蒼空学園の掲示板に、一際目を引くチラシが貼りだされました。
そこに書かれているのは「ショートカット同好会」の文字でした。
このチラシを貼りだしたのは蒼空学園の生徒、松田ヤチェル(まつだ ――)。平均的な身長に平均的な顔立ち、髪も茶色のセミロングと、どこにでもいそうな普通の女子です。しかし、彼女はショートカットの女の子をこよなく愛する少女でした。
どちらかというと内向的な彼女は、遠くからショートカットの女の子を見つめているだけでした。
しかし、ある時、ヤチェルは満足できなくなってしまったのです。
この想いを分かち合える仲間が欲しい……!
そう思ったヤチェルはすぐに行動を開始しました。「ショートカット同好会」の結成です!
ヤチェルのパートナーで守護天使の青年、由良叶月(ゆらかなづき)は急に積極的になった彼女が心配な様子です。
守護天使のくせに柄が悪いことで認知され、女子からモテている叶月ですが、ヤチェルはそのパートナーとしか知られていません。
「ショートカット同好会」を結成したのは良いですが、ちゃんとまとめられるのでしょうか?
ショートカットに興味はありませんが、叶月はしばらくの間、ヤチェルの傍に付き添うことにしました。
そしてヤチェルは、活動内容を以下のように定めました。
・ショートカットの女の子を見つける
・ショートカットの女の子を写真に撮る
・ショートカットの女の子について語る
・真のショートカットについて考え、追い求める
・ショートカットの女の子に似合う服装を考え、実践する
男子にショートカット好きがいるのは分かりますが、ヤチェルのように女子であっても入部は可能です。
もちろん、ショートカットが好きなだけではなく、好きでショートカットにしている女の子の入部も可能です。何故なら、目の保養になるからです。
そして今回、ヤチェルが計画しているのは『蒼空学園内のショートカットの女の子を一人残らず写真に収めること』です。
叶月は無謀だと言って止めようとしましたが、ヤチェルは本気でした。
注意事項
ショートカットは神聖なもの、近代文化の生んだ素晴らしき遺産です。
いくら好みのショートカットを見つけても、触ってはいけません。
いくらショートカットの似合いそうな人を見つけても、無理に髪を切ってはいけません。
人様に迷惑をかけないこと、自分は自分で他人は他人だと割り切ること。
この二つが「ショートカット同好会」における重要なルールです。