百合園女学院

　――天御柱学院、女子寮

「……あと、きゅうぺーぢ……」

　遠藤　寿子（えんどう・ひさこ）は、呪いのように呟きました。
　ここ数日は睡眠時間をギリギリまで削っているので、子供っぽく見える円らな垂れ目の下にはくっきりと隈が出来ています。

「……あと、ごぺーぢ……」

　自ら進捗を確認するように、虚ろな瞳でページ数を数えて喉の奥から絞り出すように呟きますが、ペンを握る手だけは精密機械のように動き続けています。

「……これで……できたぁ！！」
「寿子、部屋を真っ暗にして、スタンドの明かりだけだと目を悪くします……って、ひどい顔、というか、ポラリスの服装のままではありませんか！？」

　すっくと立ち上がってバンザイをすると同時に、パートナーのアイリ・ファンブロウ（あいり・ふぁんぶろう）が寿子の部屋に入ってきました。
　寿子のなりを見て素っ頓狂な声を上げます。
　寿子が同人誌の原稿を描いている時の、睡眠不足や部屋の散らかりようはいつものことなので慣れましたが（片付けているのはアイリです）、今回は更に魔法少女ポラリスの服装のままだったからです。ステッキ代わりの銃も机に立て掛けています。

「魔法少女に変身すると眼鏡が要らなくなるよね。長時間原稿を描いても目が疲れないことに気づいたんだよ〜」
「確かにその発想はなかった！　って、魔法少女の力をレーシックのように扱わないでください！」

　寿子の発想の転換力にアイリは微苦笑しました。

「次のイベントの原稿は間に合ったようですね」
「うん。アイリちゃんの美味しいごはんと、アゾート先輩からもらったインクのお陰だよ〜。このインク、すっごく滑らかで描きやすいんだぁ〜」

　寿子は夏と冬の同人の祭典以外にも、１、２カ月に一度のペースで同人イベントに参加しています。
　「（同人誌との出会いは）一期一会」を座右の銘に持つ彼女は、イベントに参加する時には必ず新刊を発行するようにしています。
　そのため、今回のように結構無茶をする時もしばしあります。
　アイリとパートナー契約してからは、彼女が家事をするようになったので大分改善されましたが。

「今回は他校生の両刀使いイーグリットアサルトと、先輩のブルースロートを出してみたんだぁ。魅力的な先輩の登場に、コームラントとの間で寄れ動くイーグリット、そこに強引に割り込んでイーグリットとブルースロート先輩両方を自分のものにしようとするアサルト、がテーマなんだよぉ〜」
「初の女性型イコンですか。確かにイーグリットアサルトの武装はダブルビームサーベルですが、両刀使いとは……アゾート先輩のインクというのは？」
「うん、この間文化祭のお手伝いをした時にもらった魔法のインクで……」

　寿子が擬人化イコンのことを語る時は、純真な子供のように瞳がキラキラしています。
　その時、寿子が大切に抱えていた原稿が、ぴくぴくと脈動し始めたではありませんか！

「わきゃ！？」
「あうっ！？」

　原稿から目の眩むような閃光が迸りました。

「今の閃光は……」
「嗚呼！？　イーグリットとアサルトとブルースロート先輩が、原稿の中から消えてる！？」

　アイリが光を目で追うと同時に、寿子が悲鳴を上げました。彼女の描いた原稿の中から、人物だけがきれいに消えていたのです。

「アゾート先輩の魔法のインクと魔法少女の力が、原稿の中の擬人化イコンを具現化させた……？　あり得ない話ではありませんが」
「ど、ど、どうしよう〜。このままだと新刊落しちゃうよぉ」
「寿子、気持ちは分かりますが、もう少し事態の心配をしてください。幸い、具現化した擬人化イコン達はそう遠くには行っていないようです。天御柱学院の校舎内、人工海岸といったところでしょうか。他の人達にも手伝ってもらい、手分けして探して原稿の中に戻ってもらいましょう」

　アイリと寿子はそれぞれ携帯電話を取り出すと、仲間に電話やメールをし始めました。

2012年11月13日：追記
「○擬人化イコンの追加」に申請用フォーマットと項目を追加いたしました。


　このシナリオは、寿子の魔法少女ポラリスの力と、アゾートが造ったという魔法のインクの作用によって具現化してしまった、寿子の描いた擬人化イコン達を探して、原稿の中に戻ってもらうが目的です。
　寿子とアイリは知り合い達に連絡していますので、２人から連絡が来た、友達から連絡が来たといった理由や、海京に遊びに来ていて遭遇した、といったシチュエーションなどでご参加いただけます。

　具現化した擬人化イコン達は、説得するか倒せば原稿の中に戻るようです。
　ただ、倒してしまうと原稿にもダメージが行きますので、後で修正が必要になるかもしれません。

○擬人化イコン達
・イーグリット／場所：天御柱学院校舎内
　寿子の同人誌の主人公で美少年。コームラントが恋人ですが、他のイコン達にも狙われています。今回はブルースロート先輩に心を奪われてしまっています。
　武装はイーグリットに準じます。

・イーグリットアサルト／場所：天御柱学院校舎内
　通称アサルト、シニカルな青年。コームラントからイーグリットを奪おうとしていますが、実はブルースロートも狙っています。
　武装はイーグリットアサルトに準じます。

・ブルースロート／場所：人工海岸
　イーグリットやアサルトの先輩で傾国の美女。お淑やかで誰にでも優しく、擬人化イコン達のマドンナ的存在で、イーグリットも思わず心を奪われてしまうくらいです。しかし、既に意中の相手がいるようです。
　武装はブルースロートに準じます。

　それぞれの目的を果たせれば、原稿の中に戻るようです。
　ただ、描写は週刊少年誌に掲載できるレベルですので、ご注意ください。

○擬人化イコンの追加
　魔法少女＋魔法のインクで、擬人化イコンが具現化するようです。
　魔法少女のPCは、擬人化イコンが１アカウントにつき１体追加できます（MC・LC問わず１体のみ）。
　追加する場合は、他の参加者様に分かるよう（アクションを掛けられるよう）、掲示板の方に追加する旨と追加する擬人化イコンの設定を、アクション締切の２日前までに書いてください。
　ただし、追加イコンは３体までとさせていただき、書き込まれた順に使用させていただきます。
　掲示板の書き込みがない場合、追加イコンは採用されませんのでご注意ください。

　擬人化イコンの設定を書き込まれる場合、以下のフォーマットをご使用ください。
　なお、追加された擬人化イコンは書き込まれた設定に基づいてゲームマスターが動かしますのでご了承ください。

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イコン名：
出現場所：
設定：
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※場所は「天御柱学院校舎内」か「人工海岸」のどちらかをお選びください。
※武装は各イコンの初期武装に準じます。

　例えば

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イコン名：イーグリット
出現場所：天御柱学院校舎内
設定：寿子の同人誌の主人公で美少年。コームラントが恋人ですが、他のイコン達にも狙われています。今回はブルースロート先輩に心を奪われてしまっています。
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　となります。寿子の同人誌の中で描かれている擬人化イコンを想定してお書き頂ければと思います。

　寿子の新刊が無事に出せるかどうかは、皆さんのアクション次第です！！

・擬人化イコンを説得する

・擬人化イコンを戦う