その日、オープン前のホラーハウスは騒然としていました。
「おい、いたか?」
「いや、まだ見つからない……」
空京に新しく登場した巨大ホラーハウス『ラビュリントス』は、その名の通り一日中出られなくなるほどに複雑な構造となっており、存分に恐怖を楽しめるとあってカップルを中心に大変評判になっています。
死角から機晶ロボが飛び出してきたり、突然足首を掴んできたり、定番の仕掛けもさることながら、ほかのホラーハウスでは味わえないとっておきのギミックも人気の要因となっています。
なんと、ゴールイベントとして本物のミノタウロスを倒すことができるのです。
もちろん実際に戦うわけではなく、来場者の安全も万全に配慮されています。
が……。
「出入り口は完全に閉鎖した。『ラビュリントス』の中に必ずヤツはいるはずなんだ」
「でも誰がミノタウロスを開放したんだ?」
「分からん。あいつじゃないか? よくスタッフルームにちょっかい出しにくる幽霊」
「まさか……」
どうやら何者かがミノタウロスを『ラビュリントス』に解き放ったようです。
その犯人を突き止めない限り、また同じことが起こってしまうでしょう。
「制御コンピュータは直りそうなのか?」
「直るわけないだろう。物理的にぶっ壊れてるんだ」
ミノタウロスの被害は既に及んでおり、おばけ役の機晶ロボの管制コンピュータが損傷したために、機晶ロボが暴走してしまっているのです。
「……なぁ。正直な気持ちを言っていいか」
「なんだ」
「……俺たちにミノタウロスを捕縛することができるのだろうか」
「…………」
「…………」
「……無理だな」
「……無理だろ?」
「こういうときこそ、我らの誇りである学生諸君に力を借りるべきだな」
「だな。よし、早速依頼を出すか」
その日、オープン以来初めての休業日のホラーハウス『ラビュリントス』の前に、学生の面々が立ち並びます。
彼ら彼女らはホラーハウスの窮地を救えるのでしょうか。