シナリオガイド
まさかこんな日が来ようとは!? さあ、どう祝ってあげようか!
シナリオ名:東カナンへ行こう! 5 / 担当マスター:
寺岡 志乃
ぽかぽか陽気のとある春。
金の縁取りの入った純白の招待状が東カナン領主バァル・ハダド(ばぁる・はだど)名義でシャンバラの各校へ届きました。
中に入っていたのは1枚のカード。
記されていたのはだれもが熟知する2人の名前。
東カナン12騎士、タイフォン家の騎士セテカ・タイフォン(せてか・たいふぉん)
そして
南カナン領主シャムス・ニヌア(しゃむす・にぬあ)
それは2人の婚約パーティーへの招待状でした。
●東カナン首都 アガデの都
婚約パーティー当日。領主の城の召し使いたちは朝から準備に追われていました。
なにしろ騎士長の座を降りたとはいえ、タイフォン家は東カナンでも有数の名家であり、お相手の令嬢は南カナン領主です。わずかの不備もあってはなりません。
そして、城の表宮にありますセテカの部屋の前の廊下は、セテカにひと言祝辞を述べたいという者たちであふれかえって――いませんでした。
いえ、そういった者たちが集まっているにはいるのですが、だれもセテカに会うことができません。
なんでも、だれにも会いたくないと部屋にこもって出てこないということでした。
「……まあ、こうなっているのではないかと思っていましたよ」
部屋を訪ねたセテカの父ネイト・タイフォンとその親友アラム・リヒトは、ドアを強引に開けさせてなかに入ると、そこにいたエシム・アーンセトを見てため息をつきます。
エシムは真っ青になって2人に助けを求めました。
「リヒトさま、ネイトさま、助けてください!! あいつ、おれを身代わりにしてどこかへ行ってしまったんですよ! だれにも会わないと言って部屋に閉じこもっていれば大半のやつらは門前払いできるし、どうしても会わなくてはならないやつもおれだったらごまかせる、って……頭金色にしたくらいで、ごまかせるわけないじゃないですか! ねえっ!?」
「……ときどき頭痛いことしますねぇ、あの子」
だれに似たのやら、とため息をつくネイトを、リヒトがじーーーーーっと「そりゃおまえだろ」と言いたげな視線で見つめます。
「まあ、間違ってはいないな。タイフォン家の騎士である上、南カナン領主の婚約者ともなれば、だれも強引に面会を求めて不興を買うようなことはしないだろう。
騎士団には今日の予定からおまえをはずすように言っておこう」
「リヒトさま! おれには無理ですってば! お願いですからここから出して――あーっもう! なんであいつと親しいやつらって、ひとの話全然聞かないんだよ!!」
お気楽に「がんばれ」と言って部屋を出て行った2人に、エシムは頭を抱えてソファに座り込んでしまったのでした。
門へ続く廊下を歩きながら、リヒトはネイトに訊きます。
「――で? 本物のセテ坊はどこにいるんだ?」
「さあ、どこでしょうね?」
「とぼけるな。その落ち着き払った様子からして、おまえには分かっているんだろう?」
「まあ、見当はついていますが」
ネイトは廊下に伸びる窓の影に目を落としました。
もう昼を回って太陽は西へ傾き始めており、影は南東へ伸びています。
「……少し手間取っているのかもしれません。かといって、話を大きくしてあれもこの国の者に知られたくはないでしょう。
シャンバラのご友人方に、あの子に力添えいただけないかお願いしてみましょうか」
つぶやくと、ネイトはシャンバラからの出席者たちが通されている客間のある棟へと向かいました。
ネイトの予想は当たっていました。
セテカはアガデの下町へ下りていたのですが、予想外の出来事が起きたために城へ戻れなくなっていたのです。
それは2日前、とある宝石店へ強盗が押し入ったことに起因していました。
あざやかな手並みでほんの数分で店の商品すべてを盗んでいった盗賊団を、セテカは都の警備兵たちと一緒に追っていたのです。そして2日に渡る捜索の上、今朝方ようやく強盗団のアジトを掴んで突入、逮捕したのですが、そこで手違いが生じてしまいました。
てっきり大人の強盗団だとばかり思っていたそこにいたのは、ほとんどが小さな子どもだったのです。
強盗たちは街のみなしごたちを集めて手下とし、彼らに盗みに入らせていたのでした。
踏み込んだ兵士たちが驚きに固まっているわずかの隙に、子どもたちは大人たちが床にこぼした宝石を引っ掴んで、すばやく秘密の抜け穴を通って包囲を脱出してしまいました。
「――それで、デアマンたちは捕縛できたんだな?」
「は、はい。頭目デアマン以下3名は捕縛することに成功しました。ですが、残念ながら子どもたちは、街へ散ってしまったようです」
「子どもの数は?」
「5名です」
「分かった。引き続き捜索しろ」
「はっ!」
「――まいったな……」
部屋に1人になり、セテカは深々とため息をついて肩を落とします。
自分の婚約パーティーが開かれる当日、本来なら彼はこんな場所で盗賊団を追っているより、城でしなくてはいけないことがたくさんありました。
彼がそういったことすべてを放棄し、ここにいる理由。
それは、盗まれた宝石のなかに、今夜シャムスの指へはめるための婚約指輪が入っていたからなのでした。
先祖代々伝わってきた、由緒ある指輪。サイズ直しに出していたそれが、盗まれた宝石リストのなかに入っていたのです。
もしやと思い、確認してみましたが、取り戻せた宝石のなかにも入っていません。子どもたちは逃走の邪魔にならないように床へ落ちたさまざまな装飾品のなかから指輪を選別して盗り、自分の指にはめて逃げたのです。
あの短時間でそれを為したところから考えて、子どもたちのなかでもずい分頭の回るリーダーがいるのでしょう。
「感心している暇はないな。一刻も早く取り戻して、城へ戻らなくては」
セテカは椅子を押しのけるようにして立ち上がると、部屋を出て行きました。
担当マスターより
▼担当マスター
寺岡 志乃
▼マスターコメント
こんにちは、または初めまして、寺岡 志乃といいます。
こちらは東カナン国が舞台のシナリオとなっていますが、これまでのシナリオと特につながりはなく、今まで参加されていなかった方でも気軽に入ることができます。よろしくお願いいたします。
●婚約パーティーについて
夜に開催されます。披露宴のようなものです。
豪華な料理を食べたり、ドレスを着てダンスを踊ったりできます。ドレスは持参も可能ですが、貸し出してもらうこともできます。どんなドレスかを書いていただけていましたら、それを描写させていただきます。
また、普段であれば一般公開されない奥宮の空中庭園も今夜は開放されています。緑や水が豊富で、小さな教会もあったりと、とてもロマンチックな場所ですので、こちらで恋人と愛を語り合うこともできます。
●強盗団について
大人の強盗犯は全員捕まっています。
彼らは子どもを使い、体が小さいことや身軽なことから店に侵入、盗みを働かせていたようです。
子どもたちは5人いて、14歳(男)を筆頭に、12歳(女)、11歳(男)、8歳(男)、8歳(女)です。
全員指に宝石の指輪をいくつかはめて別々に逃げています。このうちの1つがシャムスに贈られる婚約指輪です。
指輪はピンクゴールドに8つの小粒ダイヤモンドをクロスデザインで配置、囲うようにぐるっと玉状の彫りが入れられた、華やかで女性らしい美しいデザインの物です。
街の入口は兵士たちによって内密に、しかし厳重に検問されていまして、子どもたちはアガデからは出られません。
彼らを婚約パーティーが始まる前に捕まえて、指輪を取り戻してください。
●登場NPCの立ち位置について
セテカ・タイフォン……街で捜索しています。
バァル・ハダド……城にいて、来客の相手をしたりしています。
アナト=ユテ・ハダド……城でパーティーの準備の指揮をとっています。
シャムス・ニヌア……夕方城へ来る予定になっています。指輪盗難については彼女には知られないようにしましょう。
※このほか、カナンNPC、寺岡の全NPCにアクションをかけることができます。(現在進行中のキャンペーンに登場中のNPCは除きます)
展開としまして、たとえ指輪が取り戻せなくても婚約パーティーは開催されます。
それまでにセテカは城に戻っていなければならず、時間の制約がありますので、指輪の探索はあまり悠長にはできないかもしれません。
それでは、皆さんの個性あふれるアクションをお待ちしております。
▼サンプルアクション
・おいしい料理を食べる
・ダンスを踊る
・空中庭園でデート
・子どもたちを捜索する
▼予約受付締切日
(既に締切を迎えました)
2014年03月24日10:30まで
▼参加者募集締切日(既に締切を迎えました)
2014年03月25日10:30まで
▼アクション締切日(既に締切を迎えました)
2014年03月29日10:30まで
▼リアクション公開予定日(現在公開中です)
2014年04月09日