シャンバラ教導団

　教導団との共闘もあり、シパーヒー徴収というウゲンの企みを阻止した薔薇の学舎は、しかし変わらぬ緊張が続いていた。
　ウゲンはすでにタシガンから離れたとはいえ、北部の谷間に、大きく口を開けた洞窟が、ついに発見されたからである。

　その奥にあるものは、ナラカからのエネルギー装置といわれているが、それは未だ謎も多い。
　とはいえその発見は、薔薇の学舎にとって、いやそれだけでなく、シャンバラ全体にとっても大きなニュースだった。

　ラドゥの働きで、入り口を塞いでいた炎の障壁は取り除かれたものの、未だその奥へ、道のりは遠い。
「直接赴く部隊が必要だな」
　ラドゥ・イシュトヴァーン（らどぅ・いしゅとう゛ぁーん）が、報告書を手にそう言った。
「生徒たちに探索は任せるか。……ジェイダス？」
　ジェイダス・観世院（じぇいだす・かんぜいん）は、校長室の窓から北の空をじっと見上げている。
「どうかしたのか？」
　ラドゥが尋ねると、ジェイダスは微かに口元を震わせて答えた。
「……いよいよだな」
　ジェイダスの悲願である新たなエネルギー。
　あれからまた、古文書の解析がすすみ、それは機晶石をはるかに凌ぐエネルギーを、しかも大量に発生させることが可能だとわかった。
　研究はさらに必要だろうが、シャンバラだけではなく、いずれ地球へも転用が可能かもしれない。
　それは恒常的なエネルギー危機をかかえた人類にとって、あきらかな福音だった。

　しかし、同時に、力は扱う人間によって、凶器ともなりうる。
　金や利権のためでなく、完全に中立に、この装置を運営すること。それこそがジェイダスの悲願ともいえる。
　そのために、まずは行く手を阻むダンジョンを、攻略せねばならない。
　あれから、さらなる解読作業により、ダンジョンの内部については多少知識を得ることができている。幻覚を見せる植物や、行く手を阻む罠や、化け物が待ち受けているようだ。
　『黒き迷宮』と言われ、封じられていただけのことはある。

「他に気になる件もあるがな」
　ラドゥはそう、付け加えた。
　研究により、とある「魔導書」の存在も、伝説のなかに浮かび上がってきていた。
　それは一説によれば、装置の取扱説明書的なもののようらしい。
　かつて、ウゲンが爆破した「夏の館」に隠されていたとの噂もあり、今は廃墟となったものの、あの建物を再度調べなおす必要もあるだろう。

「我が生徒たちならば、心配はなかろう」
　ジェイダスはそう、信頼をこめて口にする。
「わかった。では、探索隊を募るとしよう」
　ラドゥは頷き、早速、校長室を出て行こうとする。
　しかし。

「……後悔はないのか？」
　ぽつりと、肩越しにラドゥが尋ねた。
　けれどもその言葉に、ジェイダスは、答えることはなかった。


　

キャンペーンシナリオ、後半の第二回となりました。

いよいよ黒き迷宮の、本格的探索となります。
内部には、様々な罠があり、また、幻覚を見せる花が咲いているという情報があります。
幻覚は、「愛しい人」の姿をとるとも、「最も恐ろしい記憶」を呼び覚ますとも言われています。
洞窟内に巣くうモンスターは、スライムのような粘液系や、ゴーストといった類です。
そのなかを進み、秘められた「装置」へと辿り着くことが大きな目的です。


また、この装置に関しては、未だ謎も多くあります。
かつて「黒き迷宮」を護ろうとしたタシガン人が立てこもった「夏の館」に、それに関する「魔導書」があったようですが、今は爆破により廃墟となっています。
こちらの探索もまた、目的のひとつです。

なお、今回のシナリオでは、イコンの使用はできません。
ご注意ください。


薔薇の学舎においては、ＢＬ要素がある場合もあります。
また、アクションご記入に際して、マスターコメントをご一読いただけますと幸いです。


それでは、皆様のご参加をお待ちしております。

・地下へと赴く

・幻覚で、トラウマと対決する

・夏の館に赴き、探索する

・発見された洞窟近くで、警護をする