シャンバラ教導団

　――空京に程近い地下遺跡。

　未盗掘の遺跡の情報を得たフェンリル・ランドール（ふぇんりる・らんどーる）は、パートナーのウェルチ・ダムデュラック（うぇるち・だむでゅらっく）や他校の生徒に声を掛けて調査に乗り出していました。

「……これは……凄い！」
「やったねランディ、大当たりじゃないか！」

　果たして石造りの神殿の地下には、台座に収められた剣の数々が眠っていました。
　剣は埃こそ被っていましたが、フェンリルが制服の袖で拭うと、その下には打ち立てのような真新しい輝きがありました。
　それが何本もあるのですから、冷静沈着なフェンリルが興奮を隠しきれないのも無理はありません。

「ん？　刀身に何か彫ってあるな……スレ……掠れていて良く読めないが、スレイブオ……スレイブオブフォー……」
「スレイブオブフォーチュン！？　ここに置いてある剣全てが、あの、斬姫刀スレイブオブフォーチュンなの！？」
「いや、本物かどうかは分からないが、少なくとも形状は高根沢先輩の持つ斬姫刀スレイブオブフォーチュンに酷似しているな」
「だとしたらボク達凄い発見をした事になるよ！」
「だな。しかし、この発見は俺達だけではなく、協力してくれた泉やグロックを始め、コントラクター達の成果でもある。故に山分けだな」
「うーん、ランディのそういうとこ好きだけど、もっと貪欲になっても良いと思うけどなぁ」

　斯くして、遺跡で発見されたスレイブオブフォーチュン？は、発見者達で山分けされる事となった。



　――空京。

「強力な魔力を帯びた剣である事は分かったが、効果が分からないな。刀身の文字が全て解読できれば分かるかも知れないが……」

　フェンリルは冒険者が集まるカフェでスレイブオブフォーチュン？を調べていました。

「ランディ、何か分かっ……」

　そこへウェルチが紅茶とドーナッツをトレイに乗せて持ってきましたが、急にそれらを取り落としてしまいました。

「ウェルチ、大丈夫……ん！？」
「んちゅ！　ランディ、好き好き、だ〜い好き！」

　心配そうに見上げるフェンリルの唇を、ウェルチが強引に奪ったではありませんか！
　その後も告白と共に情熱的なキスを繰り返してきます。

「フェンリル様、実はわたくし、以前よりお慕い申していたのですわ！」
「い、泉！？」

　ウェルチだけではありません。
　彼女の後ろにした美緒もトレイを取り落とすと、ヘッドスライディングよろしくフェンリルの首に抱き付いてきたのです！

「ちょっと、ボクのランディに何するの！　キミでも許さないよ！　ラナのように魔鎧の素材にしてやろうか！？」
「ウェルチ様こそ退いてくださいまし！　パートナーだからといって恋人になるとは限りませんでしょ？」
「２人ともどうしたんだ！？　店内なんだから、他の客の迷惑にならないよう落ち着……うお！？」

　フェンリルを挟んで対峙する２人は一発触発状態でした。
　何とかなだめようとする彼の鼻先を、ファイアーボールがかすめていきました。フェンリルは寸前で回避しました。

「真っ昼間から見せつけてくれるじゃないですか、ランディ先輩」
「グロック！？　さっきのファイアーボールはお前か！？」
「ちょっと顔が良いからって澄ましてる先輩の面、すげーむかつくんですけど！」

　アッシュは憎悪に満ちた瞳でフェンリルを睨め付けると、躊躇う事なく再度ファイアーボールを放ちました。
　フェンリルは咄嗟にスレイブオブフォーチュン？で防ぎます。
　すると、刀身のかすれていた部分が刮げ、読めなかった文字が浮かび上がってきました。

「スレイブオブフォー……リンラブ！？　スレイブオブフォーリンラブだと！？　まさかこの状況はこの魔剣のせいだというのか！？　これを渡した皆の危険が危ない！」

　魔剣はスレイブオブフォーチュンではなく、スレイブオブフォーリンラブでした。
　女性は魔剣を持つ者を愛してしまい、所有者を巡って戦い合い、そして男性は所有者に憎悪し、排除しようと攻撃してくる恐るべき効果を秘めていたのです！
　解除方法は剣自体を破壊する他ないようですが、魔剣であるため生半可に攻撃では破壊できないようです。
　スレイブオブフォーリンラブ同士を打ち合う事で破壊できるかも知れません。

　フェンリルは何とかカフェを抜け出すと、まだ空京市内にいると思しき、スレイブオブフォーリンラブを山分けしたコントラクター達を探す事にしました。
　既に空京市内のあちこちから、阿鼻叫喚の声が聞こえ始めていました。

　どうも、ゲームマスターの袋小路愚太郎です。
　お久しぶりの方はお久しぶりです。初めましての方は初めまして。

　フェンリルが見つけた魔剣スレイブオブフォーリンラブが起こした騒動に皆さんは巻き込まれます。
　フェンリルは全校の生徒に声を掛けて遺跡探検を行ったので、「フェンリルと一緒に遺跡を探検した」「休日に空京に来ていた」といった理由でご参加いただけますと幸いです。

　スレイブオブフォーリンラブには

・女性の場合、所有者を好きになります。他に女性がいた場合、所有者を巡ってバトルを繰り広げます。
・男性の場合、所有者に憎悪以外の感情を抱かなくなり、何が何でも排除しようとします。

　このような効果があるようです。
　効果は基本的には「外見性別」に準じますが、実生別を隠していない場合、好きな方の効果を選べるとします。

　また、この効果はスレイブオブフォーリンラブを破壊しない限り続きますが、スレイブオブフォーリンラブは同じ魔剣同士でしか破壊できないようです。
　スレイブオブフォーリンラブを所有しているかどうかについては、「あいさつ掲示板」にあいさつを書き込んでいただき、その際に振られるダイスの出目の合計が「10」以上の方、「ゾロ目」の方は、スレイブオブフォーリンラブを持っている、とします。
　それ以外の方は影響を受ける側としてアクションを掛けて下さい。
　また、ダイス目はＭＣとＬＣ共通としますが、スレイブオブフォーリンラブを所有できるのはＭＣかＬＣ、どちらか１人になります。ＬＣに持たせた場合、ＭＣは魔剣の影響を受けてＬＣを好きになったり憎んだりします。

　なお、スレイブオブフォーリンラブは男性がモテたい一心で作ったらしく、女性が持つ事は想定されていないようです。
　ですので、女性が持っても効果は同一（女性に愛され、男性に憎まれる）とします。

　あいさつ掲示板でどの参加者がスレイブオブフォーリンラブを所有しているかご確認いただき、アクションで絡んでいただければと思います。
　特に絡みたい相手が居なければ、私の方でフェンリルを含めて割り振らせていただきます。

　お約束というべきか、スレイブオブフォーリンラブの影響下にある時の記憶は綺麗さっぱり忘れますので、影響を受けてしまった場合、思う存分ラブバトルロイヤルを繰り広げてください。

・魔剣を持つ俺にウェルカムスプリング！

・魔剣を持つあなたにフォーリンラブ！

・魔剣を持つお前にゴートゥーヘル！