※特殊なルールのあるシナリオです。
マスターコメントを良く読んでから参加してください。
ここは、蒼空学園内に実験的に造られた、仮想都市ダイブ設備
将来的に広大な仮想都市になる予定のこの企画は
現時点ではヴァーチャルリアリティ(=VR)のRPGで遊べる程度まで完成しています
今回は各校の生徒の中からモニターを募り、VRRPGイベントが開催される予定だったのですが……
「ちょっと、ここにきてトラブルってどういう事ですかっ?」
オープンプレーイベントに先駆け、ゲーム内の実況アナウンスを担当することになっている空京の看板女子アナウンサー
卜部 泪(うらべ・るい)の声がオペレータールームに響きわたっております
そんな只ならぬ剣幕の彼女を宥めるように、技術担当者が説明を始めました
「それが……突然1時間前からメインシステムにバグが生じまして……
ゲームシステムの一部が書き換えられてしまったんです
現在、先行ログインされているプレテスト参加者の方には影響がないのですが
……そのゲストPLの方とのアクセスとコンタクトが取れない状態でして」
「ゲストPLって……フリューネと、ですか?」
オペレーターの口から出た名前に泪は目を丸くしているようです
さて、こまでの経緯をみなさんに簡単に説明しますと……
実は、このVRRPGのβテストに、誰もが知っている【とある女戦士】の方に運営サイドは声をかけたのです
その方の名前こそ【天馬座のシュテルンリッター】ことフリューネ・ロスヴァイセ(ふりゅーね・ろすう゛ぁいせ)
システム未経験者をガイドしながら、現在公開されている最終ステージにて参加者と共にボスと戦う……という役回りで
彼女に依頼し、彼女もひとつ返事の快諾とともに、先行してVRスペース内にダイブしているのでした
……ところが
最終ステージであるダンジョンに控えているはずの彼女からの通信が途絶えそのまま行方不明になっているらしいのです
それと同時に配備されていたエネミーキャラが消失し、現在ステージ内には先行βテスト参加者しかいない状態とのこと
「あり得ない事態なのですが、システムの中にフリューネさんが取り込まれたようです
こうなった以上、システムの緊急停止は出来ないので、参加者のログインを止める位しかできませんが…」
「そうして下さい、参加者の方には事態を説明しつつ……」
そこまで言っていた泪の口が、鳴り響くアラートの音で止まりました
アラートの先はモニターの向こう、中継されているVRゲーム内の中からのようです
音と共に仮装空間内が夕暮れの様に赤く染まり、上空に沢山の影が浮かび上がります
エネミーと思わしきその無数の影は、大層メカニカルな様相をしつつ、何だか見慣れたシルエットをしています
紺色の長い髪、背中の翼、女性特有の曲線美……その姿は紛れもなく
「ふ、フリューネ!?」
そこにあるのかメカ(しかも量産型的な簡易デザイン)のフリューネとも言うべきエネミーの大群です
あまりの事に泪だけでなく、スタッフ全員が口を開けっぱなしで騒然としている中
彼女等が護るように取り囲んでいる最終ステージダンジョンの前に巨大なホログラムが浮かび上がりました
腰に両手を当て、自慢げに胸を反らして佇むその姿も……
「や、やっぱり……フリューネですよね?」
背中の羽だけでなく、全身の装具の羽の意匠がコウモリの羽に変わり
長い髪は白金、肌も褐色でやや目元に妖艶さの色をにじませていますが、どう見ても彼女はフリューネでした
あまりの事に皆が驚く中、ホログラムの巨大な影が不敵に話し始めたようです
『我が名は【カオスフリューネ】である!
たった今から、この世界は闇に与する我の支配する事となった!
この世界を守る【フリューネ・ロスヴァイセ】は我が手中にあり、彼女の加護はないと思え!
もし彼女を取り返したくば、この塔を守る【メカフリューネ軍団】
そして塔の中を守護する【フリューネ三騎士】を倒す事だ』
カオスフリューネとやらの語る言葉に、驚けばいいのか呆れたらいいのか、我に返って突っ込めばいいのか
誰もが困惑のあまり何もいえない中、たたみかける様にカオスフリューネの後ろに新しい影が映りました
そこには、お姫様もかくやというブルーのドレスに身を包んだフリューネが、両手を縛られている姿
何だか向こうも明確なカメラ的な何かがあるらしく、それを見つけた彼女がカメラ目線で叫んでいるようです
『ちょっと、何この格好!?やだ、恥ずかしいから見るな!って言うか離しなさいってば!こらぁ』
『くっくっく、恥じらいの姫君はお前達の助けを待っているようだぞ?
命が惜しくないのならかかってくるがいい!塔の最上階で待っているぞ!
ふふふふふふふ、ふははははははは……あ〜ッはっはっはっはっはっはっはっはっは』
カオスフリューネの笑い声と共に移っていたホログラムは消え、残ったのは空に浮かぶ【メカフリューネ軍団】
あまりの事にフリーズしていた泪が、ようやく我に帰り技術オペレーターに話しかけました
「……えっと、状況に変化は?」
「え、ええ……ゲームシステムは内容を改変した後、どうやら元に戻ったようです
エネミーデーターも把握、あの偽フリューさんが言ったとおりです
そして本物のフリューネさんの位置も把握しました、話し通りに最終ダンジョン最上階にいます、あと……」
「?……何ですか?」
「今の映像で事態を知った参加者が、早くログインさせろと殺到しはじめまして……」
「そうでしょうね、あはははは……」
乾いた笑いの後に、額を押さえて一考した後、泪は意を決したようにオペレーターに話し始めました
「冗談みたいな話ですが、事態を解決するにはログインして真っ向からフリューネを助けるしかないようです
参加者のログインも許可してください、全員で協力したほうが彼女の救出も確実ですから
私もすぐにログインします、中継しつつ参加の皆さんに情報を送りますのでサポートお願いします」
そういって彼女もログイン用のダイブ設備に向って足をすすめるのでした
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「……ど、どうしよう……なんか大変な事になっちゃってるよ?」
一方こちらは混乱真っ最中のVRゲーム空間
街並みの上を飛び交うメカフリューネを物陰で見上げながらパフューム・ディオニウス(ぱふゅーむ・でぃおにうす)は
途方に暮れたような声を出していました
運よくβテスターに受かり、ゲーム内にダイブして楽しんでいた彼女ですが
たった今、VRゲーム内でカオスフリューネの演説を知り、事の顛末を知ったのです
「こんな事なら一人で来るんじゃなかったなぁ……正規参加者もいるって言う話だから
誰か知り合いがいればいいんだけど……それまでどうしよ……って!?うひゃぁ!?」
途方に暮れて呟いていたパフュームですが
そこで上空のメカフリューネの数体が自分を見つめているのに気がつきました
『ターゲット確認★殲滅ノ時間DATHョ〜!!』
「うゎ……ちょ、ちょちょちょっと、こっち来るし!?どどどどうしたら!!」
明らかに攻撃開始の合図と共に、自分に向ってくる大勢のメカ軍団に戸惑うパフューム
あわてて退路を探すも、世界も情報も変わってしまった今、どう逃げたらいいかわかりません
そんな時、背後の通路の隙間から声が聞こえてきました
「お姉ちゃん!こっちだよ、急いで!」
「あ、うん……わかった!」
声に導かれるままに路地裏に入り、何とかエネミーの追跡をやり過ごす事に成功し
パフュームが声の主を見ると、どうやら少年のようです
彼の方も安心したのか、屈託ない笑顔を彼女に向けてきました
「良かった、あいつら索敵スキルないから隠れれば何とかなるみたい
僕もシステムを乗っ取られてからまだ間もなくて、まだ詳しいデーターが取れていないんだ」
「助けてくれてありがとう、あの……君は?」
「僕はアダム、このゲームのサポートAIなんだ
参加者のナビゲートと、みんなとシステムの橋渡しをする事になっていたんだけど、突然弾かれちゃってさ
何とか元に戻そうと色々やってみたんだけど……うまくいかなくて
システムを元に戻すには、あの塔にいるボスを倒さないといけないみたいなんだ!
でも僕はナビゲートしかできないから、どうしたらいいかわからなくて……」
悔しそうに俯く彼を見て、パフュームは少し考えていましたが
顔を上げると、アダムの手を取り決意の言葉を述べることにしたようです
「わかったわ、アダムくん!あたしが協力してあげる!
あたしもフリューネを助けたいんだ、一緒にあの塔に行こう!」
「わかった……よろしくね!パフュームおねえちゃん!」
決意の握手と共に、二人は遠くにそびえる塔を目指して走り始めました
さて、このゲームの結末やいかに?
皆はカオスフリューネを倒し、無事にフリューネを助けることができるのでしょうか?