イルミンスール魔法学校

おおまかなあらすじ
　７０００年前、国家神アマテラスが封じたオオワタツミを解放した大罪人ヒノ・コの孫ツク・ヨ・ミ（つく・よみ）は、祖父の願いをかなえるために軟禁されていた伍ノ島の館から逃げ出しました。
　ツク・ヨ・ミの持つ起動キーを狙って襲いかかるヤタガラスをどうにか振り切り、地上で知り合ったシャンバラの少年ウァール・サマーセット（うぁーる・さまーせっと）やコントラクターたちと浮遊島へ戻ったものの、起動キーは彼女を伍ノ島へ連れ戻そうとするナ・ムチ（な・むち）に奪われ、さらには伍ノ島太守コト・サカ殺害の濡れ衣を着せられてしまいます。
　ヒノ・コの願い、それは各島に魔物を寄せつけない安全な橋を架けるということでした。それを叶えるためには各島の太守が持つ５種の神器が必要です。壱ノ島太守モノ・ヌシから神器ヒガタノカガミを受け取ったツク・ヨ・ミは、次に弐ノ島太守エン・ヤを訪ねました。しかしエン・ヤは５年前、すでに神器ヒボコノカガミを手放していました。
　肆ノ島太守クク・ノ・チの手の者によってさらわれたツク・ヨ・ミを救出することには成功しましたが、直後現れたオオワタツミによって、再びツク・ヨ・ミは敵の手に落ちてしまいます。
　そしてオキツカガミの持ち主、参ノ島太守ミツ・ハはオオワタツミの化身タタリに左腕を喰われるという重傷を負ってしまい――……。



●弐ノ島　太守の屋敷

　疲れ切ったコントラクターたちが港から戻ってきたとき、弐ノ島太守の屋敷は外門をくぐった時点でも分かるほど騒然としていました。
　一体何事かと驚き、ドアを開けると、そこには白衣を着た弐ノ島太守代理サク・ヤが立っていました。長い黒髪を束ねて、それをおおうような白帽をかぶってピンでとめていた彼女は、現れた彼らに気づいて振り返ります。

「どうしたんですか？」
「参ノ島太守のミツ・ハさまがわが家をご訪問される際に魔物の襲撃を受けて、重傷を負われてしまったの。今から手術をするのよ」

　いかにも時間がないといった様子でサク・ヤは簡潔に説明をすると、廊下に用意されていた消毒薬の入った洗面器にゴム手袋をした両手を沈めて消毒をし、やはり白衣姿で待っていたほかの数人の者たちと一緒に地下へ通じるドアの奥へ入って行きました。
　心配そうにドアを見守る彼らを、ほかの者たちがいる居間へと案内しながら家政婦のス・セリが言います。

「大丈夫です。この島の者は何もかも自分たちでしてこなくてはなりませんでした。特に外科医療に関しては、設備は見劣りするかもしれませんが、ほかの島には負けないと自負しております。医療師もサク・ヤさまの腕もたしかですから」

　はたして緊急手術は成功し、ミツ・ハは無事、一命をとりとめることができました。

「相当出血をしていましたが、バイタルはしっかりしています。ミツ・ハさまはお強い方ですから、数日養生されればすぐにベッドから出られるようになります」

　今は麻酔が効いて眠っているということでした。
　説明を終えたサク・ヤは、そこで少しためらう素振りを見せます。そして控えめに話を切り出しました。

「こんなときに言うことではないのかもしれませんが、実は島の者が、機晶石を採掘してくださった地上の皆さんにお礼がしたい、今夜ささやかながらも野外パーティーを開くことにしたのでその席にご招待したい、と言って、その準備をしています。
　十数年ぶりに、天燈（あまつひ）流しもしようと言っています。
　まさかこのような出来事が起きるとは思ってもみなかったことですから……。
　こんなことを言うのは恐縮ですが、よければ皆さん、参加していただけませんでしょうか」

　こんにちは、またははじめまして。寺岡志乃といいます。
　このシナリオは、シャンバラとカナンの間にある雲海に囲まれた５つの島を巡っての冒険物【蒼空に架ける橋】シリーズの第３話の夜、第４話の前日のお話となります。
　シリーズ中の話ではありますが、番外編的要素が強めとなっていますので、本編を知らなくても問題なく参加できる内容となっています。これまで未参加の方も、お気軽にご参加いただけたらと思います。

　野外パーティーが開かれることは全島にいるコントラクター全員に情報が回っています。
　参加されますＰＣは、すでに弐ノ島へ来ているところからスタートになります。
　それ以外の島で何かアクションを起こされる場合、今回のシナリオに関係ないアクションとして処理されて、リアクションが薄くなる可能性がありますことをご理解ください。


●ＮＰＣについて
エン・ヤ……弐ノ島太守です。ずっと寝たきりでしたが回復途中にあります。短い時間ですがパーティーに出る予定をしています。
サク・ヤ……エン・ヤの娘で太守代理を務めています。島民と一緒に地上人をもてなす側にいます。
ミツ・ハ……参ノ島太守です。色気たっぷりな美女。左腕の手術を終えたばかりですが、パーティーの後半には出席する気でいます。
ヒノ・コ……７０００年を生きる魔女。ツク・ヨ・ミの祖父で島を５つに割った原因をつくった人で、いつもにこにこ笑顔で何を考えているかよく分からない人。パーティーに出席します。
ナ・ムチ……伍ノ島の青年。かつて祖母とともにヒノ・コをかくまっていました。しかし現在ヒノ・コを嫌っており、今回ヒノ・コが参加していることやツク・ヨ・ミが囚われていることもあって、パーティー参加には消極的。部屋にこもっていようかと考えています。
スク・ナ……ナ・ムチのおさななじみです。楽しいこと大好き。パーティーや天燈流しにも参加する意欲満々です。
ウァール・サマーセット……シャンバラの少年。ツク・ヨ・ミが助けられなかったことに内心落ち込んだり、長年あこがれていた雲海の龍があれだったことにちょっとショックを受けていますが、パーティーにも天燈流しにも普通に参加します。
ＪＪ……シャンバラの賞金稼ぎ。ヒノ・コに護衛役を依頼されて、そういう人間ではないと言いながらもヒノ・コと一緒に行動しています。展開によっては、お祭り大好きなジャンが現れるかもしれません。
パルジファル……ＪＪ（ジャネット＝ジャン）に忠実な相棒。赤い刀身を持つ狼型ギフトです。本当はジャンを主としているのですが、ジャネットにも従っています。


●野外パーティーについて
野外での立食パーティーです。
各島民が持ち寄った家庭料理がふるまわれます。
その場で調理する屋台などもあります。
また、最後に天燈流しというイベントが開催されます。
※今回敵の乱入はありません。敵とのバトルはありませんので、アクションに書かれていた場合、警戒するだけで終わります。
　また、バトルが発生するようなアクションも採用されませんのでご注意ください。


●天燈流しについて
高さ４０センチ、直径１５センチほどの円筒型の紙のランタンを作成します。
紙は白・青・緑・赤（いずれもパステル調）で、表に願い事を書いたり、絵を描いたりして、竹の竿で組んだ骨組みに貼りつけます。
内部で油を染み込ませた短冊（こちらにも願い事を書けます）を燃やして空に浮かべます。原理的には熱気球と同じです。
周囲の雲海に流されて飲み込まれず、雲海を越えていけたなら願い事がかなうと言われていました。
夏の伝統として行っていたのですが、貧しさからもう何十年と廃れていた行事です。それを島民たちは今回復活させました。
ぜひ参加していただけたらと思います。
※頼めば漁船に乗って、空から天に放したり、その光景を見ることもできます。


注意点
１．今回、ＮＰＣと会話するなどして得られた情報は弐ノ島に集まりましたＰＣたち全員が知っている情報となります。
２．ＮＰＣと会話して情報を得たいけど天燈流しもしたい、という場合、目的が２つになってＷアク判定なのですが、今回は可とします。ただし、会話をメインとした場合は天燈流しの描写が、天燈流しの描写がメインの場合は会話の描写が薄くなりますのでご注意ください。
３．高久高久ＧＭのシナリオに参加される方は、こちらのシナリオには参加できません。参加されました場合白紙と同じ扱いとなり、リアクション内に登場することはありません。よろしくお願いします。



　それでは、皆さんの個性あふれるアクションをお待ちしております。

・ＮＰＣと話す

・芸を披露して島民と交流したい

・天燈流しに参加する