百合園女学院

　ツァンダ東の森の中――獣人たちが暮らす『クオルヴェルの集落』でのこと。

「ぜぇ〜〜〜〜〜ったい！　いやっ！」
　集落の若長であるアールド・クオルヴェルの娘、リーズ・クオルヴェルは、憤慨した様子で父に向かって吠えました。
　と、いうのも……。
「お見合いなんて、私は絶対にしないからねっ！」
　父親に呼び出されて何かと思えば、一年に一回は必ず言われる、恋愛のお小言だったのです。
　父のアールド・クオルヴェルは、扱いに困ったような苦しい顔で娘に進言しました。
「なにも今すぐ結婚しろというわけではない」
「じゃあ、なんでお見合いなんて言い出すのよ！」
「お前ももう年頃の娘だろう？　それだというのに、ことがあれば狩りに剣舞に武道に……浮ついた噂一つありもせんではないか」
「そんなの、私の勝手でしょうっ！」
　嘆かわしそうに言う父に、リーズはふんと顔をそっぽ向けます。
「別にそれをとやかく言うつもりはない。しかし、お前は私の娘であり、将来この集落を背負って立つ身なのだぞ。恋の一つも出来んでどうするつもりだ」
「べ、別にそんなこと、父さんに心配される必要ないわよっ！」
　恋愛について突かれたせいか、リーズは顔を赤く染めて怒鳴りました。
「と・に・か・くっ！　私はお見合いなんてするつもりもないし、恋愛なんてしなくても十分幸せに生きていけるのっ！　余計なことしないでくれる！」
　ドス、ドス、と地を蹴るようにして、リーズは怒りの形相のまま部屋を出て行きました。
　毎年、この繰り返しです。
　アールドも、さすがに参ったようにため息をこぼします。
「ふふ……あの娘らしいわね」
　そんな夫に、妻であるリベル・クオルヴェルはお茶を差し出します。
　彼女は夫に反し、気に留めていない様子で笑みをこぼしていました。
「お前も笑っている場合ではないぞ。このままだと、あの娘はいつまでもあの調子だ。少しは恋愛に興味を持ってくれるといいのだが……」
「そうね……確かに、このままだと少し困るかもしれないわ」
　リベルは、若長の妻――というよりは、一人の娘を持つ母親の顔で考え込みます。
「あの娘には、恋愛の楽しさや、胸の高鳴り、苦しさも、優しさも……知ってほしい」
「そうだな……。だからこそ、お見合いでもさせようかと思ったのだが……コレだ」
　先ほどのやりとりを指して、アールドは再びため息をつきました。
　娘のことに悩む父親がどこか可愛らしく、リベルはくすっと笑いました。
「あんなやり方だと、それこそ反発するだけよ。あの年頃の娘は、父親に言われるのなんて、一番嫌なんだから」
「しかしだな……」
「大丈夫……私に任せてくれないかしら？」
「お前に……？」
　アールドは、妻のなにか悪戯めいたものを思いついた顔を怪訝そうに見つめました。
「名づけて、ラブラブを見せつけろ！　集落パーティ大作戦！　よ♪」
　アールドの目には、ワクワクしたよう言う妻が、どう考えても自分が楽しんでいるようにしか見えなかったのでした。

　『クオルヴェルの集落』でナイトパーティが開かれます。
　そこで、各地へはナイトパーティについて記されたチラシがたくさん配られることに。
　ご興味のある方は、ぜひぜひふるってご参加ください！

初めましての方は初めまして。
そうでない方はお世話になっております。
コーヒーの飲みすぎで友人から胃が荒れてるんじゃないかと心配されるＭＳ、夜光ヤナギです。

【内容補足】
今回のシナリオは、当方初の恋愛ジャンルになっております。
ＮＰＣは過去に登場した人物ですが、続編というわけではありません。
初参加の方もお気軽にご参加くださいませ。

●ナイトパーティについて
その名の通り、夜に行われる集落全体でのパーティです。
ステージを使った演劇、コンテストから数々の出店、巨大テーブルを囲んだ立食会、様々なイベントの催し物などが予定されています（恋愛関係イベント多数）。
そのため、集落の獣人たち以外にも各地からスタッフを募っています。
また、今回のナイトパーティの真意は、リーズ・クオルヴェルにラブラブを見せつけるなどして、彼女に恋愛意欲を与えることにあります。
その目的は一部の人にしか伝えられていませんので、自分が目的を知っているか知らないかの設定は自由です。

●ＮＰＣについて
・リーズ・クオルヴェル
集落の若長アールド・クオルヴェルの一人娘。
気が強く父親に似て頑固ではあるがが、純粋で繊細な一面も持ち合わせている。
特に恋愛事は嫌いというよりは「疎い」に近い。

※今回のシナリオはＮＰＣへの恋愛意欲を煽ることに目的がありますので、獣人ＮＰＣが譲渡されないことはご了承ください。しかし、今後関係を深めていくことによってその可能性がないということではございません。
※以上はアクションを考える上での参考情報です。あくまで参考となるものなので、必ずしもＭＣやＬＣ自体がそれを知っている前提でなければならない、ということはありませんのでご安心下さい。（もちろん、周知を前提にされても結構です）

・カップルでパーティに参加する

・スタッフとしてパーティに参加する

・ナンパに奮闘する！

・一人だって参加する！