「何が起こっているんだ……?」
「先日の龍騎士、ですか?」
先日、自らを狙ってきた龍騎士を仲間たちとともに倒したソフィア・アントニヌス。
その後龍騎士の遺留品から、ソフィアの祖国であるエリュシオンのペルム地方に属していた者だと判明したのです。
「ピウス」
「はっ」
「私も大分学院に慣れた。友人も、有事の際に力を貸してくれる仲間たちもいる。少しの間一人になっても問題ない。そなたは一度、国の様子を見てきてくれないか?」
「承知いたしました。私が不在の間、くれぐれもご無理はなさいませんよう」
「恐らく大丈夫だ」
ピウスは、ソフィアの百合園女学院入学の手続きを行い、入学の際に共にヴァイシャリーに付いてきた部下でした。
すぐさま準備を整えると、その日のうちにエリュシオンに向かって旅立っていきました。
それから数日。
戻ってきたピウスの顔は青ざめていました。
「どうした!?」
「ソフィア様、実はオリカ様が……」
「母上が!?」
ピウスは、ペルム地方でクーデターが起こったことを伝えました。
ソフィアの母オリカが、造反した龍騎士に捕えられ幽閉されてしまい、父親も配下の龍騎士を動かすことができず、造反龍騎士優勢のまま、事態が膠着していたのです。
「なるほど、それで連絡もなかったわけか……母上はどこに?」
「恐らく、幽霊城に」
「あの薄暗い天然城塞か……すぐに向かうぞ!」
「ソフィア様!?」
「母上をお助けする。そして父上や母上と共に造反龍騎士を倒さなければ、国も荒れる。皆が苦しむことになるなど許せん」
「おひとりで向かわれるおつもりですか!!」
「い、いや、そなたと二人でだな……」
勢い込んで武器の準備をするソフィアでしたが、ピウスの怒鳴り声にたじたじと3歩後ろに下がりました。
「貴方の強さは存じております。しかし、相手はあのオリカ様を抑えた相手です。人数も把握できておりません。無謀です」
「敵が本当に強いのか、あるいは相当に卑怯か……」
諭すように話すピウスの言葉に、ソフィアは冷静になり思考を巡らせました。
「……皆には本当に、迷惑をかけてばかりだな……」
散々悩んだ挙句、ソフィアは仲間たちに助けを求めることにしたのです。
ソフィアからの緊急の打診に、学院はすぐに動いてくれました。
他校含め、秘密裏に仲間を募ったのです。
「まずは敵の詳細を探るところから、だな……」
仲間たちの到着を待ちながら、ソフィアは低く呟きました。