シャンバラ教導団

　リンス・レイス（りんす・れいす）は人形師です。
　ヴァイシャリー郊外に工房を持ち、そこで人形作りと販売を行っています。
　従業員は店長のリンスを含めて若干名。
　うちひとりは人形の少女・クロエです。

　さて、そんな変わった人形工房には、出来の良い人形を目当てとしたお客様の他にも多数の来客があります。
　それはリンスの友達だったり、クロエの友達だったり。
　あるいは動く人形に興味を持ってやってくる人だったり。

　そういう視線にさらされることに、すでに慣れっこになっているリンスですので。
　気付きました。

「……？」

　そういう視線、でない視線が向けられていることに。
　違和感。

　――どこから？

　気になって、工房を出ます。
　目に付いたのは、お客様でも友達でもなさそうな数人でした。
　その人々ををぼんやりとした目で、疑問符を浮かべて眺めていると、

「きゃあ！」
「わ、わ、本当、美人さんだよ……！」
「ええ、女？　男？」

　彼女らは、勝手に騒いで勝手に帰っていきました。

「？　何？」

　そういった騒がれ方に慣れていないリンスは、疑問符混じりの困り顔で小さなため息を吐きました。
　それはそれは、面倒そうに。
　そして、その時気付きました。

「……？」

　集まっていた数人のうちの一人が、写真を落としていったことに。
　工房を出て、写真に近寄り、手に取りました。
　裏返り伏せられ、白い無地の背を曝け出していた写真を、くるり、反転。
　そこに写っていたのは、

「……俺？」

　撮られた覚えのない、リンスの写真でした。


＊...*＊*...＊


　最初の写真事件から、数日が経ちました。
　数日の間、毎日のように人が訪れてます。
　そして、リンスの顔を、あるいはクロエの顔を見ては、きゃぁきゃぁ、時にはハァハァと息を荒げて、その場に留まるなり、帰って行くなり、するのです。

　こういった視線には、いつまで経とうが慣れそうにありませんでした。
　かといって、カーテンを閉め切っているのも身体に悪そうですし、休業なのかと思われてしまいます。
　しかし、視線に晒されたままだと、どうにも集中しがたいのです。
　なぜなら、

「ねえ、人形を作る時の顔、すごい真剣！」
「かっこいいー……」
「綺麗だな」

　そんな声が、ひそひそ、ひそひそ、絶えず聞こえているのにどうして集中できましょうか。

「……限界」

　ぼそりと低く呟いて。
　リンスは立ち上がりました。そして窓に寄り、乱暴な手つきでカーテンを閉めます。
　暗くなった工房の中、きょとんと疑問符を浮かべるクロエの頭を撫でながら、

「この写真を流出させてる奴、見つけて止めなきゃね」

　普段よりもいくらか低い声音とテンションで、そう呟くのでした。


＊...*＊*...＊


　さて、工房でそんな言葉をリンスが吐いているとはいざ知らず。
　紡界　紺侍（つむがい・こんじ）は、写真を手に、ヴァイシャリーの街をカメラ片手に歩いていました。

「美男美女、美少女美少年、中性美人の写真、いかがっスかー？」

　そうです。
　写真を流出させた犯人は、この男なのでした。
　目的は単純明快、普通に撮ったものや、隠し撮りした写真を売ってのお金稼ぎです。

「写真ーいかぁっスかー？　依頼も請け負うっスよー」

　暢気で陽気な声を張り上げて、紺侍はゆっくりとしたペースで、街を歩きました。








※舞台はヴァイシャリーです。

◆ごあいさつ。
　初めまして、あるいはこんにちは。灰島懐音と申します。
　今回は久々にデートとかそういうのを無視した、ちょっとコメディなシナリオとなっております。

◆内容について。
　リンスは、写真を売られて困っている側。
　紺侍は、元凶の写真を売っている側。
　リンスの助けに応じて、写真を売るのを止めるか。
　普段、紺侍から写真を買ったりしていて、止められては困る！　と止めるのを止めるか。
　あるいは、私も写真を撮られた！　一矢報いる！　などでもOK。
　もしくは、紺侍の友達だったり、紺侍に気があって協力しているでもOK（もちろん、だからこそ止める！　も歓迎です）。
　リンスのことも紺侍のことも知らなくても、盗撮を知って正義感から動いてもOK。
　そんな騒動いざ知らず、お出かけしていたら紺侍に出会って記念撮影を頼んでみる、なんかも面白そうですね。
　シナリオに絡めたアクションでしたら、ある程度なんでも受け付けますのでお気軽にどうぞー。

◆NPCについて。
　リンスについては、キャラページやマスターページ、あるいは『人形師と、人形の見た夢。』を参照していただけるとある程度わかると思います。

　紺侍についてですが、蒼空学園の生徒で、二年生（17歳）です。あだ名はキツネ（コンジのコンがきつねの鳴き声のようだから。それと性格）。
　地球人で、わけあってお金が必要らしく、バイトをしている姿をよく見かけます。パートナーと一緒に居たことはなく、それについて問うても飄々と会話から逃げてしまうので謎のままです。また、お金が必要な理由について訊いてもお茶を濁します。
　性別男、外見性別も男。身長は187センチと大柄ですが、縦にひょろく見えます。が、筋肉があるので実際そんなにひょろではないです。ソフトマッチョ。
　髪の色は金で、目の色は薄い茶色。髪型はベリーショートですが、もみあげだけ長いです。引っ張ると笑いながら怒ります。でもあんまり怒ってなさそうなので、よく引っ張られる様子。
　性格は軽く、飄々としていて、道化を思わせます。大柄な身体に似合わず童顔で、愛嬌のある顔立ちをしています。どうにも憎めない感じです。リンスと違っていつもへらへら笑っています。
　男女問わず友達は多いほうで、けれども深く付き合っている特定の相手は作っていないような子です。もちろん恋人も居ません。
　恋人と言えば、紺侍は同性愛者です。実性別、外見性別男性じゃないと付き合えません。けど女の子も普通に好きです。

　幼馴染、片思い、友達、知り合い、ライバル、嫌い、憎んでいる、先輩、後輩、などの感情設定は、リンス、クロエ、紺侍問わず大歓迎です。
　どういった関係であるかを明記ください。

　舞台がヴァイシャリーなのは、紺侍がヴァイシャリーの街並を撮影したりしているからです。
　なので比較的遭遇しやすいかなあ、と。

　質問等があり、答えられそうでしたらマスタページにも記載していく予定ですので、お時間のある方はそちらもどうぞ。
　それではご参加お待ちしております。

・リンスの手助け

・写真を売ってもらう

・紺侍に会いに行く

・盗撮を止める

・記念撮影をしてもらう