百合園女学院

　ヴァイシャリーのとある館。

　ある高名な貴族の所有する広大な館の広間には、大勢の男女が集まっています。
　部屋の中央に用意された、食欲をそそる料理やワインに舌鼓を打ちながら、男女は笑顔を浮かべています。

　他学校の生徒を交えた親睦のパーティー……とは名ばかりの合コン。

　男女は皆、それぞれ気に入った相手を探し、時より下心を覗かせて、参加者たちと談笑しています。

「……生憎の天気ですわね」
「ホントですね。こんな時に限って嵐なんて」

　そう言って、お嬢様風の生徒と、参加者の男性が外を見つめています。窓の向こうでは、音を立てて豪雨が降っていました。

「こんな嵐がくると、……ついあの人のことを思い出しますわ」
「え？　あの人って？」
「……なんでもありませんわ。それより知ってます？　嵐じゃなければ、このパーティーも屋外でやるはずだったらしいですわよ？」

　女性の参加者がそう話を振ってきます。
　男性もさほど気にした様子を見せず、女性の言葉に相槌を打ちました。

「へー、そうなんですか？　まったく、嵐にも困ったものですね……まあ、こんな美人たち囲まれてるだけで、俺は幸せですけど」
「あら、お上手ですわ。うふふっ」

　そう言って、男女たちは笑っています。
　楽しげな宴……だがしかし、

「きゃあああっ！」

　そこへ突如、女性の悲鳴が響きました。
　参加者全員が声のしたほうを向きます。
　全員の視線の先には、……今までいなかった大男の姿がありました。
　二メートルを超える長身。
　ボロボロでびっしょりと濡れた黒い服。
　手には古びたカルスノウトを握り、顔には表情のない仮面がつけられています。
　大男は荒い息をあげながら、参加者の女性の手を無理やり掴んでいました。

「お、おい！　なにしてんだ！」

　捕まれた女性の近くにいた男が、大男に近づきます。だが、大男は剣を振るい、近づけさせようとしません。

「このっ！」

　――ガシャンッ！

「きゃっ！」

　別の参加者が、大男の背後から近づき、大男の後頭部に、置物の壷を叩きつけました。

　強烈な一撃で、大男はバタンと倒れました。その首元には、砕けた壷の破片が突き刺さり、大量の血が噴き出してします。

「ちょ、ちょっと！　やりすぎよ！　殺すつもり?!」
「し、仕方ねえだろ！　武器も何もなかったんだから！」

　参加者たちがざわめいているその時です。

「…………」

　ムクッと大男の身体が起き上がりました。
　誰もが『えっ』と心の中で声をあげ、立ち上がった大男を見つめます。

　大男は何事もなかったかのように、首元に突き刺さった花瓶の欠片を引き抜きました。
　五センチ以上、深々と突き刺さった破片を投げ捨てます。
　破片が音を立てて床に落ちるのと、参加者女性の悲鳴が上がるのは、ほぼ同時でした。

「……き、きゃああああああっ！」

　我先にと、参加者たちは一斉に逃げ出しました。その後ろを、大男はゆっくりと追いかけてきます。

　……恐怖の宴の始まりです。

　どうも皆様、新人マスターの海原三吾です。初めましての方は初めまして。「キャラクエで名前見たことあるぞ！」っていうレアな方、愛してます。

　さて、今回のお話はホラー＆バトルです。
　謎の不死身の怪物から、いかようにして逃げる、またはどう怪物を撃退するのかを楽しむお話となっています。

　皆様は、とあるヴァイシャリーの貴族が余興で開催した親睦パーティー（合コン）に呼ばれた参加者たちです。
　現在、館の周囲には、とても激しい嵐がきており、脱出することはできません。よって皆様の行動範囲は、館内と限定させていただきます（携帯で外部と連絡を取ることは可。ただし、外部からの助けは入らないものとお考えください）。

　パーティーだったので、現在皆様は装備している武器を持ってきていない状態だと考えてください。
　さらに、館の防犯対策として、館内では攻撃系のスキルが使えません。
　つまり皆様は、武器も攻撃スキルも使えない状態で、不死の怪物を相手取らなければなりません。
　館にある壷や置物を自由に使って、撃退することは可能です。が、怪物は倒しても倒しても、数分で復活します。

　そして怪物は神出鬼没です。動き自体は緩慢ですが、どこにでも現れます。
　何かの物陰に隠れても、背後から出現などありますので、ご注意を。

　さらに怪物はどうやら、百合園女学院のお嬢様を狙って追いかけてくるようです。
　そして、追いかけられたお嬢様方の何人かは、怪物に対して恐怖以外の感情を抱いている様子が見られます。何か怪物について知っているようです。そのあたりが、怪物の謎を解く鍵になるでしょう。
　女学院所属のお嬢様方は、優先的に怪物から追いかけられることとなります。
　その他の男性方は、率先して狙われている女性たちを助けてあげましょう。

　それでは、皆様のご健闘を祈ります。

・怪物の撃退

・怪物の正体を探る

・襲われる女子生徒の警護