「さて、参加者の諸君、トランプ兵たちを放つとするよ」
そう言ってイルミンスール魔法学校魔術科学専攻ベルバトス・ノーム教諭は、手に持ったボタンを押した。
「全部で53体のトランプ兵を放ったよ。一般的なトランプを擬人化させ、手足と頭を生えさせたんだ、私が開発した「義魂造転機」によってね。実を言うと、今日の授業は性能テストなんだよ、バレバレだったかな、くっくっくっ」
ノーム教諭は参加者たちをじっと見渡した。
「全学校に参加希望者を募って正解だったね、おかげで良いデータが獲れそうだ。君たちにとっては貴重な実戦の場だ、楽しみたまえ。トランプ兵は身長は170センチ、体重設定は60キロ、だったかな。なぁ、アリシア」
ノーム教諭の助手であるアリシア・ルードは表情を変えずに言った。
「はい、絵柄兵、数字兵ともに、その数値です。差別化は戦闘スキルと知能に反映させています」
「そうだったねぇ。絵柄兵は強いよ、君たちのレベルからすると、全体重を込めて打ち込んでも絵柄兵は片手で受けるかなぁ、放った火術は剣圧で簡単に防がれてしまうかもしれないねぇ、くっくっく、あぁ、武器はコレを持たせたよ」
そう言ってノーム教諭はカルスノウトを手に持ち、続けた。
「対して数字兵はレベルこそ低いが、素早さだけは高く設定した。そうだねぇ、戦闘スキルは駆け出しのプリースト、素早さは成長著しいローグ並みといった所かな。迫り来る弓矢を間一髪だが確実に避ける、そんな疾さだよ。武器はリターニングダガー、知能は防衛本能だけを搭載した、で合ってるよねぇ?」
「はい。私からは勝敗方法について説明します。トランプ兵はHPをゼロにするか、致命傷を与えればトランプに戻ります。トランプの数字がポイントになりますが、絵柄兵だけはポイントを2倍にします。2名以上の生徒(MC)で兵を倒した場合、合意の上であればポイントを分け合う事ができますが、その際にはトランプ自体を切り分けて下さい。また、兵の強さは、同分類内であれば一定です、つまり数字兵における「1」と「9」の能力は同じですが、獲得ポイントは「9」の方が当然高い事になります。またマークによる違いは「強さ」「ポイント」共にありません」
ノーム教諭は首を縦に2、3度振ってから笑みかけた。
「制限時間は3時間、それまでにこの本陣に戻って来なければポイントは認めないよ。フィールドには結界を張ったから外に出る事は無いだろうけど、西には深く暗い樹海、北には険しい山々、東には高さ200メートル、幅100メートルの大滝、南はキャンプ地、別荘地帯がある。どこで戦おうと待ち伏せようと構わないけど、時間がないからねぇ、狙いは定めたほうが良いと思うよ、くっくっくっ」
太陽が頭上真上にある。オヤツの頃までには戻れ、という事らしい。
「それでは諸君、特別実践授業トランプ兵を捕まえろ、スタートだ」