シャンバラ教導団

――海京：天御柱学院生徒会室。

「『人材発掘プログラム』？　へえ、合衆国大統領が主催者なのか」
　資料のチェックをしていた生徒会長の山葉　聡（やまは・さとし）は、封書の内容を確認しました。
「ほう、地球にいる契約者の中から優秀な者を見出し、フロンティアラッシュで勢いのあるニルヴァーナの第一線に送り込むということか。この様子だと、これと同じ案内は、各国の契約者養成学校にも送られてるようだな」
　聡の後ろから風紀委員長のルージュ・ベルモントが資料を覗き込みます。

　今でこそパラミタに学校が作られ、多くの若者が直接パラミタに渡るようになっていますが、黎明期に設立された契約者養成学校は、数が少なくなったものの今でも世界各国に現存しています。天御柱学院や姉妹校の聖カテリーナアカデミーも、元々はそうでした。

「プログラムは一週間の日程で、場所はワシントンコントラクタースクール（ＷＣＳ）か。各種テストやイコン戦、生身での格闘戦も行われるものの、それ以外は普通の交流会といったところだな。
　俺たちは海京を離れるわけにはいかないが……どうする、山葉会長？」
「希望者は募ってみることにするぜ。シャンバラの九校で集まる機会は多くても、地球側の学生が集まる機会なんて滅多にないだろ？　うちの学校だけじゃなく、シャンバラの各学校にも連絡は回してみるぜ。まあ、こっちの契約者にとっても、パラミタの契約者がどんなものかを学べるチャンスだし、悪い顔はされないだろ」
「だな。裏を返せば、第一線で活躍しているパラミタの契約者と張り合えないようならその程度でしかない、ってことだ。場合によっては試す側になるかもな」

　こうして、アメリカで行われる「人材発掘プログラム」への参加者が募られることになりました。

　――翌日。海京：東地区人工海岸。

「異常なし、っと」

　新人風紀委員雪比良　せつなは、担当地区の巡回を行っていました。
「よし、せっかく東地区に来たことだし、帰りはあの店で抹茶アイスを――」

　その時、海岸に光の渦が発生しました。
　思わず面食らってしまったせつなですが、光の中から現れた人影を見て、さらに驚きます。

「雪比良……せつな……」
「は、はい！　……なぜあたしの名前を？」

　黒髪の少年がせつなの肩をガッと掴み、答えます。

「俺は、君に会うためにここにやってきた」
「え、あの、ナンパ？」
「違う。俺はただ、使命のために君を――」
「その前に……服、着てくださーーーいっ！！！！」

　なぜか全裸だった少年を氷漬けにし、せつなは近くの風紀委員の支部へと運び込みました。


「……それで、あなたは未来から重大な使命を帯びてこの時代にやってきたってことよね？　しかも、未来のあたしが何らかの形で関わっていると」
「そういうことだ。
　『Ｃ』の台頭を阻止するため、その祖を始末する。そのために、俺はこの時代に送られてきた」
「その『Ｃ』ってのは何なの？」
「圧倒的な力をもって、ニルヴァーナ大陸の支配者となった新人類のことだ。俺のいた時代では、手がつけられないほど強大な存在となってしまっている。その起源は地球にあり、この２０２２年に最初の『Ｃ』が確認されたという記録が発掘された。
　そして、これがその手掛かりとなるものだ」

　少年が提示したのは、「人材発掘プログラム」の日程表でした。

「これって、ちょうど今募集してるやつじゃない」
「そこに、必ず『Ｃ』が現れる。行こう」
「……未来のあたしが関わってるんじゃ、断れないよね。こんなものも預かっちゃったし」

　少年から渡された一振りの刀――氷刀：アイスエッジを見つめ、せつなは声を漏らします。

「そういえばあなたの名前、聞いてなかったわ」
「……名前などない。好きに呼べばいい」
「……そう言われると困るわね。それじゃ、ナナシで」

　こうしてせつなとナナシは、未来を救うべくプログラムへ参加することになりました。



　その頃。

「はうぅ〜、まさかわたしが行くことになるなんて……」

　見習い執行官テレサは、「神を冒涜する所業によって生み出された存在」の出現を予知した『教会』から、その者の断罪を命じられました。
　聖カテリーナアカデミーの学生として、人材発掘プログラムに参加することになったのです。
　初めての単独任務への不安はありますが、テレサは気合いを入れ、プログラムの開始に備えました。

「ですが、この任務を完遂すればわたしも晴れて一人前の執行官です。ジャンヌさんやシモンさんのような執行官になるためにも、頑張りませんと！」

■8月20日　追記
　執行官：俗に言う『神罰の地上代行者』のことで、要は化け物や異端者相手に特化した戦闘のプロです。

　過去のリアクションの結果アカデミー等に留学している方は、留学中のＰＣ（非ＮＰＣ)としてアクションをかけて頂いて構いません。



　地球を舞台とした物語の開幕です。
　天御柱学院が窓口となってますが、どの学校の方でもご参加頂けます。やや特殊なシナリオでもありますので、マスターコメントをよくお読みください。
※本シナリオは、原案の識上蒼マスター監修で行われます。

■本シナリオ限定の特殊ルール

　今回のシナリオ（前編・後編通して）では、地球の契約者養成学校に通う生徒としてロールプレイが可能です。その場合は自分のＰＣとしてではなく、「そういうＮＰＣ」としてアクションをかけることになります。
　以下に２０２２年時点での主要な契約者養成学校と簡単な説明を載せますので、そこからお選びください。
　無論、ご自分で考えてもかまいませんが、基本は学生となります（例：インドのニューデリー契約者大学など）

■目的

　雪比良　せつな＆ナナシがいるサイドＡと見習い執行官テレサがいるサイドＢでストーリーが進んでいきますが、どういう展開になるかは参加者次第となります。

　基本的に前編では、一週間の人材発掘プログラムをそれぞれのやり方で楽しむことが目的となります。なお、前編は初日～５日目です。６日目と最終日は後編で扱います。

　プログラムは基本的に交流会です。他の学生たちと寝食を共にすることになるため、一種の合宿ともいえるでしょう。
　また、イコンでも生身でも、模擬戦を行うことができます。その他、「学生らしいこと」は大体できると思って頂いて構いません。


■契約者養成学校

　２０１２年に世界各国で設立された契約者育成のための学校です。パラミタに学校ができて以降は数を減らしましたが、規模の大きいところは今なお健在です。

・聖カテリーナアカデミー（イタリア）
　天御柱学院の姉妹校であり、イコンパイロットの育成を行っている「欧州版天学」と言える学校です。成績によるグループ分けが行われており、今回のプログラムの参加資格を持っているのは、アカデミーの上位５０組です。なお、プログラム参加者の最高位は第九位です。

・ワシントンコントラクタースクール（アメリカ）
　アメリカにある契約者養成学校です。自国色の薄い葦原明倫館への進学を躊躇う生徒は少なくないため、こちらの学校に通う契約者は今でも多いです。
　良くも悪くも自由で開放的な雰囲気ですが、それは「契約者としての力の使い方を自分で判断させるため」であり、何かをしでかしたら誰の手助けを得ることもなく自分で解決しなければなりません。自由には責任が伴う、ということを理念としているのです。

・王立ヴィクトリアカレッジ（イギリス）
　イギリスにある契約者養成学校です。西洋の魔法使いが多く在籍しているだけでなく、『騎士道』を率先して学ぶ者も多いです。
　魔術結社が独自に私塾で魔法を教える中で、地球では数少ない規模の大きな「魔法の学べる学校」となっています。

・極東新大陸研究所本部（ロシア）
　厳密には学校ではありませんが、超能力者と強化人間の教育に世界で最も力を入れている機関です。海京にも分所がありますが、そちらではイコン研究がメインになっており、超能力や強化人間の研究に関しては本部の方が上をいってます。


■ＮＰＣ

・雪比良　せつな（地球人）
　天御柱学院高等部超能力科１年。新人風紀委員。水色のボブっぽい髪が特徴的な少女。真面目で大人しいツッコミ属性持ち。
　学院唯一の「氷結系超能力」の使い手であり、その冷気は風紀委員長の「消えない炎」さえも無力化するほどです。彼女とは対照的な「融けない氷」を操ります。その力を見たルージュに、風紀委員にスカウトされました。
　パートナーは海京で留守番です。

・ナナシ（未来人）
　重大な使命を帯びて未来からやってきた少年。無表情でどこか機械的ですが、よく突飛な行動を起こそうとするため、せつなにツッコミを入れられます。
　パートナー契約は結んでいませんが、せつなのパートナーとして振る舞います。
　未来において圧倒的な力を持つ「Ｃ」と呼ばれる新人類の台頭を防ぐのが目的。協力を申し出れば、素直に教えてくれることでしょう。

・テレサ（地球人）
　地球最大の宗教派閥『教会』の見習い執行官。泣き虫で臆病、さらに童顔なため成人しているにも関わらず年相応には見えません。
　断罪の「聖火」と杖術の使い手であり、見習いとはいえ並の契約者では到底相手にならない程度の実力はあります。
　なお、潜入任務なので、執行官の身分は隠してアカデミーのいち学生として参加しています。

※他、ナナシが「Ｃ」かもしれないと疑うことになる各学校の学生です。

・トーマス・ハミルトン（ワシントンコントラクタースクール）
　プライドの高いスクールの学生。愛称はトミー。プログラム参加者の中で自分が最も優秀だと自負しています。
　アメリカ軍人の家系で、アメリカ軍で開発中の第二世代イコン「フリーダム」のテストパイロットも務めています。

・ケビン・サザーランド（ワシントンコントラクタースクール）
　トーマスの友人で、専属のメカニック。眼鏡をかけたもの大人しい少年だが、非常に頭が切れる。

・パトリシア・ブルームフィールド（王立ヴィクトリアカレッジ）
　カレッジの次席学生。数十冊の魔道書、それも原典クラスと契約を果たしていることから「ロード・オブ・グリムモワール」の異名を持つ。
　目つきが悪い少女ですが、気さくな性格です。

・サーシャ＆ミーシャ姉弟（極東新大陸研究所本部）
　極東新大陸研究所が生んだ超能力の申し子。姉、サーシャが地球人、弟、ミーシャが強化人間。身体能力強化と脳のクロック数操作により、アクセルギアいらずで体感速度を変化させることが可能。また、三次元空間における立体視が可能であり、イコンパイロットとしても生身の戦士としても高い能力を持つ。

・西枝　レイ（オブザーバー）
　自称日英ハーフ。プログラムの参加者ではなく、オブザーバーを務める１０歳の少女。この一年で論文２０本を発表し、うち５本が認められて博士号を与えられた神童。
　なお、彼女は契約者ではありません。



　それでは宜しくお願い致します。

・人材発掘プログラムに参加する（ＰＣ）

・人材発掘プログラムに参加する（ＮＰＣ）

・せつなと話す

・テレサに声をかける