百合園女学院

　パラミタ大陸の東に浮かぶ国マホロバ。
　エリュシオン第四竜騎士団の襲来と扶桑の厄災に見舞われていました。

「シャンバラとの外交による考証は急務です。
シャンバラが敵対意思がないことを確認し、マホロバに有効的な国であると、
示さなければなりません」

　空京では、マホロバ幕臣が葦原明倫館総奉行ハイナ・ウィルソン（はいな・うぃるそん）とともにシャンバラ政府との交渉により、通行通商条約を結ぶという合意に至ります。
　内容は主に、マホロバの鎖国政策をできるだけ緩和し、一般のシャンバラ人やマホロバ人に対して海外へ渡航を認めることと、輸出入の制限を緩和すること。
　そして、マホロバ国内で犯罪を犯した者を国際手配犯としてシャンバラ政府も対応すること。
　そしてもう一つ――重要なことがありました。

「コーラルネットワークですね」

　世界樹の問題はマホロバだけでなく、パラミタ全土の問題でもありました。
　シャンバラ政府は、マホロバ扶桑のアクセスを認めます。
　世界樹同士のつながりであるコーラルネットワークを利用し、扶桑の樹を回復しようというのです。
　しかし、それは危険な行為でもありました。
　他の世界樹が妨害を仕掛けてくる可能性もあり、また、無事に成功したからといって、イルミンスール、扶桑ともに倒れる危険性もあったのです。

　世界樹イルミンスールは言います。

　世界樹は、世界樹同士が「こことは協力しよう」と思い合うことがある。
　扶桑も、地球人と契約している。

　世界樹同士の繋がり――
　地球人と契約していたことを他の世界樹には隠していた扶桑でしたが、この契約のおかげで、同じように地球人と契約していたイルミンスールと繋がることができたのです。
　人と人の国を超えた繋がりが、二つの世界樹を結びつけたのでした。

　扶桑はイルミンスールからの生命力を得たことで、一時的ではありますが回復します。
　扶桑に取り込まれていた三人の巫女は救出されましたが、また新たな巫女が身代わりとなってしまうのでした。

　東雲遊郭の遊女胡蝶（てふ）ことティファニー・ジーン（てぃふぁにー・じーん）。
　彼女を攫った蒼の審問官　正識（あおのしんもんかん・せしる）は、十字架（ロザリオ）を探していました。

「代々瑞穂藩主に伝わってきた十字架（ロザリオ）がある。
この『黄金天秤』の影響を受けないが、先代藩主は、私にそのことを黙っていたのだ」

　正識の持つ『黄金天秤』は、鬼をあぶり出し、魂の重さをはかることができるといいます。

「――魂の重さとはね、即ち、マホロバの重さだよ。
この傾きの決定で、マホロバの未来も決まる」

　正識は、影蝋（かげろう）正識（ごしき）として、マホロバやその人々についてを知ろうとしていました。
　その彼のくだした結論は――

「マホロバから鬼を滅ぼし、扶桑の過ちをそのものから消す」

　正識は、鬼城の鬼を滅ぼし、扶桑『天子』の過ちをただそうと、鬼城　貞康（きじょう・さだやす）と『天子』との決着をつけるため、一人扶桑の都へ向かいます。
　一方、ティファニーは正識のもとに残ることを決め、七竜騎士の弱点を探る決意をしていました。

　そのころ、正識の命令によって戦力を一つに固めた第四竜騎士団・瑞穂軍と、幕府・葦原軍が、扶桑の都洛外である鳥伏実（とりふしみ）の街道を封鎖しようと、両軍の間で戦闘が始まろうとしていました。

　その幕府軍は、ついに軍艦と新型の鬼鎧『玉霞』の投入を行います。
　これまで造船所で作られ改造された軍艦四隻と、操練所で訓練を受けた者たたちがマホロバの雲海へと出航します。

　しかし、急ごしらえの軍艦と訓練という不安もありました。
　また、鬼鎧の研究者の中には、鬼鎧の運用をめぐって、幕府やアメリカ軍と関わりの深い葦原藩に反発し、離脱しようとするものもいたのです。

――ショーグン――

　鬼鎧が発する言葉に、将軍家はかつての威光を取り戻すことができるのでしょうか。
・
・
・
　友人たちの協力で十字架（ロザリオ）を取り戻した瑞穂睦姫（みずほの・ちかひめ）。
　瑞穂藩士日数谷　現示（ひかずや・げんじ）は人々の説得に応じ、幕府軍との合流します。
　また、扶桑の一件により、外国人を打ち払えという攘夷思想にさらに傾倒する秋津藩暁津勤王党（あきつきんのうとう）。
　彼らを動かし、国をひっくり返さんとする者たちもいました。

「暁津藩こそが、今、マホロバに必要な護国となりうるのです！
私の真の目的は葦原の独裁を、そしてシャンバラの侵略を食い止めることですがね……」
　
　暁津勤王党の戦への参入という事態に、ますます混迷が深まっていました。





「鬼城　貞康（きじょう・さだやす）が、鬼城とマホロバの万が一に備えて、鬼の力と記憶の一部を隠したのだ。
天子様にお願いしてな。わしはそいつの一部、万が一のための予備。そして『影』だ」

　鬼城　貞継（きじょう・さだつぐ）の身体を借りたという貞康の視線の先には、鬼城家の家宝刀『宗近（むねちか）』が光ってました。
　『刀』は宗家。
　鬼城御三家には『槍』『皿』『印籠』がそれぞれ預けられ、鬼の力の一部を封じていた
というのです。
　しかし、そのうち黄金の『槍』と『皿』は失われており、残ったのは『印籠』だけでした。
　『印籠』はまた、鬼城の隠された黄金の鍵であるとも言います。

「……四つの鬼の力が揃い、記憶が解放されたとき……『天子』様にお会いできよう。
再び天子様がお姿を現したとき、扶桑は噴花する……」

　貞康は遠い記憶を辿りながら、二千五百年前の惨状からの繁栄を語ります。

「マホロバを戦のない、平和な御世にすると。そのためにいかなる手段を持っても、何かを犠牲にしてでも、全力で泰平のための社会を築き上げ、栄えさせると誓ったのだ。天子様に『人間』にしていただいた瞬間から……！」


　貞康は、鬼城家とマホロバの安泰のために、大奥や遊郭をつくったとい言い伝えられていました。
　そのマホロバ唯一の公許、東雲（しののめ）遊郭では、ある慣習が秘密裏に行われていました。

「遊郭の上納金。それはね、この東雲ができたときからある習慣なのさ。それは必ず『黄金』でと決まっている。ただね、これは公じゃない。幕府の裏金というやつさ。勘定奉行もあずかり知らない金で、将軍家へ直接流れてるんじゃないかって話だよ」

　遊郭から集められた黄金が将軍家へという噂です。
　その受け渡しに、高級遊女が使われることもありました。

　東雲遊郭『天神』の一人、明仄（あけほの）もその仕事に関わっていたといいます。

「誰にも……知られちゃいけない……。正識様には……絶対に！」

　明仄は病におかされた身体を引きずりながら、金色に輝くマホロバ小判を握りしめ、マホロバ城の幕臣のもとへと急ぎます。
　ただ、愛する人に愛されたい。

　その一心が、遊女の心と身体を蝕んでいるのも知らず――。

　ゲームマスターのかのです。
　『まほろば遊郭譚　第三回』シナリオガイドをお届けします。

　ご参加いただく際にいくつか注意事項がございます。
　少し長くなってしまいますが、下記をご一読ください。

一、前作「まほろば大奥譚」に参加されていた方は、その設定を引き継いでいただいて結構です。

二、『托卵』によって『天鬼神の血』を引く子供を出産した方は、子に『鬼』の兆候が出るかチェックを行います。（男女とも。全四回まで行う予定です）
　方法は公平を規すために、シナリオガイドの『挨拶掲示板』を使用します。
　『挨拶』にご記入いただき、右のサイコロが『ゾロ目』だった場合、『鬼』化します。　その場合はアクションにも影響します。
　お手数おかけしますがよろしくお願いいたします。
　また、托卵を受けたキャラクターの身体的ペナルティは継続しています。

三、扶桑に取り込まれている三人の巫女（ＳＦＬ００００６６１　木花　開耶）、（ＳＮＬ９９９８８６４　封印の巫女　白花）、（ＳＦＬ０００３４６８　リース・バーロット）は解放され、代わりに（ＳＦＭ０００２８６９）秋葉　つかさ、（ＳＦＬ０００２８７０）ヴァレリー・ウェイン、（ＳＦＬ００３４７３３）蝕装帯　バイアセートが取り込まれています。
　このシナリオでは扶桑の中のままですが、他のシナリオにはご自由に参加されて結構です。

四、シナリオ内でキャラクターの金銭が動く場合があります。
（遊郭に売られた、身請けされた、豪遊したなど）
　いずれも、キャラクターの所持金内で発生します。（所持金以上の行為を行いたい場合は、そのためのアクションが必要です）
　第三回アクション締め切り後のキャラクターデータと前回終了時までのシナリオ内での使用差分を入れてこちらで計算し、参照とさせていただきます。

五、鬼鎧（イコン）の投入が可能です。
　鬼鎧（＝葦原明倫館イコン）を使用した場合は、幕府や葦原の支援を受けることができます。（幕府軍の軍艦に乗船できるなど）
　鬼鎧以外のイコン使用ついては、PCの私物扱いとします。
　また、鬼鎧の設定はこれまでの「まほろば大奥譚」、「まほろば遊郭譚譚」シナリオに登場した鬼鎧に準拠します。
　武器やスキルの使用は可能です。
　プレイヤーはイコンの使用を判断できます。
　ただし、使用の場合もアクション結果によって、イコンが必ずしも描写されるとは限りません。

六、扶桑の都の警護を行う紳撰組（しんせんぐみ）が結成されています。
　都の治安関係のアクションを行いたい方は、新シリーズ「結成、紳撰組！」にご参加ください。（このシナリオではメインで扱いません）
　担当は密巴マスターです。

　ＮＰＣ一覧や遊郭の設定については、下記をご参照いただきアクションの参考にしてください。
　設定等につきましては、史実を追及するというよりＰＣが活躍出来る舞台として参考にしています。

　サンプルアクションはあくまでも参考程度なので、シナリオから大きく外れない限りは何をしていただいても大丈夫です。


　このシナリオは葦原明倫館キャンペーンシナリオです。
　葦原明倫館生徒が有利ですが、他校生も参加できます。

　それでは、皆様のご参加をお待ちしております。


【ＮＰＣ一覧】

鬼城貞継（きじょう・さだつぐ）……マホロバ前将軍。扶桑の噴花を止めるため将軍職を白継に譲ったが、廃人となる。

房姫（ふさひめ）……葦原藩姫。大奥入りし、貞継の意思を継ぐと約束した。
睦姫（ちかひめ）……瑞穂藩姫。行方知れず。貞継との間に子「雪千架」がいる。

ハイナ・ウィルソン……葦原明倫館総奉行（＝校長）。房姫のパートナー
ティファニー・ジーン……葦原葦原明倫館・元分校長。

鬼城慶吉（きじょう・よしき）……鬼城御三家の一人。将軍後見職。

白継（しろつぐ）……マホロバ将軍。貞継と（ＳＦＭ００３３４３９）　樹龍院　白姫の子。
穂高（ほだか）……貞継と（ＳＦＭ００３４２９０）　ファトラ・シャクティモーネの子
明継（あきつぐ）……貞継と（ＳＦＭ００１５８７１）葛葉　明の子
貞嗣（さだつぐ）……貞継と（ＳＦＭ０００２８６９）秋葉　つかさの子
珠寿姫（すずひめ）……貞継と（ＳＦＭ００１６８２２）度会　鈴鹿の子
緋莉姫（あかりひめ）……貞継と（ＳＦＭ００３２５７３）水心子　緋雨の子
雪千架（ゆきちか）……貞継と睦姫の子


蒼の審問官・正識（あおのもんしんかん・せしる）……七龍騎士の一人。瑞穂藩主。マホロバ名では（まさおり）
日数谷現示（ひかずやげんじ）……瑞穂藩士。瑞穂藩を追われ、流浪している。
瑞穂弘道館分校……葦原明倫館分校と同じで、マホロバ内作られた瑞穂藩分校


胡蝶（てふ）……ティファニー・ジーンの源氏名
明仄（あけほの）……『竜胆屋（りんどうや）』Ｎｏ．１の売れっ子。姉遊女。ランクは天神。
海蜘（うみぐも）……妓楼（ぎろう）『竜胆屋（りんどうや）』楼主
正識（ごしき）……美形の影蝋


【付録】

●瑞穂藩（みずほはん）
マホロバ西国一の大大名。
二千五百年前の戦国時代、鬼城・葦原に破れ、西国に追いやられた。
現在は若き藩主、正識（マホロバ読みでは『まさおり』）が治めている。
瑞穂藩はエリュシオン帝国との貿易により栄え、その文化や風土の影響を受けてきた。
新しい藩主正識はエリュシオンのユグドラシルに強い感銘を受け、七龍騎士として働いており、臣下にもそれが影響されている。

●暁津藩（あきつはん）
マホロバ西国の藩のひとつ。
二千五百年前の天下二分の戦いでは鬼城家につき、「戦功大なり」の褒章に預かった。
現在まで続く大名として優遇されてきたが、藩政改革は進んでいない。
暁津勤王党（あきつきんのうとう）という一派が藩内で一大勢力となり、扶桑の都で活動を行っている。
しかし最近では、その反体制運動に懐疑的な複数の同志達が決別、脱藩者を出している。

●マホロバ二大遊郭
東雲（しののめ）遊郭……マホロバ城下にある幕府による唯一公許の遊女街。幕府の規制もあり、出入口は大門のみ。
水波羅（みずはら）遊郭……扶桑の都にある伝統ある花街。一般に出入りは自由。

●遊女の階級
太夫（たゆう）……最高位の遊女。遊郭における伝説的存在
天神（てんじん）……高級遊女
花扇（かおう）……一人前の遊女
雛妓（ひよこ）……見習い遊女。
的矢女郎（てきやじょろう）……最下級の遊女。病に冒されたものも多く、あたると死ぬという意味
芸者・舞子（げいしゃ・まいこ）……遊興時の舞や三味線、唄などを行うもの。身体は売らない
楼主（ろうしゅ）……遊女屋の主人

※『花魁（おいらん）』と呼ぶのは『花扇（かおう）』以上の遊女

『影蝋（かげろう）』……男娼。客は男だけでなく女もいる

●花魁道中（おいらん　どうちゅう）
花魁が雛妓などの見習いを引き連れて揚屋や茶屋まで練り歩くこと

●揚代（花代）　
遊女を呼んで遊ぶ時の代金のこと。
高級花魁（太夫）と一回遊ぶのに揚げ代、人数分の料理代＋酒代、ご祝儀などで１００〜２００万円前後、三度通って馴染みになるまでには１，０００万円はかかる。。
座敷で芸者や舞子などをたくさん呼んで、賑やかに騒ぐ金払いの良い客はお大尽（おだいじん）として喜ばれる。
『天神（てんじん）』で１０〜２０万円程度。
『花扇（かせん）』で５〜６万円程度。
一番安い『的矢女郎』は３，０００〜６，０００円程度。

●身請け　
遊女の身代金や借金を支払って勤めを終えさせること。
相場は、
花扇で三百小判〜百大判（３００万〜１０００万円）
天神で三百大判（３，０００万円）
太夫だと七百大判（７，０００万円）

●マホロバの通貨
マホロバには大判・小判（金貨）、銀（銀貨）、銅（銅貨）がある。
一銅＝１円
一銀＝１，０００円
一小判＝１０，０００円
一大判＝１００，０００円

（参考）１ゴルダ＝１００円〜５００円

・そうだ、遊郭にいこう

・幕府・葦原軍の作戦を立てる

・第四龍騎士団と戦う

・大奥の問題に関わる

・扶桑とマホロバを救う道を探す