シャンバラ教導団

　ある日、アゾート・ワルプルギス（あぞーと・わるぷるぎす）は、最近知り合いになった小さな友人ドロシー・ワンダーにプレゼントを届けにいきました。今日は、ドロシーの10才の誕生日だからです。
　ところが、玄関に出て来たドロシーの母親はやせ細り、目は真っ赤です。
　どうしたのかと思って話を聞くと、娘のドロシーが眠ったきりもう一週間も目覚めないと言います。
「きっと、ピーター・パンの誘拐だわ」
　婦人は泣きながら言いました。

　実は、シャンバラでは、ここ最近子供が眠ったきり目覚めないという奇病が流行っているのです。
　奇跡的に目覚めた子供が「ピーター・パンに連れてかれた」と言ったことから、みんなこの奇病をさして「ピーター・パンの誘拐」と呼ぶようになりました。
　しかし、肝心のピーター・パンが誰なのか、それ以前に実在するのかもどうかも分かず、医者も警察もお手上げ状態です。

「なんとか助けてあげたいなあ……」

　とアゾートは思いました。10才の子供とはいえ、ドロシーはアゾートにとっては大切なお友達なのです。

「唯一の手がかりはピーター・パン……か…。でも、いるかどうかも分からない相手じゃどうしようもないよね……」

　その時、背後から声がしました。

「ピーター・パンの事なら、あたし、詳しく知ってるわよ」

　アゾートが振り返ると、そこに、金髪のポニーテールのどことなくやさぐれた感じの女性が立っていました。

「ウェンディ！　帰って来たの？」

　ワンダー婦人が驚きます。
　それは、婦人の妹のウェンディ・アドバルーン23歳。
　数ヶ月前に彼氏にふられ、さらに仕事をクビになって以来、人生に絶望して家出していたのですが、今日は、姪っ子の誕生日ということで戻って来たようです。

　ウェンディは言いました。

「子供の頃、ひと月ほど海辺の町にいたことがあったでしょう？
　その時に、ある男の子と仲良くなったの。名前は確かマイク……下の名前は忘れちゃったけど、顔だけは覚えてる。緑色の髪に、金色の瞳のすごく奇麗な子だったから。
　彼はすごく病弱で走る事もできなかったけど、魔法の力ですごい薬を作る事ができたの。
　『夢の実』といってね、その薬を飲んで眠ると、誰でも『ネバーランド』に行けるのよ。
　『ネバーランド』というのは、夢の世界にある島の名前で、妖精に、人魚に、お菓子の城に、おもちゃの兵隊がいる、子供なら誰でも気に入るようなとても素敵なところなの。
　そこでは、病弱なマイクも歩いたり、走ったり、それどころか飛ぶ事ができると嬉しそうに話してたわ。
　半信半疑のあたしに、彼は『夢の実』をくれた。それを飲んだら、本当にネバーランドに行けた。

　『ピーター・パン』というのは、その島のリーダーの少年の名前よ。
　強くて、賢くって、いたずら好きの、とっても面白い子だったわ。
　そのピーターに、あたしはすごく気に入られてね、二人して海賊と戦ったり、インディアンと遊んだり、何度も色んな冒険をしたの」

「そのピーター・パンが、現実の世界に来る事はできるのですか？」
　アゾートがたずねると、ウェンディは首をふりました。
「それは無理よ。彼は夢の世界の住人だから」
「そっか……それじゃ、会うのは無理かあ……。でも、その薬をくれたマイクさんなら、何か知っているかもしれませんね」
「その可能性はあるわね」
「ですよね。マイクさんには、どうしたら会えるんです？」
「ごめんなさい……子供の頃の記憶だし、あの後彼も引っ越したみたいで今はどこにいるかもしれないの……」
「そうですかぁ……」
　アゾートはしゅんとしました。せっかくの手がかりですが、これではどうしようもありません。
「いっそ『ネバーランド』に行って、確かめてみたらどう？」
「そんなことができるんですか？」
「ええ。あたし『夢を見る薬』をたくさん持っているから」
「それなら、ぜひそうさせてもらいます」
「ただし、ネバーランドの住人は、『侵入者』には情け容赦なく攻撃をしかけてくるから、一人で行くのはお勧めしないわよ」
「じゃあ、各学校の人たちにも手伝ってもらいます」
「それがいいわね。念のために、島のことをよく知っているあたしもついていってあげる」
「ありがとう」

　次の日、早速アゾートは各学校にヘルプのためのビラを配りました。

　こんにちは。
　今回２度目のシナリオとなります、天宮あるとです。

　このシナリオでは、夢の世界に閉じ込められて眠ったきりになってしまった子供たちを助けに行きます。
　シャンバラ地方全体の事件なので、どこの学校の方も気軽に参加して下さってOKです。
　ネバーランドは、童話『ピーター・パン』と似ていますが、あくまでも似ているだけでまったくの別世界です。原作とは関係ありません。
　また、夢というよりは、微妙に次元のずれた別の世界とお考えください。
　ですので、魔力や攻撃力は普段と変わりませんし、ここで受けたダメージは現実の肉体にも反映されますので、無理な行動にはご注意ください。

　この世界には、フック船長もどきの海賊がいます。外見は原作のフック船長と同じです。海賊ですが、船は空も飛べます。もちろん至近距離であれば剣での攻撃もあります。夢の世界の入り口の海域に停泊しているため、彼らを倒さないと、島には入れません。

　この国のリーダーであるピータ・パンは、ゲームが大好きです。皆さんに出会ったら、大喜びでかくれんぼをはじめるでしょう。子供たちを助けるためには、島のどこかに隠れたピータ・パンを見つけ出して説得する以外にありません。しかも、彼は自分より弱い人間の言葉には従いませんから、戦って勝つしか解決方法はないようです。しかし、島のリーダーだけに、すばしっこく攻撃力も強く、しかも大きな魔力を持っています。数人でかからなければ倒せない相手です。

　島の中では、ピーター・パンの手下の子供たちが襲いかかってきます。子供の姿をしていますが、実はナイトメアと呼ばれる悪魔の子供たちで悪夢で人を惑わす力を持ちます。物理攻撃は弓や剣です。攻撃力、魔力ともに高いですが、子供なだけに珍しい遊びには目がありません。しかし、よほどおもしろくない限り、すぐに飽きてゴネだします。ゴネると攻撃力が上がるのでご注意ください。尚、コンピューターゲーム機の類いは彼らには理解できません。

　ティンカー・ベルもどきの妖精も出てきます。ピーター・パンが今どこにいるのかを瞬時に察知する能力があります。かわいい外見ですが、機嫌が悪いと嘘をつくことがあります。戦闘中、味方を助けるために強い光で幻惑する事もあります。

　他には入り江の人魚や、おもちゃの兵隊が、侵入者を見つけると襲いかかってきます。
　

　夢の世界の特典として、空を飛ぶ事が出来ます。
　また、ネバーランドに来ると一番最初に変身の実が与えられ、１度だけ変身が出来るようになります。変身はアクションとしてカウントしません。例えば、ぬいぐるみに変身したまま魔法攻撃するのは可という事です。ただし、以下の条件があります。

・変身できるのは子供が知っていて、かつ好きなものである事。
・変身できる時間は限られている事（一時間ぐらいで解けます）
・変身できるのは、一度きりという事。
・変身できるのは外見だけで、能力は変わらないという事。

　冒険にはアゾート・ワルプルギスとウェンディ・アドバルーンが参加します。
　子供たちを助けるのが目的ですが、ネバーランドを楽しむ気分で気楽にご参加ください。

・海賊達と戦う

・ピーターパンの子分と遊んでみる。

・ピーター・パンを探す

・ピーター・パンと戦う