イルミンスール魔法学校

　

「……ロイヤルストレート？」

　シャンバラ教導団の一室、金　鋭峰（じん・るいふぉん）は眼前の相手の言葉を、胡乱げに繰り返しました。

「ああ、ダセェ名前だろ？　五人組で、キングとかクイーンとか、いい年して恥ずかしげもなく呼び合ってるんだよ」

　金の鋭い視線を受けながらも、ふてぶてしく構えているのは、少女と見紛うほどの可愛らしい顔の青年でした。
　その態度や乱暴な言葉遣いが、なんとも似合っていません。

　近頃台頭してきた武器密輸グループの情報を提供する、と青年がシャンバラ教導団に現れたのは、突然のことでした。

　ここ最近、武器密輸グループの活動が活発になっています。
　地球では怪物が突如として出現する事例が相次いでいることから、パラミタ製の武器に改めて注目が集まり、それらの密輸も大きなビジネスとなっています。
　テロリストや武力商売に特化した国の軍へ流れる数も多く、シャンバラ教導団はそうした武器密輸グループの摘発に注力していました。
　青年が語るグループもそのうちの一つです。

　駆け引きもなにもなく、ぺらぺら喋る彼の情報は、真偽のほどは疑わしいものばかりでしたが、さりとてガセネタと切って捨てるには引っかかる、部下の報告を受けた金はそう判断して、直接話を聞きに来ていました。

「10・ジャック・クイーン・キング・エースで、五人組ということか？　しかし、それならばロイヤルストレートフラッシュではないのか」
「知らねェよ。あいつらの絶望的なセンスなんて理解したくもないね。それに、名前の由来について聞きに来たわけでもねェだろう」

　ふむ、と金は頷き、

「では本題だ。件のグループが、近くに大規模な取引を予定しているという話だったな？」
「そう。だから摘発なりなんなりして、やつらをとっ捕まえてくれ。無害な一市民の、善意からの通報だよ」

　『つい一週間前まで密輸グループの一員だった』と自称する青年は、ぬけぬけと言い放ちました。
　それだけに、軽々しく信用するわけにはいきません。金の視線が、より一層鋭くなります。

「その話が、罠ではないという証拠は？」
「ない」

　青年はあっさりと言い切りました。そして、金を真っ直ぐに見据え、言葉を続けます。

「だから、命を賭けよう」

　金は無言で先を促します。　

「監視つきで俺を連れてけ。おかしな真似をしたら後ろから撃つなりすればいい。それに、俺の話が本当なら、俺は連中にとっての裏切り者だ。血眼になって狙う、とはいかないまでも、囮くらいには使えるよ」

「……そこまでする理由は？」
「ダセェ名前に嫌気が差したんだよ。それに、こういうのは適当なとこで切り上げるべきだろ」

　明らかな韜晦の言葉を投げやりに言って、青年はぐい、と身を乗り出し、口を吊り上げました。

「それより、俺は全財産を賭けたんだ。さて、あんたはどうする？　
　コールか、ドロップか」

　しばし沈黙の後、金は口を開きました。

「……いいだろう。その話を信じようではないか」

　金の返答を受けて、青年は一つ、手を打ち鳴らしました。

「グッド。決まりだ。さあ、忙しくなるぜ。あいつらはともかく、取引相手にゃそれなりのお出迎え役がいるだろうしな。ロイヤルストレートなんて聞いたこともねェ手より、いい手を用意してもらおうか」

　不敵な笑みを見せる青年に、ふと思い出したように、金が尋ねました。

「名を聞いていなかったな」

「あぁ、そういえば名乗ってなかったか。『臆病者』だよ。あいつらはそう呼ぶだろうし、それでいい」

　お久しぶりです、よりも初めましての方が多そうな浦苗　綿です。
　よろしくお願い致します。

　今回は武器密輸グループの制圧が目的となります。
　全校に協力要請がされていますので、どなたでもどうぞ奮ってご参加ください。

■場所について
　密輸グループの取引場所は、山中にある廃墟と化した洋館です。
　周りは森に囲まれており、唯一の入り口である正面門には数人の警備がついています。
　また、洋館内には逃げるための隠し通路なども考えられそうです。
　十分な広さもあるので、制圧時には問題なく暴れられるでしょう。

■制圧対象について
　『ロイヤルストレート』と名乗る五人組とグループと、その取引相手のマフィアがいます。
　マフィアにはそれなりの数の構成員がいることが予想されます。
　

■NPCについて
　偉そうな口を叩く『臆病者』ですが、基本的にはからっきしの無能です。
　彼になにかを期待するのは無駄でしょう。

　なお、金　鋭峰は本部にて指揮にあたっているため戦闘には参加しません。

・正面から突入する

・逃げ道を抑える