百合園女学院

　ヴァイシャリー近郊にある、広々とした農地。
　豊かな黒土に恵まれたその畑を、上園　エリス（かみぞの・えりす）がご機嫌で歩いていました。

　　種を蒔きましょ、綺麗な種をー♪

　歌いながら、小さな袋から種をうねに蒔いていきます。
　虹色。オレンジ。金ぴか。蛍光色。およそ普通の種からはかけ離れた配色でした。
　これは、エリスが特製の魔法鍋で合成した、新種の植物の種なのです。
　あらかた蒔き終わると、お付きのメイドが丸い壺をエリスに渡しました。
「それっ！」
　エリスは壺を勢いよく振り、中の魔法薬を種にかけます。
　これもエリス特製の魔法薬。なんと野菜を一日で生長させてしまう優れ物です。


　準備は万端。
　エリスは白木の杖を握り、うねの周りをうろつきながらヘンテコな踊りを舞い始めます。

　　早く育ってお野菜さん♪　フルーツさん♪　早くしないと食べちゃうぞ♪

「……お嬢様。その踊りは絶対に必要なのですか？」
　主人の奇行を見かねたメイドが思わず尋ねます。
「必要なのー！　これがないと魔法が完成しないんだもーん」
　エリスは言い張って踊り続けます。
　それに応えるかのように、地面からぴょこりと芽が生え出ました。
　茎が伸び、葉が広がり、みるみるうちに大きくなっていきます。
「わーい！　やったやったぁ！　成功だよっ！」
　エリスが大喜びで跳びはねた、そのとき。

　遠くから地響きが近づいてきました。
　オーク。ジャイアントアント。パラミタ猪。強盗鳥。野山にいたモンスターや獣たちが、不思議な野菜の魔力に惹かれて押し寄せてきたのです。
「きゃーっ！　きゃーっ！　きゃーっ！」
　大群に宙に跳ね飛ばされ、何度もバウンドしてなかなか地面に降りられないエリス。
「お嬢様ーっ！」
　助けに入ろうとするも、無残にも踏み潰されるメイドたち。
　たちまち作物は食い荒らされ、大群が去った後には穴だらけの畑と、ボロボロになったエリスやメイドたちだけが残されました。


「お嬢様……、この農法は危険すぎます。もうやめましょう」
「い、や！　世界一美味しい、苦くないお野菜を作るんだもん！」
　頑として言い張るエリス。いいことを思いついて手を叩きます。
「そだっ！　お野菜育ててるあいだ、守ってくれる人がいればいいの！　うんうん！　作ったお野菜をあげれば、お礼にもなるよね！」


　そんなわけで。
　マジカルノーカの人手を募集するこんな求人が、シャンバラのあちこちに発信されることになったのです。


　　　　　　　　　　　　　　【マジカルノーカ人手募集！】

　　　　　　　　・植物の合成、畑仕事を手伝ってくれる人！　…………たくさん！

　　　　　　　　・植物が育つまでのあいだ、畑を守ってくれる人！　…………たくさん！

　　　　　　　　　　資格不問、お給料いっぱい、美味しいお野菜も食べれるよ！

ようやく春がやってきましたね。ゲームマスターの天乃聖樹です。
今回もよろしくお願いいたします。


【植物の合成について】

エリスが貸し出す特製の魔法鍋に二種類の植物を入れると、誰でも自在に遺伝子組換えをして、タネを作ることができます。
魔法なので、結構無茶な合成も可。動物×植物や、無生物×植物などもできますが、植物なしではできません。


【マジカル農法について】

収穫までに必要な時間は日の出から日没まで。八時間ほどです。

かなり高価な魔法薬を使うため採算は取れませんが、魔法薬はエリスが無償で提供してくれます。

遺伝子組換え作物が自然界に拡散する危険を防ぐため、育った作物に種はできないようになっています。作物自体も深夜になると枯れてしまいます。なので環境への影響は心配せず、好きな作物を作って問題ありません。


【襲撃について】

マジカル野菜の魔力に夢中になり、モンスターも獣たちも凶暴化しています。
どんな方法を使って撃退しても構いませんが、畑に影響が及ぶと作業が進まなくなります。

近くの山には野菜が大好きな巨大ミミズが潜んでおり、エリスの畑に興味津々です。
全長十メートル、幅八十センチはあり、体の表面は固い殻で覆われています。口からは強力な毒を吐きます。
畑に到達された場合は甚大な被害が生じるでしょう。


それでは、皆様の素敵なアクションをお待ちしています。

・植物を合成する

・畑を守る

・料理する