シャンバラ教導団

　――百合園女学院校長室。

「吟遊詩人ラナ・リゼットをお招きできて光栄ですわ」

　ラズィーヤ・ヴァイシャリー（らずぃーや・う゛ぁいしゃりー）は優雅に微笑みながら、来客を迎えました。
　吟遊詩人ラナ・リゼットは、近年有名になりつつある、実力派の吟遊詩人（ミンストレル）です。その名前はラズィーヤの耳にも聞こえていました。
　地球の文化がシャンバラ地方に入り、６都市では携帯音楽プレイヤーも入手できます。
　ただ、６都市を外れれば電気の通っていない村などもまだまだありますし、吟遊詩人はそういった地方へ回って歌を披露しています。
　吟遊詩人の歌はシャンバラ人にとって娯楽の一つなのです。

　加えて、ラズィーヤがご機嫌なのは、ラナ・リゼットの容姿にもあります。
　歳はラズィーヤより気持ち高め、２０代になったばかりでしょうか。優雅にウエーブを描く白金色の長髪を湛え、紅眼を宿す顔は彫刻のような美麗さを誇っています。
　空色のドレスの上からもスタイルの良さが分かり、それはラズィーヤに負けず劣らずといったところです。
　なお、ラナ・リゼットは元はシャンバラの騎士だったといわれています。ある日聞いた吟遊詩人の歌に感銘を覚え、自身も吟遊詩人になったというのが専らの噂です。

「是非、その美声を百合園女学院の生徒達に聞かせたいですわ」

　しかし、ラナ・リゼットはラズィーヤの言葉に首を横に振りました。
　考えてみれば、百合園女学院に来てから、ラナ・リゼットは一言もしゃべっていません。

「どうかされましたの？」
「お招きいただきまして大変恐縮ですが……今はお聞きの通り、歌を唄うことが出来ないのです」

　心配そうにラズィーヤが聞くと、ラナ・リゼットは初めて口を開きました。
　それは噂に聞く鈴を鳴らしたような、珠を転がしたような、小鳥の囀りのような美声ではなく、しゃがれた耳障りな雑音でした。

「私にも分からないのですが……ヴァイシャリーにお招きいただきました直後くらいからこのようになってしまいまして……」

　吟遊詩人は声が命です。ラナ・リゼットも普段から喉は十二分に労っています。
　ラナ・リゼット本人もどうしてこのような声になったのか、皆目見当が付かないようです。

「それで本日は直接謝罪に参りました」
「困りましたわね……百合園の生徒達に素晴らしいシャンバラの芸術に直に触れていただこうと思っておりましたのに……」

　ラナ・リゼットは使いの者に断りを入れるより、ラズィーヤ本人に直に謝罪しようと思ったようです。
　そのラズィーヤは思案しながら校長室を見回していると、ふと、ティーセット用の棚に置いてある小瓶に目が留まりました。

「そうですわ。パラミタミツバチの蜜でしたら、そののどを潤せるかも知れませんわ」

　パラミタミツバチはジャタの森に生息しているミツバチです。
　ただのミツバチではなく、雄のミツバチは３０〜５０ｃｍ、女王バチは１ｍ近くになるといわれています。
　それだけにそのハチミツはとても稀少品で、市場に出回ることは滅多にありません。
　……もっとも、ラズィーヤはティータイムに愛飲しています。このことは桜井　静香（さくらい・しずか）にはまだ話していませんが、聞いたらさぞ驚くでしょう。

「でも、パラミタミツバチの蜜はグレートキャッツ達の好物だと聞きます。女性だけで採りに行くのは危険ではありませんか？」

　グレートキャッツとは猫科の大型肉食獣の総称です。中でもジャタの森には人食い虎や剣歯虎（サーベルタイガー）が生息していると言われています。

「確かにそうですが、ソルジャーやバトラー、ナイトを目指す生徒達の良い訓練になりますわ。もちろん、他の学校の生徒達にもお声掛けいたしますわ」
「私のために恐悦至極に存じます。私も同行させていただきます」
「ええ、是非。パラミタミツバチの蜜が採れましたら、美声をお聞かせ下さいね」


　しばらくして、ラズィーヤの名前で各校にジャタの森へパラミタミツバチの蜜を採りに行く依頼が伝わりました。
　吟遊詩人ラナ・リゼットと百合園女学院の生徒高原　瀬蓮（たかはら・せれん）も同行します。
　パラミタミツバチの蜜を採ることが出来、ラナ・リゼットののどが治ったら、彼女のライブに招待されます。
　同じ吟遊詩人や歌に自信がある生徒は飛び入り参加も大歓迎とのことです。

　吟遊詩人ラナ・リゼットと高原瀬蓮と一緒にジャタの森へ行き、パラミタミツバチの蜜を採ってくるのが目的です。
　ラズィーヤから各校に依頼が行っていますので、学校を問わず参加できます。

　また、アクションでラナ・リゼットの事を知っているかどうかも自己申告できます。
　吟遊詩人でしたら同業者ですので知っていてもおかしくありませんし、歌が好きな方も知っていても問題ありません。

　パラミタミツバチはジャタの森に生息しているミツバチです。
　ただのミツバチではなく、雄のミツバチは３０〜５０ｃｍ、女王バチは１ｍ近くになるといわれています。
　大きいですがハチですので俊敏です。また、毒針も大きさに比例して威力が高くなっています。
　「キュアポイゾン」や「ナーシング」といったスキルを用意した方がいいでしょう。
　巣も大きいですので、ハチミツの採り甲斐はあります。

　また、パラミタミツバチの巣の近くには、人食い虎や剣歯虎（サーベルタイガー）が生息している可能性があります。
　黄色地に黒の縞模様は密林の中では迷彩になりますので、気付かないこともあります。
　こちらも要注意です。

　なお、ラナ・リゼットのクラスは吟遊詩人ですが、声が嗄れているため歌は使用できません。
　あくまで剣で戦います。
　また、瀬蓮は回復要員とお考え下さい。

　無事にパラミタミツバチの蜜を採ってくることが出来れば、ラナ・リゼットのライブになります。
　吟遊詩人のキャラクターや歌に自信のあるキャラクターは、飛び入りで参加されると良いでしょう。
　このシナリオに限り、パラミタミツバチの蜜を採りに行った後の行動を書いてもダブルアクションとは致しません。
　ただし、確実に採用されるとは限りませんので、どちらかに比重を置いたアクションにしてください。
　また、飛び入りで参加して歌を披露する場合、アクションに歌詞を書かれる方は「オリジナル」の歌詞を書いてください。

・人食い虎を警戒する

・パラミタミツバチの巣を手に入れる

・ライブに飛び入り参加する