空京のショッピングモールが爆弾魔に襲われ、泡銭 平助達が突入して数日後の夜。
空京の放送機材全てが爆弾魔、佐々木 夕によって再びジャックされました。
「先日のショッピングモールでの、ハラハラどきどき爆弾大会は気に入っていただけたかな?
今日はこの季節ぴったりで、もっとドキドキさせるものを用意しておいた。”空京のみんなが楽しめるホラーゲーム”だ」
夕がそう言って指を鳴らした途端、あたりの明かり全てが消え真っ暗闇、人の声しかしない空京はあっという間にホラータウンのような雰囲気に包まれました。
おそらく機晶技術のようなものを使われたのでしょう。
よく見れば、黒いバリアのようなものが空を大きく覆っています。
夕が次に放った言葉はさらに市民達を震え上がらせました。
「良い悲鳴を聞かせてくれるみんなにはもう1つプレゼントだ。
ここに表示されてる”恐怖心メーター”が100%になっちゃうと空京はもれなくぼかーんっ!」
§
ペーパ・ドクとその助手(AI01)は、街頭モニターを見ていました。
「はっ、夕の奴め、ついに大きく出たな」
「……空京全域へ大型爆弾の存在を確認。電波でコネクトされています」
爆弾魔へと警察が動いてる中、ペーパ達は捕まる心配もありませんでした。
唯一捕まえに来るはずであろう警部は――
「ようやく泡銭 平助警部も夕の逮捕へと動き始めたようです」
「ふんっ、デカ助め遅いじゃないか」
「心的バイオリズムが未だ乱れてるようですが……」
「くっくっく、私にとって好都合だ!」
楽しく高笑いを始めるペーパを助手は無言で眺め続けました。
そんな助手を一瞥すると、ペーパは真顔に戻り、モニターを見上げました。
「で、助手よ。プロジェクトエェーックスはどうなってる?」
「理解できません。そんなプロジェクト名は初めて聞きました」
「んぐ……解析だ! 解析!」
「少なくとも3時間はかかります」
ペーパはにやりと笑みを浮かべました。
「そうか、では私達も暇つぶしに奴のゲームに乗っかるとしよう! はーっはっはっは!」
空京が混乱と渾沌に巻き込まれる中、ホラーちっくなゲームは始まりました。
まだ、このときは誰も知りませんでした。名状しがたい者達の存在に……。