百合園女学院

　ツァンダ南、高山麓の村。
　周辺の遺跡を探索するために、高山の中にいるという氷精に会うために、はたまた周辺の魔獣と腕試しをするためになど、さまざまな思惑でこの村は契約者たちのベースキャンプの代わりとして発展していました。
　そんな村ですが、年に一度この村に封印されている剣の封印強化の儀式が行われます。
　有力な術者を呼び、封印を強化する儀式の代表は、まだ十代の少女でした。
　十代の少女、しかも新米の術師ですが、その力はこの村の村長を唸らせるものがあります。
　そして、少女――ミルファ・リゼリィ以外の術者は何かあったときのためのサポートとして、その場に留まるように村長から言われていました。
　厳重な封印の術式が込められた小屋の扉がぎいっと音を立てて開きます。
　ミルファが緊張した面持ちで小屋の中へ入ります。

「ただいまより、封印強化の儀式を執り行います……」

　震えた声でミルファはそういいました。
　そして一歩、足を踏み入れると、

　――ねえ、壊そう？

　突然声が聞こえました。

「な、何？」

　ミルファの目の前には厳重に封印の術式を纏った一振りの剣があります。
　とても美しい、白銀に輝く両刃の剣でした。
　しかし、その剣はまるで全てを呪うかのような怨念が渦巻いています。
　声はそこから聞こえていました。
　ミルファは驚いたように辺りを見回しましました。

　――ボクが正しかったって事『証明』しよう。だから、壊そう？

　声はミルファに囁きかけました。何度も何度も、壊そう、と。ボクの考えが正しかったことを証明させて、と。
　呪われし怨嗟の声はミルファの体を乗っ取ろうとしています。
　有力な術師でしたが、まだまだ新米のミルファはあっさりとその声に魅入られてしまいました。
　彼女のお人良しの部分が災いしてしまったのでしょう。

「……うん、壊そっか」

　声に魅入られたミルファは、剣を手に取りそういいました。
　辺りには黒い霧のようなものが立ち込めます。
　無造作に振るった剣は綺麗な弧を描き、剣が封印されていた小屋を壊しました。

「ねえ、あなたたちも壊しましょう？」

　にっこりと無邪気な笑みを浮かべるミルファは、同行していた人たちにゆっくりと言いました。
　その笑み、その誘いには魅了の術式が込められています。
　魅了の術式に惑わされた数人がふらふらとミルファに従いました。

　　　　　†――†

　村には既に被害が出始めていました。
　村長が搾り出すような声で言います。

「封印結界を……起動する」

　その決断に一人の男――ガレイ・ニールが食い下がりました。

「結界範囲内の住人はどうするんですか……！」
「起動までの猶予はある。それまでに逃げ出せなければ……見捨てるだけだ」

　村長はガレイから目を逸らしながら吐き捨てるようにいいました。

「分かりました。俺があの子を引き付けます。それまでに避難を済ませて起動してください」

　決意を露にしたガレイは武器を手にミルファの後を追いかけようとしました。

「お主、自分の命が惜しくないのか……」
「俺一人だけじゃない」

　ガレイは後ろを見ていいました。
　ガレイに賛同するように、パートナーが魅入られた契約者たちがいました。武器を手にミルファを追う決意をしています。
　村長はミルファを追っていくガレイたちに言います。

「封印結界が起動したら、うかつにミルファ殿には近寄らないことだ。
　結界はあの剣の所持者以外の能力を半減させ、ヒールや、危険を察知する力の効力を発揮できなくなるらしい……。
　それと、ミルファ殿を結界内にある、３つの玉石（ぎょくせき）にだけは絶対近づけてはならぬ。
　要の玉石を破壊されれば、村はおろかここら一体は荒地になるだろう……。
　私に伝わっている封印結界と剣の関係はそれだけだ。村の資料を調べればそれ以上の情報は得られると思うが……」

　村長の言葉に力強さはありません。どうやら、封印結界と剣の関係にはこれ以上に何か秘密がありそうです。

　初めまして、またはお久しぶりです。来宮悠里です。
　前後編の前編、主に調査を目的としたシナリオをお届けいたします。
　参加動機は近くにいた、ミルファと同じ依頼をうけていた、ガレイに呼び出されたなど、無理のない範囲で構いません。
　もちろんどの学校の生徒でも参加することができます。
　今回のシナリオはガイドだけでは分かりにくい部分があるかと思いますので、マスターコメントで補足を行います。

　シナリオの目的は３点です。今回のシナリオを成功させるためにはある程度の人数の協力が必要不可欠になっております。

　・玉石の調査をする。
　・剣の調査をする。
　・ミルファを追う。

　まず、玉石の調査についての補足になります。　
　玉石は色別に三種類あり、それぞれ情報を集めきるためにはある程度の人数が必要です。。
　種類は、赫玉石（かくぎょくせき）、翠玉石（すいぎょくせき）、蒼玉石（そうぎょくせき）の三種です。
　参加者の皆様で玉石の調査をされる方はこの中から一種類をお選びください。
　調査方法はアクション次第になります。

　漠然としすぎていますね。指針としては、書物を調べる、村内をくまなく調べるなどがあります。
　調査では断片的な情報しか集まらないかもしれません。
　でも各々の調査次第ではパズルのピースのように組み合わさりしっかりとした一つの情報になるかもしれません。
　玉石の調査で集まる情報は、玉石の守護者の情報、玉石の守護者の倒し方、封印結界の詳細な効果、封印結界の生まれた背景になります。
　後編へと直接かかわりのある調査部分になります。


　次に、剣の調査についての補足です。
　こちらも玉石と同じように情報を集めきるためにはある程度の人数が必要です。
　剣の生まれた経緯、封印結界との関連性、封印結界の開発者について。今回の舞台やガイド中の証明についての話が紐解かれる部分です。
　物語を彩るバックグラウンドを知りたい方向けの調査部分になります。　


　最後に、ミルファを追うについての補足です。
　こちらの参加動機はどちらかになります。

　・ＬＣがミルファに魅入られたので、ＬＣを正気に戻すためにミルファを追う。
　・ミルファに破壊行為をさせたくないがために、ミルファを止めに行く。

　封印結界は既に起動しています。
　怨念に取り憑かれたミルファの放った魅了の術式により、ＬＣが魅了されたということにしても構いません。
　ただし、ＬＣが魅了されたと言うアクションを送る場合、ＭＣは必ずミルファを追うようにしてください。パートナーですからしっかりと助けてあげてください。
　魅了されたＬＣはミルファの近くにいます。
　そして、ＬＣはＭＣを見つけると問答無用で襲いかかります。言葉には耳を傾けてくれるかもしれませんが、話しはできないとお考えください。

　ミルファは封印結界を壊すため、玉石の破壊に向かいます。
　後者を選んだ方は、ミルファが玉石の元へ向かわないように抑えてください。
　剣に取り憑かれたミルファは、メイガスまでの魔法と、フェイタルリーパーまでの剣技を扱います。
　そしてミルファには封印結界の効果が及んびません。剣の怨念によって能力が飛躍的に向上しています。


　こちらから先はプレイヤー情報になります。ＭＣやＬＣはこれらの情報を一切知りません。
　装備アイテムの、ＰＣ、敵に影響を与える効果の一切が無効になります。
　封印結界の中に入りますと、外に出ることができなくなります。
　封印結界の中では、レベル、ＨＰ、ＳＰ、攻撃力、魔法攻撃力、防御力、魔法防御力が一律で半減されます。小数点以下は切り上げます。
　レベル制限のある武器防具は、武装欄に装備した状態で封印結界内に入ったのであれば使用することは可能です。
　さらに、スキルの
「ヒール」「キュアポイゾン」「リカバリ」「リザレクション」「ナーシング」「アリスキッス」「ＳＰリチャージ」「獣医の心得」「驚きの歌」「グレーターヒール」「メイドインヘブン」「清浄化」「命のうねり」「聖霊の力」「復活」「メジャーヒール」「石を肉に」「大地の祝福」「命の息吹」「虹色スイーツ≧∀≦」「オープンユアハート▽」「苗床」「龍玉の癒し」「治療」「蘇生術」「歴戦の回復術」「激励」「超人的肉体」「超人的精神」「我は与う月の腕輪」「我は紡ぐ地の讃頌」「完全回復」「呪詛祓い」「晩餐の準備」
　は効果を発揮できません。
「妖精のチアリング」「錬気」「セルフモニタリング」「記憶術」「サクリファイス」「武医同術」はＨＰＳＰ回復、状態異常回復の効果が発揮できません。サクリファイスの回復効果は発揮できませんが、使用者臨死の効果は有効になります。その他の効果は有効です。
　また、スキルの
「女王の加護」「ディテクトエビル」「超感覚」「殺気看破」「イナンナの加護」「人の心、草の心」も効力は発揮できません。
　ミルファは傷を負っても一瞬で回復します。


　今回登場するＮＰＣについて。

　ミルファ・リゼリィ
　十代の女の子。新米の術師だが、クラスはメイガス。能力があり驕ることもないが、話に耳を傾けすぎる気質がある。

　ガレイ・ニール
　いつぞやの氷屋のおじさんの本名。アイスのシーズンも過ぎ地元の村に戻っていたところで今回のことに巻き込まれた。

　村長
　三十台半ば、能力を買われ村長になったが、伝えられたのは封印結界の起動方法のみ。それ以外の情報はまったくと言っていいほど伝えられていない。封印結界は非常時には遠慮せず使えと受け継がれている。

　アクションの内容は漠然としたものから具体的な内容まで多岐に渡るかと予想されます。
　このシナリオではやることがたくさんありますが、取捨選択を頑張ってください。
　そして、ミルファとの戦いはとても不利な状況下で行われるものです。今は負けてしまっても仕方はありません。
　皆様のご参加をお待ちしております。

・玉石について調べる。

・剣の調査をする。

・ミルファを追う。

・パートナーが魅入られてしまった。