『贅沢のごてん』で裕福な人と会って青い鳥を手に入れるシーン。
 【5】『未来の国』でこれから生まれる赤ちゃんたちと会って青い鳥を手に入れるシーン。
 【6】母親に起こされて全部夢だったと悟るシーン。
 【7】飼っていたハトが青い鳥だった、青い鳥ははじめからそばにいたんだと悟るシーン。

 このうちのどれかのシーンでもいいし、それ以外のシーンでも構いません。
 この通りの進行でも、はたまたオリジナリティあふれる創作でも、それは皆さんのお好みで。
 どのシーンで何をするか、アクションに盛り込んでください。

「きっとここはこうに違いない!」
「この方がいいよね!」
「あたしがミチルになる!」
「じゃー俺チルチルな!」

 そんなふうに場面場面を作り上げていってください。もちろんラストも好きに作ってくださって構いません。
 必ずしも上の【1】〜【7】の展開どおりにする必要はありません。
 ただ、どこに入れればいいか分からなくなるので「【5】でチルチルとおにごっこして遊ぶ!」というふうに場所指定は入れてください。
 ただし「スウィップと話す」といった、リストレーションに関係ないアクションをされる場合は入れる必要はありません。

 登場人物になりかわって動くこともアリ! 一度目にしたものなら女性でも男性でも、はたまた犬・鳥にだってなれます!
 ここは本の世界で、皆さんはクリエイター権限を持ちますので何でも自由創作が可能なのです!

 でも、あまりに話の本位とかけ離れた荒唐無稽なもの・想像でしか知らないものを創り出すことはできません。創造は「知っている」ことが条件となります。知らないものは作ってもかなりお粗末な出来となります。
 ただし、スウィップは皆さんのクリエイター権限よりも上のライブラリアン権限を持っていますので、例えば「チルチルを殺害する」というように逸脱行為が目にあまると強制排除をかけてきます。くれぐれも悪ノリにはご注意くださいね。


 あと、いつものように松原 タケシリーレン・リーンもいます。彼らに何かしてほしいことがあったら遠慮なくどうぞ。あまり頼りにならない2人ですが(笑)
 もちろんスウィップにアクションをかけられてもかまいません。
 同じ意識体としてジーナに、あるいは彼女にからめとられているリヴィンドルに何らかのアクションをかけてもかまいませんが、こちらはかなり難易度高めです。ジーナは極度のパニックから正気を失っており、リヴィンドルはほとんど身動きできない状態です。同じ意識体ですから、見つけられても接触すれば抵抗できず、死の落下に引きずりこまれます

 注意点としては、氷の検閲官の言うとおりジーナは死から救えないということです。
 例えば「現実世界で死にかけているジーナを救う」というアクションをかけられても、あなたが目を覚ました瞬間にリンド・ユング・フートでの何もかもを忘れてしまいます。意識世界に無意識世界の記憶は持ち返れません。そのためジーナの存在すら知らないことになります。もしアクションをかけてきた場合、そういうリアクションとなりますのでご注意ください。
 パニックを起こしているジーナの意識、心を救おう、というのが今回のアクションの主目的となります。


 また、もう1つ皆さんに考えてほしいことがあります。
 それはスウィップの今後です。
 今回彼女は無意識世界の住人でないことが判明しました。彼女は5000年前、ジーナのように無意識世界へ下りてきた人間だったのです。諸事情により無意識世界へとどまり、検閲官の力で保護されてリンド・ユング・フートの司書として活動していたのですが、保護は完璧ではなく、少しずつ意識が流れて自分のことを無意識世界の住人だと思い込むようになりました。
 彼女はジーナのように意識世界へ戻るべきでしょうか? それとも無意識世界にとどまるべきでしょうか?
 とどまったとしても溶けて流れて完全消滅したりはしません。今のままのスウィップの状態で維持されます。(ようは皆さんと出会う前に、すでに流れるだけ流れてしまっているということですが)

 皆さんのアクション文字数を削って申し訳ありませんが、よかったら下記のいずれかをMCのアクションの末尾に入れておいてください。なかった場合は棄権と判断させていただきます。
 スウィップは意識世界へ戻った方がいい、という方→【戻る】
 スウィップは無意識世界にとどまった方がいい、という方→【残る】
 その合計によって、エンディングが少し変化します。

 ちなみにスウィップ本人は、それについては全く考えていません。自分のことよりまずはジーナとリヴィンドルを救うことが先決、と思って動いています。
 彼女に説得アクションをかけてもいいですが、そちらにばかりアクションが集中しますと肝心のリストレーションが失敗して、ジーナを救えなくなるので注意してくださいね。
 「MCはリストラ、LCはスウィップと話す」というのはWアクションと判定させていただきます。基本的にMC・LCはともに行動するようにしてください。


 なお、このことにより現実世界での本作品自体の改編はできません。あくまでこれは人々の無意識下の認識(知識)の創作です。
 もっとも、していることはインプリンティングですから、現実世界でオリジナルを読んだとしても、今後はこの内容のように認識して記憶に残ることになりますが……。


 それでは皆さんのアクションで作られる『青い鳥』を楽しみにお待ちしております。

▼サンプルアクション

・登場人物を動かす

・登場人物になる

・世界を堪能する

・スウィップと話す

▼予約受付締切日 (予約枠が残っている為延長されています)

2013年01月05日10:30まで

▼参加者募集締切日(既に締切を迎えました)

2013年01月06日10:30まで

▼アクション締切日(既に締切を迎えました)

2013年01月10日10:30まで

▼リアクション公開予定日(現在公開中です)

2013年01月25日


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