【黒史病】天使と堕天使の交声曲 リアクション公開中! |
シナリオガイド審判の日。ラッパは高らかに鳴り響く。それは、終末の始まり――。
シナリオ名:【黒史病】天使と堕天使の交声曲 / 担当マスター:
有沢楓花
* 「アルさん、アルさん」 ……彼は、深き眠りに落ちていた。 「ボブ、ボブー!」 その名に意味があるのだろうか。 「アルカなんとか……さん」 混濁した意識の深層下でも彼の名は定まらず、彼の記憶の中からも薄れつつあった。 「……えーっと、何だっけ……そこの……天使さん」 ……天使。はっきりしているのは、それだけだ。 翼の色を、彼は忘れた。 * 地球、日本、新百合ヶ丘。 初夏の日差しも眩しい百合園女学院の日本校の校舎を、パラミタ校の生徒会役員たちが訪れていました。 目の前のホールでは、生徒たちがトランペットなどで最後のリハーサルを行っています。 「後は本番を待つばかりですわね。週末の音楽会が楽しみですわ」 生徒会長のアナスタシア・ヤグディン(あなすたしあ・やぐでぃん)は、プログラムを優雅にめくりながら微笑みました。 百合園日本校とパラミタ校の生徒の交流をしたい、そんな思いから提案された企画でした。 全校生徒ではなく有志だけですが、楽器の弾ける生徒は楽器を、歌う人は合唱を……音楽やダンスを互いに披露し合うことになっていました。 特に期待されているのが、最後のプログラムとなる両校の吹奏楽部合同の演奏です。管楽器が華やかなクライマックスに相応しい曲で、今までにも難しいながらできるだけ合同で練習を重ねてきたものです。 ただし場所はこの百合園女学院ではなく、最近この近くにできたショッピングモールの特設ステージです。訪れる買い物客、地域との交流という側面もありました。 セラフィックアベニューというこのモールは、その名の通り小さな通りを模していて、外国の街角にいるような気分で楽しめます。 煉瓦の並木道には大きくてお洒落なスーパーやアウトドアショップ、輸入食品店、アイスクリームのお店、CDショップ、リフレクソロジーの店まで様々な建物が立ち並んでいます。 また、雨に濡れたくない商品や家族向けの店(書店やオモチャ屋さんやフードコートやペットショップなどなど)が入った二階建ての建物もあります。 そのほかに小さな公園や池と注ぎ込む小川も人工的に作ってあります。 ちょうど二つを繋ぐ間の広場に、特設ステージがありました。 「そうですね。それから、終わったらお買い物でもしませんか? 日本の文物を色々と見るのも面白い経験になると思いますよ」 生徒会会計の村上 琴理(むらかみ・ことり)の言葉に、アナスタシアは不思議そうな顔をしました。 「あら、真面目一辺倒の貴方がそんなことを言うなんて珍しいですわね」 「もっと珍しいことを今から言いますよ」 「?」 「今日はこの後、お時間を頂きます。久しぶりの日本ですから、実家にパートナーと一緒に顔を出しておきたいんです。来年の卒業後の進路の話もしておきたいですから。 明日の朝は直接会場に行きますから、ちゃんとホテルのラウンジでお迎えの生徒さんと一緒に、会場まで連れてって貰ってくださいね?」 姉のような顔で念押しする琴理に、アナスタシアは眉をひそめました。 「迷子になんてなりませんわよ」 「この前の事がありますから、念のためです。ここは日本なんですからね、慣れてないんですから。……念のためですよ。絶対ですからね」 「信用ありませんのね。……ああ、もう解りましたわ。他の生徒の方もいらっしゃるですから、大丈夫ですわ」 不本意ながらも了承したアナスタシアだったのですが……、そう、道に迷ったりしなくても。自分がちゃんとしていても。 ――世の中がおかしくなってしまったら、自分はおかしい人物になるわけです。 「……これは何ですの……?」 翌朝生徒たちと少し早めに会場を訪れたアナスタシアは、呆然としていました。 買い物客の中に混じって、明らかに様子のおかしな人たちが何やら讃美歌のようなものを歌っているのです。中にはバラエティショップで買ったような天使の白や黒の羽や頭の輪っか、悪魔の羽を付けている人たちがちらほら見えます。 そして戸惑っている中、セラフィックアベニューの広場の時計が9時を報せる管楽器の音を響かせた時――<彼>は現れたのでした。 「一つ目のラッパが鳴り響く。裁きの時は来たれり」 「しゅ、守護天使の……いつぞやの道案内の方!」 一人の特徴的な光翼を持つ守護天使の青年は、邪悪な(少なくとも本人はそのつもりの)笑みを浮かべました。 「ほう、この黒き翼を見てなお、逃も出せず声まで出せるとは……では、これはどうかな?」 再び嫌な予感がして、アナスタシアは皆を下がらせると、魔法を唱えました。 守護天使が意味なく尊大に手を振ります。本当なら、黒史病にかかるのは非契約者。何も起きない……筈でしたが、彼も一応本物の守護天使です。 小さな光の矢をアナスタシアは消滅させると、抗議の声を上げました。 「何をなさいますの!?」 「この堕天使コカビエルの“結界”内で力を使えるとは……お前も“天使”の血を引くと見える。 しかしこの地上はもはや我らにそそのかされ、七つの欲望にまみれた人間たちの巣……。七つ目のラッパが吹かれた時、ルシファー様はそれを庇う貴様ら天使ともども地上を引き裂くだろう!」 「な、何を仰ってますの……?」 アナスタシア、そして生徒たちには思い当たることがありました。 七つ目のラッパ、午後3時。それはちょうど……百合園の最後の演奏が奏でられる時間です。 「さあ、血に封印された記憶を今こそ解き放ち、目覚め、我らのたくらみを打ち破って見せよ! ……くくく、しかし天使と堕天使の悲鳴の交声曲(カンタータ)こそがわたしにとって最も美しい音楽だがな!」 訳の分からないことを言うと、守護天使改め堕天使コカビエル(自称)は去っていってしまいました。 「どうしますか、生徒会長?」 不安げな生徒に問われて彼女は困ったような呆れたような顔をすると、 「あれは黒史病ですわ。このままでは最後のステージが大変なことになるかもしれませんわ。 以前の経験から言いますと、最後のラッパが吹かれる……演奏が始まるまでにこの“妄想”に結末を与えるしかありませんわね」 そしてそんな会話を交わす彼女たちの元へ、白い羽をはやした患者が近寄って来るのでした。 ところでその時、前回の騒動の原因となった黒ずくめの少女――魔導書『失われた物語』は、片手でお腹を押さえながら書店で立ち読みをしているのでしたが……。 ぎゅるるるる。 「……たべにいかなきゃ……」 本を置くと、またふらふらとうろつき始めるのでした。 担当マスターより▼担当マスター ▼マスターコメント
こんにちは、有沢です。 ▼サンプルアクション ・人々を悪魔の手から守る ・ルシファーを復活させる ・演奏会を成功させる ▼予約受付締切日 (予約枠が残っている為延長されています) 2014年05月27日10:30まで ▼参加者募集締切日(既に締切を迎えました) 2014年05月28日10:30まで ▼アクション締切日(既に締切を迎えました) 2014年06月01日10:30まで ▼リアクション公開予定日(現在公開中です) 2014年06月11日 |
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