イルミンスール魔法学校

　現在から数年後、地球。とある施設。

　個室。

「おい、大丈夫か、キスミ」
　双子の兄のヒスミ・ロズフェル（ひすみ・ろずふぇる）は車椅子に乗った弟のキスミ・ロズフェル（きすみ・ろずふぇる）に気遣いの言葉をかけます。二人の姿は２０歳前半の若者です。
「……」
　ヒスミに声をかけられてもキスミはぼんやりと虚空を見つめるばかりで何も反応を示しません。どこか廃人のようです。
「今日は天気もいいから散歩にでも行くか。やっぱり故郷の地球に戻って良かったな」
　ヒスミはにっこりとキスミに笑いかけた後、左足を引きずりながらキスミを乗せた車椅子を押してゆっくりと部屋を出て施設に併設されている庭へと向かいます。

　施設の庭。

「……ごめんな、キスミ。実験で俺がやり過ぎてお前をそんな身体にしてしまって、お前が止めるのを聞いてたらこんな事にはならなかったのにな。本当にごめんな」
　ヒスミはキスミの前に立ち、涙を流し始めました。
　実は、数ヶ月前に悪さ目的の魔法実験をしたのですが、ヒスミはやり過ぎを止めるキスミの制止を聞かずに実験を続けました。当然、聞き入れられなかったキスミもいつものようにヒスミの言葉に調子に乗りました。実験は失敗し、暴走してしまいました。何とか暴走を止める事は出来たのですが、ヒスミは左足に損傷を受け、キスミは廃人同然となってしまったのです。
「……」
　廃人と化したキスミはぼんやりと泣いて謝る双子の兄を心の無い目に映すばかり。
「ずっと、俺が側にいてお前の面倒を見続けるから。何があっても」
　ヒスミはキスミの両手を握りながら泣き続けていました。

■■■

　イルミンスール魔法学校、実験室。

「……出来た。未来を見せる薬、未来体験薬」
　アゾート・ワルプルギス（あぞーと・わるぷるぎす）は紫とピンク色の液体が入った霧吹きをそれぞれ手に持ちながら満足そうな顔をしていました。
「さてと最初の被験者はキミ達だね」
　アゾートの視線の先にはヒスミとキスミがいました。
「なんで俺達なんだよ」
「この縄を解けよ！！」
　縄により椅子に拘束された双子は口々に文句を垂れます。
「今日も懲りずに悪さをしおって。そのままではろくな未来はないぞ。その事をよーく考えるのじゃ」
　双子の横にいるアーデルハイト・ワルプルギス（あーでるはいと・わるぷるぎす）が双子の頭を小突きました。悪さをしているところを発見し、説教をし終えてからアゾートの元に連行したのです。
「うるさいぞ、この魔女ババア」
「そうだぞ、説教ババア」
　双子は小突かれた痛みに顔を歪めながらアーデルハイトに悪態をつきました。
「……ババアとな。ほぅ、やるのじゃ」
　アーデルハイトは双子の発言にピクリと青筋を立てながらアゾートを促します。
「効果は数十分、睡眠に似た状態になるだけだから」
　そう言ってアゾートは紫色の液体が入った霧吹きを双子の顔に吹き付けました。
　すると双子は睡眠状態に入り、悪さ目的の魔法実験の失敗で負傷した暗い未来へと誘われて行きました。
「この紫は暗い未来、ピンクは明るい未来。明るい未来は今生きる事の支えになり暗い未来は警告になる」
　アゾートは効果のほどを確認していました。
　実は、正体不明の魔術師の調査ついでに人々を別世界に誘った事件に興味を持ち、そのような物を作り出せないかと試行錯誤をして本日完成したのです。幾年後の未来を体験する薬を。
「これでこやつらの面倒事が本当に片付けばよいのじゃが。これまでの事を考えるとそうはいかぬだろうが、一週間ほど大人しくなればのぅ」
　アーデルハイトは溜息をつきながら双子の寝顔を眺めていました。
「まぁね。ちょうど、他の被験者が来たみたいだ」
　アゾートはアーデルハイトにうなずいた後、続々とやって来た被験者の方に顔を向けました。

　今回はアゾートの魔法薬の被験者としての参加となります。魔法薬によって体験する未来は明暗どちらでも構いません。もちろん、未来を見る以外にデータ集めをするアゾート達のお手伝いをしても構いません。とにかく存分に楽しんで下さい。


【未来体験薬について】
・ピンクは明るい未来、紫は暗い未来を見せます。

・何年後の自分の未来が見えるかは被験者によって様々となります（ＭＣとＬＣが別の未来を見ようが同じ未来を見ようが自由です）。

・未来を体験している間は睡眠に似た状態になり、数十分もすれば目を覚まします。

・今回体験する未来は、必ず訪れる未来というものではなく、可能性の一つとしての未来となります。

【ＮＰＣ呼び出しについて】
・体験する未来によっては、公式のＮＰＣを呼び出しても構いません。今回のシナリオでは、ＮＰＣの立場や状況など関係無く呼び出す事は可能で
　す。

　公式ＮＰＣを呼ぶ場合は、ＬＣを追加し、アクションの一番最初に、
【公式ＮＰＣ：◆◆・△△△△（ＮＰＣのフルネーム）】
　と明記して下さい。
　このＬＣはリアクションへの登場は出来なくなります。
　ＮＰＣとの関係の補足やあるいは希望等があればこのＬＣのアクション欄にお書き下さい。
　ただし、ＮＰＣの行動を指定することは出来ません。あくまでも希望という事になります。
　ＬＣが公式ＮＰＣと過ごし、ＭＣは参加しない場合はＭＣの欄を公式ＮＰＣ用の枠として使用しても構いません。この場合、ＭＣはリアクションに登場せず、ＬＣと公式ＮＰＣが描写されます。
　ＬＣのアクションが書ききれない場合は、どこからがＬＣのアクションなのか分かるようにして下されば、 ＭＣのアクション欄を使用しても構いません。

【アゾートとアーデルハイトの動向について】
・アゾートは被験者の体調管理やデータ集めに動きます。

・アーデルハイトは主に双子覚醒後に備えていますが、アゾートの手伝いにも動きます。

・二人のお手伝いをして頂いても構いません。

【双子の動向について】
・双子は立場は違いますが同じ未来を見ています。ヒスミは自分のやり過ぎでキスミの人生を台無しにした事に後悔と悲しみを抱き、キスミはヒスミ
　を止めきれず、ヒスミに重い十字架を背負わせた事に悲しみと申し訳なさを抱いています。

・覚醒後にアーデルハイトと一緒に聞き取りや説教などをしても構いません。

・明るい未来を体験する

・暗い未来を体験する

・お手伝い