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ラビリンス・オブ・スティール~鋼魔宮

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シナリオガイド

戦いの刻が来た! 集え、勇士たちよ! 鋼魔宮に全力で立ち向かえ!
シナリオ名:ラビリンス・オブ・スティール~鋼魔宮 / 担当マスター: 桂木京介

 分厚く重々しい扉は、その見た目とは裏腹に迅速、かつ音もなく左右に開かれました。
 二人の前に現れたのは、威圧感のある部屋です。
 黒と赤に統一された物々しい内装は、古代中国を彷彿とさせるものであり、かと思えばその一方で、最新技術の粋を凝らした巨大モニターが壁一面を占有しています。テーブル、椅子をはじめとする調度品の数々は、あきらかにそれとわかる年代物でありながら、滑らかで装甲の施された壁は、銃弾砲撃はおろかミサイルを撃ち込まれても平気なように思われます。また、レトロとハイテクとが絶妙に混じったこの部屋では、テーブルにも椅子にも床にも、埃一つ見出すことができないのでした。
 威圧感があるのは部屋ばかりではありませんでした。
 部屋の中央奥、一段高くなった主座に腰を下ろす人物もまた、射貫くような視線を二人に向けているのです。
 まだ青年と言っていい若さです。されどもその眼には、相手を震えあがらせるような冷徹さと、強い磁石のようなカリスマ性が感じられました。
 この人こそ、シャンバラ教導団団長金 鋭峰(じん・るいふぉん)なのでした。
 そしてこの場所が、シャンバラ教導団の団長であるのは言うまでもありません。

「よく来た。楽にするがいい」
「楽もなにも、そんな高いところからお客さんをにらみつけてふんぞりかえっている人の前で、気楽になんてなれないですぅ」
「……」

 瞬時、鋭峰は顎に手を当て不服げな顔をしました。
 ですが、

「……さすがは一国の主、イルミンスールを束ねるだけはあるな。ここは、私が折れよう」

 と、獲物を見つけたときの狼のような笑みを浮かべ、階段を降りてきて目の前の椅子に腰を下ろしたのでした。同じテーブルの椅子を、来訪者にも勧めます。

「一国の主じゃなくて学校長なのですぅ。それに……」
「わかっている。客らしく扱えと申すのであろう。教導団とて、茶と菓子くらい用意してある」

 今度は、イルミンスール魔法学校校長エリザベート・ワルプルギス(えりざべーと・わるぷるぎす)が笑みを浮かべる番でした。
 鋭峰が軽く指を鳴らし、これへ、と一言すると、エリザベートが入ってきたのとは別の扉から、古代中国の女官のような扮装をした少女たちが連れだって現れ、薫り高い茶を淹れ、テーブルからあふれるほどに珍しいお菓子を並べはじめたのです。飴菓子のようなものがあります。蒸したあん餅のようなものもあります。焼き菓子、ちまき、砂糖菓子、中華風ケーキ……なんと色とりどり、豪華な組み合わせでしょう。

「諸君の好みは知らぬ故、各種用意させた。なに、遠慮は……」

 と鋭峰が言いかけたときにはもう、エリザベートはぱくぱくと、お菓子の数々をほおばっているではありませんか。

「お母さん、お母さん! ダメですよ! そんなお行儀の悪い……」

 エリザベートの背後に控えるミーミル・ワルプルギス(みーみる・わるぷるぎす)は、入室してからずっとハラハラしっぱなしです。ぶしつけなことばかりするエリザベートに対し、いつあの怖い顔の人(鋭峰)がかんしゃくを爆発させないか心配なのです。慌ててエリザベートをたしなめますが、

「え? なにか私、いけないことしましたかぁ?」

 当人は、なにがどうしたのかサッパリ、といった顔をして、

「あ、わかりました。いただきます、なのですぅ〜」

 パン、と両手を打ち鳴らしたので、さしもの鋭峰も激しく咳き込んでしまいました。(どうも、笑いをこらえようと必死だったようです)
 金団長は食べないんですかぁ、と差し出された菓子を、甘いものは苦手だから、と断って、

「さて、腹もくちくなったところで、例の作戦の話に移ろう」

 鋭峰は再び、抜き身の白刃のような視線を向けたのでした。

「鏖殺寺院の兵器工場を発見した、という話だが」
「はい! 鏖殺寺院の大規模工場なのですぅ。そこで作られているのはヒーマ、ヒーマノ……」

 慣れぬ表現にもどかしげなエリザベートに替わって、ミーミルが言葉を継ぎました。

「ヒューマノイドマシン、とでも呼べばいいのでしょうか。機晶姫に近い存在ですが、ずっと単純な人型戦闘機械ですね」

 話は、数日前にさかのぼります。
 密林地帯を探索していたイルミンスールの生徒たちが、その奥部に一群の人工建築物を発見しました。なんとこれは、失われたシャンバラ技術の研究所だというのです。
 こんな場所に研究所があるということに不審を感じた彼らですが、対応に出た研究者はにこやかに笑みを浮かべ、ここは重力に関する技術を研究している施設であり、本格始動の前段階にあるため知名度は低いということを丁寧に説明してくれたといいます。

「どう考えても怪しいのですぅ……」
「まったくです。研究所地帯はまるで、地上で言うところのコンビナートのように複数の建物の集まった大規模なものであり、しかもそのほとんどが稼働状態にあったようです。実際、シャンバラ技術の研究所というのは表向きの看板に過ぎませんでした」

 学校の元に帰った報告主は、自分たちに潜入捜査をさせてほしい、と志願しました。
 エリザベートの許可の後、すぐに潜入者はこの研究所の正体を暴いたのです。

「それが、鏖殺寺院の兵器工場というわけか」
「内部では、人間大なれど意思らしい意思を持たぬ鋼鉄のヒューマノイドマシンが、次々と作成されていると言います。おそらくは、大規模テロを仕掛ける際の先兵にするつもりでしょう」
「だとすれば由々しき事態だな」
「潜入した生徒……小山内 南(おさない・みなみ)という少女は最初の報告を入れた後、消息を絶ってしまいました。また、彼女を救うべく、シルミットという姓の姉妹が後を追いましたが、やはり彼女らからの連絡もなくなってしまったんです」

 もうここからは、『研究所』ではなくはっきりと『兵器工場』と表記します。
 工場内は、作成の完了したヒューマノイドマシンが徘徊し、さらなる兵器開発作業に従事しています。
 ヒューマノイドマシンは人間大ですが、人間そのものとはあまり似ていません。灰色のずんぐりした姿です。こけし人形のようなシルエットといえばわかりやすいでしょうか。蛇腹状の両腕はあるものの、それとて五指ではなく、レーザー発射装置ないしバルカン銃、もしくはソードやドリルがとりつけられています。丸い頭部にも顔はなく、横長長方形の黒い穴と、赤く光る単眼があるのみです。しかしその行動速度は見た目以上に速く、また、様々な兵器を取り付けたアームから繰り出す攻撃は大変に強力かと思われます。
 弱点は小回りがきかないことでしょうか。また、明確な意思や知能がないため、フェイント攻撃にはひっかかりやすそうです。

「ハイテク兵器工場か……とすれば彼の地には、内部のセキュリティを司る頭脳役のようなコンピュータが存在すると見て良さそうだな。仮に『頭脳(ブレイン)』と呼ぶとしよう。この『頭脳』を破壊すれば、相手は知恵のない機械、戦闘はぐっと楽になるであろう」
「それは名案なのですぅ。ただ……」
「ただ?」
「どうやら、その灰色マシン以外にも敵がいるようなのですぅ」

 ミーミルが補足します。

「南さんの最後の通信は、『CRUNGE(クランジ)の攻撃を受けています! 女性型で片腕四本ずつの鞭を……』というものでした。この『CRUNGE』が何を意味するのかはわかりませんが、おそらくは機晶姫の一種かと」
「ふむ、ヒューマノイドマシンの開発で得た技術を投入した強化型かもしれぬな。敵は鏖殺寺院、しかも事態は深刻、というわけか……よろしい! 協力依頼、受けよう」

 鋭峰は手を差し出します。エリザベートはその手をしっかりと握りました。
 普段、決して仲睦まじいとはいえないシャンバラ教導団とイルミンスール魔法学校ですが、本作戦に関しては、協力し合うことに合意したのでした。
 作戦、すなわち、行方不明者の捜索と研究所の破壊です。

 戦いが始まります。鋼鉄の工場群……鋼の魔宮に、一大戦線が開かれようとしているのです。
 ヒューマノイドマシンと戦い抜き、施設の徹底粉砕を遂げるのは誰でしょうか?
 工場を統制するブレインコンピュータを破壊、あるいは乗っ取って、状況を一変させるのは誰でしょうか?
 謎の敵『The CRUNGE』と相対し、これを撃破するのは?
 行方不明になった少女たちと魔宮で出会うのは?
 言うまでもありません、それはあなたです! この作戦の成否は他でもない、あなたにこそかかっているのです!
 あなたの参戦をお待ちしています!


担当マスターより

▼担当マスター

桂木京介

▼マスターコメント

 ここまで読んで下さり、ありがとうございました。
 マスターの桂木京介(かつらぎ・きょうすけ)です。よろしくお願いします。

 ほのぼのとしたお話が続いたので、今回はうって変わって戦闘描写多めのミッションをご用意しました。戦いは決して楽ではないでしょう。しかし、それだからこそ、力が入るというものです。
 熟練の戦闘者の参加はもちろんのこと、このシナリオが初めてというような初心者の参加もお待ちしております。戦いの趨勢を決めるのは数値的なレベルではありません、戦いの趨勢を決めるのは、アクションに表されるあなたの『想い』です。

 このシナリオでは、鏖殺寺院の支配する兵器工場で大暴れすることになるでしょう。鏖殺寺院は『蒼空のフロンティア』における明確な敵といってよく、シャンバラ建国を阻止すべく動いているテロリスト集団です。しかもその人型兵器とあっては、躊躇すればこちらがやられるまでです。遠慮仮借なく全力で戦ってください。
 舞台となる工場は数人の研究員こそあれ、そのほとんどはオートメーション化されており、鋼鉄の兵士ヒューマノイドマシンが徘徊しています。マシンはこちらを発見するや、問答無用で攻撃を仕掛けてくるでしょう。彼らは意思らしい意思を持たぬ戦闘機械ですので、説得や交渉を試みても無駄です。

 シナリオはシャンバラ教導団とイルミンスール魔法学校の共同作戦という体裁を取っていますが、学校による参加制限は一切ありません。戦う意思のある人であればどなたでも自由に参加できます。

 今回の作戦目的に合わせ、以下四部隊が編成されます。このどれかに参加するのを推奨しますが、単独行動、あるいは別の考えに基づいて動くのもいいかもしれません。

■1……戦闘部隊『見敵必殺(サーチ&デストロイ)』
 修羅の如く戦い抜くことがこの部隊の使命です。遊撃部隊として工場内を進み、ヒューマノイドマシンを見つけ次第その撃破に動いてください。
 また、その使命には究極目標『The CRUNGE(ザ・クランジ)』と呼ばれる機晶姫の破壊が含まれます。クランジは一見、普通の少女ですが、両手に四本ずつの電磁鞭を隠し持っています。この鞭で相手を締め上げて高圧電流を流し、消し炭のようにして殺す攻撃を得意としているようです。超がつくほど強力な相手なので、単独でしかも正面から挑むのは自殺的行為といっていいでしょう。

■2……ブレインコンピュータ破壊部隊『ブルズアイ』
工場内にはそのセキュリティを統制する巨大コンピュータがあります。これを発見し、破壊することができれば味方の戦況は一気に有利になるでしょう。
 といっても破壊することが必ずしも最良とは言えません。首尾良く乗っ取ることができれば戦況はさらに有利になるはずです。ただし、これは決して簡単ではありません。うかつに接触すれば逆に、こちらの戦略や秘密が曝かれてしまう場合があることをお忘れなく。
 また、『頭脳(ブレイン)』が置かれている部屋は巨大な球体であり、内部には重力制御装置が設置されています。敵は内部の重力を自由に操ることができるので、『頭脳』に接触するだけでも相当の苦労を強いられます。

■3……潜入者救出部隊『グレートエスケープ』
 潜入した生徒はすべてイルミンスール魔法学校の所属です。
 小山内 南(おさない・みなみ)は優秀なスパイなので、敵に捕まらず逃げ延び、仲間に情報を与えるべくどこかに潜伏しているかもしれません。逆に、捕まって悲惨な目に遭わされている可能性も否定はできません。
 イースティア・シルミット、ウェスタル・シルミットは十二歳と十歳の姉妹で、魔法の使い手ではありますが経験が浅く、入口付近にいるものと思われます。早めに合流して道案内を頼んだり情報を得ることができれば良いのですが……。
 実は三人とも、私の担当シナリオ『ダンジョン☆探索大会』で遭難していた少女でもあります。また遭難しているような……? もしかして、ドジなのでしょうか。

■4……生産設備破壊部隊『ナパームデス』
 工場というだけあって、内部はヒューマノイドマシンや各種装備の開発施設で一杯です。これを破壊して二度と使えなくすることがこの部隊の使命です。占領して逆に利用しようとするのは、奪い返されたときのことを想定すると、良い考えとは言えないでしょう。
 といっても、無闇やたらと壊して回ればいいわけではありません。大爆発を起こすようなことがあれば、行方不明者や味方にも被害を与えかねないでしょう。工場全てが炎に包まれれば、自分の身だって危険です。効率よく使用不可能にすることが重要なのです。
 また、役立つ技術や情報を発見することがあるかもしれません。首尾良く盗み出すことができれば利益をもたらすことになるでしょう。

 以上、本シナリオのテーマは『戦い』ですので全力で暴れまくってください。ヒューマノイドマシンは数こそ多いですがそれほど頑丈な敵ではないので、バッタバッタ斬り倒す無双っぷりを見ることができるでしょう。

 皆様のご参加、楽しみにお待ち申し上げております。
 次はリアクションでお会いしましょう。桂木京介でした。

▼サンプルアクション

・ヒューマノイドマシンを倒しまくる。謎の敵『The CRUNGE』も仲間と協力して討ち取る。

・『頭脳』の破壊を目指す。

・シルミット姉妹の捜索を行う。

・生産工場を徹底して破壊し、もう悪用ができないようにする。

▼予約受付締切日 (既に締切を迎えました)

2010年07月05日10:30まで

▼参加者募集締切日(既に締切を迎えました)

2010年07月06日10:30まで

▼アクション締切日(既に締切を迎えました)

2010年07月10日10:30まで

▼リアクション公開予定日(現在公開中です)

2010年07月28日


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