イルミンスール魔法学校内にある図書館。
「へっくしょいウッキー……もう嫌だよぅ」
おかしなクシャミに熱による赤い顔、マスクとおでこに冷却シートを貼りながら分厚い本のページを必死にめくっているのは魔女のホイップ。
どうやら珍しい風邪をどこからか貰ってきてしまった様子。
その治療法を調べる為に図書館で調べ物をしているようです。
「やっぱりあの時かなぁ……新しい魔法薬の研究で使う薬草を取りに1人で行った時。そういえばあの時、見たことない大きくて派手な蚊が……ひっくしょんウッキー」
クシャミをする度に図書館にいた生徒がどんどん感染していってます。
皆おかしなクシャミに首を傾げているようです。
「あった!! ぶえっくしょいウッキー」
本に書いてあるのは誰が命名者なのか安直な病名『くっしゃみサルーン』と現在のホイップの症状、それと治療に必要な薬の作り方と材料。
キーとなる材料以外はホイップが所有している物にストックがあります。
しかし、その重要な材料が問題です。
本に書かれているのは拳程の大きさの紅白斑模様という奇抜な蚊。
主食は人間の血と記述されています。
大きな体です、一体どれだけ吸われるか解りません。
「これってあの薬草取りの時の蚊じゃない! こんなのどうしろっていうのよ。こんな蚊の体液だなんて……うぃっくしょいウッキー。しかもこのまま症状が悪化すると熱が下がっても語尾に“ウッキー”とか付いたままになるなんてぇ」
熱が上がり、さらに顔を赤くしています。ぽーっとしていると、どこからともなく虫の飛んでいる音が――。
「煩いなぁ……って、蚊ぁ!! はっくしょんウッキー」
ホイップの耳元を掠めて図書館の奥へと目当ての蚊は行ってしまいました。
急いで追いかけようと立ち上がりますが、熱のせいで思うように動けません。
「それなら魔法で……ふえっくしょんウッキー! あ……」
捕まえようと魔法を使ったのですが、タイミングの悪いクシャミで魔法を間違ってしまったようです。
魔法のかかった蚊はどんどん巨大化し、1m近くまで大きくなって巨大蚊(ジャイアント・モスキート)になってしまいました。
「ホイップさん! なんですか、あの蚊は! 早くどうにかして下さい。ここは火術厳禁ですからね。魔法を使う時は気をつけて下さい。あ、本をダメにしたり、本棚を動かしてはいけませんからね!」
いつの間にか隣で仁王立ちしていた司書さんに叱られてしまいました。
「ど、どうやって捕まえれば……。このままじゃ……図書館中が感染!? 熱上がったのかな、目が回る〜……あれ? この材料は何に使うんだっけ? 薬の調合も出来るか危ないかも。うう、不幸になんて負けないんだから……いっくしょんウッキー」
図書館で青くなったホイップのクシャミが響きます。
このままでは『くっしゃみサルーン』が図書館にいる全員に感染してしまいます!
その前にホイップの魔法によって巨大化した蚊(ジャイアント・モスキート)を退治し、その体液を採取する必要があります。
また、『くっしゃみサルーン』の特効薬の原材料のほとんどはホイップが持っていますが、彼女はとても調合できる状態にありません。
誰かが調合を手伝う必要もあります。
『くっしゃみサルーン』の感染を食い止めるためにも、皆さんの力を貸して下さい!