タシガン空峡に古くから伝わる秘宝、「ユーフォリア」。
 それを手にした者は、圧倒的な速さで空を飛べるようになるだけでなく、この空で最も権力を持つ者として認められるそうです。
 そして数年ほど前から、そのユーフォリアがただの噂ではなく実在するものだという話が、空賊たちの溜まり場蜜楽酒家で流れるようになりました。
 ユーフォリアに関する手がかりが、未調査だった島戦艦島にあるらしいと聞いた空賊、キャプテン・ヨサーク(きゃぷてん・よさーく)は船員や生徒たちを引き連れ島へと向かいました。
 調査の結果見事ユーフォリアの場所を突き止めたヨサーク。
 どうやらユーフォリアは、幾多の気流に阻まれて通常では辿り着くことの出来ない雲の中を旋回しているようです。
 しかし、それを知ったのは同じく島に来ていた一匹狼の女義賊、フリューネ・ロスヴァイセ(ふりゅーね・ろすう゛ぁいせ)と空賊狩りをしていた十二星華のひとり、獅子座(アルギエバ)のセイニィも一緒でした。
 彼女たちも、それぞれ理由は違えどユーフォリアを狙っていたのです。
 圧倒的な力を持つセイニィの前に、生徒たちだけでなくヨサーク、フリューネもやられてしまいました。
 そしてセイニィは、ユーフォリアが漂っている雲へと向かって去ってしまったのです。
 しかし、すぐにユーフォリアをとられる心配はありませんでした。
 なぜなら、雲の中にある谷状の空洞、そこへ通じる気流に乗れるのは満月の時だけと描かれていたからです。
 つまり、満月の夜が来るまではセイニィも、ユーフォリア通過地点まで行くことが出来なかったのです。
 そして、戦艦島での戦いから1週間後。
 ついに満月の夜が来ました。
 再び強引に生徒たちを集め、戦力を整えなおしたヨサークは満を持して現れた気流に乗り、雲隠れの谷へと辿り着きました。
 フリューネもまた同じように、数キロほど離れたところに陣取りヨサークと対峙する形でユーフォリアが通るのを待っていました。
 彼らがいる雲隠れの谷は、時折ヨサークのいる北側からフリューネのいる南側に向かい突風が吹きつけ、眼前には雲で形成された3つの谷があります。
 このうち中央の谷を、ユーフォリアは風に乗るようにして1日数回のタイミングでその姿を現すようです。
 ヨサークがユーフォリアを手に入れるための条件はふたつ。
 目の前のフリューネたちを3ルートから攻め、倒すことでユーフォリア通過ポイントであるこの場所を制圧・占拠すること。
 おそらく途中で襲ってくるであろうセイニィからその場所を守ること。
 ヨサークは、改めてユーフォリアに対する思いを反芻しました。
「権力だ、権力さえあれば、農民があんなつれえ思いをしなくて済むはずなんだ。そして、俺がユーフォリアを手に入れられれば、この空だって前みてえに楽しい空に戻るはずなんだ」
 彼は少しの間閉じていた目を開くと、周りにいる船員や生徒たち、そして離れたところで対峙しているフリューネたちに向かい大声をあげました。
「おめえら、今回は今までで一番でっけえ作物だ! 気合い入れて収穫すんぞ! Yosark working on kill!」 
「Hey,Hey,Ho!」