「……」
空京にあるホテルの部屋で備え付けてある机でじっと本を読んでいるアラン・バンチェスター。
どこかのページを一点に見つめています。
セバスチャン・コーラルが机の上にティーカップを置くと、きらきらした瞳でセバスチャンを見つめます。
「どうかなさいましたか、アラン様」
「これじゃ!! 余はこれが欲しい!!!!」
アランはページの中を指さしました。
「唐突になんなんですか?」
セバスチャンが本を覗き込みます。
そこに書いてあったのは……
「『仏の御石の鉢』……かぐや姫を読まれていたんですね。日本という島国の物語は勉強になりましたか?」
「うむ!! 余も無理難題を出して、楽しみたい!!」
「これはそういう物語ではありませ――」
「セバスチャン! まずは『仏の御石の鉢』を探すのじゃーーーー!!」
「はぁ……」
セバスチャンはため息をつきました。
「…………」
それから、セバスチャンは眉を少しだけ寄せます。
その様子を下から心配そうに覗き込むアラン。
セバスチャンはそれをちらりと見ると、もう一度ため息をついてから、口を開きました。
「わかりました……。心当たりがございますので、そこに行ってみますか?」
「本当か!?」
「はい。しかし、私たちはこの土地に来たばかりで不慣れです。誰か慣れている者を連れて行きましょう。かなり危険な場所だと聞いておりますので」
「うむ! それで……危険とは?」
「道中の山の中には人食い植物が出ると聞いております。それも山の植物はすべてそんな感じなんだそうですよ。まあ……人を食べたりするだけではなく、服をとかしたり男好きだったりといった変異種もたくさん出ると聞いております。それに……どうやら山には他の宝物もあるとかで、それを守るように巨大な歩く植物がいるそうです」
「そ、そんなものが……!?」
「はい。その巨大な植物は人が近づくと、ツタで捕まえ、本体の袋の中に放り込むそうです。まあ、食べられることはないそうなんですが……その袋の中にはこの世のものとは思えないほど臭い粘液が入っているそうで、しかも様々な状態変化を引き起こすそうです」
「ひぃ……! そんな気持ち悪いモンスターがこの世にいるというのか!! で、その植物が守っている宝とはなんなのじゃ?」
「どうやら、金銀財宝らしいですよ」
「ふむ……そんなものに興味はないな! で、その山のどこに余の探し物はあるのじゃ?」
「はい。その山の頂上に鉢職人がおりまして、その者が『仏の御石の鉢』を持っているとかいないとか……」
「なるほど……では、慣れている者の手配は任せた!」
「かしこまりました」
そのままセバスチャンが手配に行こうとするのを、アランは裾を掴んでとどめました。
「……?」
「その……見つかったか……?」
アランはうつむいていて表情まではわかりませんが、先ほどまでと違いなんだか泣きそうです。
「何か情報だけでも……」
「……」
セバスチャンはその様子を見ても眉1つ動かさず、静かに首を横に振りました。
「そうか……では、余は良い子にお昼寝をしている! あとのことは任せたぞ!」
「かしこまりました」
アランは本を閉じ、椅子から降りると、慌ててベッドの中に入っていきました。
セバスチャンはティーカップを片付けながら、こういうことに慣れていそうな者に声をかけてみようと考えるのでした。
アランと一緒に宝物探しをしてみませんか?