百合園女学院

　シャンバラ政府はゴダート・グリーンベルトがヒトガタを光条世界に引き渡すことで地球の滅びを食い止めようと逃走した件を伝え、彼の行動について地球側に釈明を求めました。それに対し、地球側の国際ニルヴァーナ調査機関は、その件についてはゴダートの独断による行動であり、国際ニルヴァーナ調査機関は一切関与していなかったこと、こちらとしてもその独走に驚き、困惑していることを強調し、彼の処遇についてはシャンバラ政府に一任することを伝えてきました。今までゴダートの後ろ盾となっていた者たちは、一気に不利な情勢になったことを察知し、あっさりと彼を切り捨てたのでした。
　ゴダートは今までの傲慢不遜なところがすべて消えうせ、一気に老け込んでしまったようでした。自分のやり方、強気に進めば何とかなると思い、そしてまた根底にある自信のなさから常に人の上にいなくてはバカにされ取るに足らないと思われる……そんな思いが露わになり、自己嫌悪に陥ったのです。国際ニルヴァーナ調査機関の話を聞いたゴダートの感想は次のようなものでした。
「……そうか……まあ、そんなものなのだろうな。……御用済み、ということだな。
　光条世界にちょっかいを出したらもう滅びは決まったようなものだ。
　ああ、もう、煮るなり焼くなり好きにすればいいさ……」
悪意があってのことではなかったという点と、今までの功績を鑑み、シャンバラ政府はゴダートを１年間は保護観察とし、反省が十分であれば罪に問わないという判断を下しました。

　一方、ゴダートの護衛の白髪の少女たちは病院で最新の治療を受け、ようやく感情や本来の個性、姿を取り戻しつつありました。ですが薬により若い体組織をムリに維持していた彼女たちは、本来の年齢――外見よりも年上です――に戻り、コントロールされていたころの記憶すらも断片的にしかないため、１０代からいきなり数年から１０年の時を一気に飛び越したような状態となり、精神的な苦悩のときが続いていました。

・アルファは赤毛の浅黒い肌の２５歳の女性で、本名をリナといい、活発で大雑把な少年的な性格の持ち主です。ゲームで遊んだり、水泳や乗馬などもしていたようです。

・ベータは本名をレーネといい、漆黒の髪に色の白い理性的な３２歳の女性。読書や自然を愛し、温厚で温和な性格です。

・ガンマは本名をフランセスという金髪の２２歳の女性。本来は好奇心旺盛なショッピングやファッション、甘いものの好きなごく普通の学生でした。

ですが今はその心は空白の年月とともに寂しさと悲しさ、これから自分たちはどうなるのか、という不安でいっぱいになっています。３人はコントロールが解け、『人形』ではなくなったため、各々性格も好みも個性も違いますので、現在一人ずつ別々の家屋に住んでいます。

　
　そんな彼―彼女らを、アクリト・シーカー（あくりと・しーかー）は静養が必要であると判断し、赤い湖の水底にあるスポーンたちの町の一角に、おのおのの世話をするスポーン数人をつけてしばらく住まわせることにしました。しかしスポーンたちだけでは、人間性を取り戻し、心の傷を癒す手助けは限られてしまいます。
「アノ人たちを癒す手助けをしたイ。なぜかはわからなイが、見ていると私も苦しいのダ」
ゴダートらが移住してから数週間後、元インテグラル・クイーンであったレナトゥスがアクリトに訴えかけてきました。最近常に彼女のそばにいて、パートナー的存在となっているアピスも頷いています。
「ワタシモ、ソレガ必要ナ事ダト思ウ。レナトゥスニトッテモ、アノ人ラニトッテモ……ワタシタチスベテニトッテ」
「僕も似たような境遇だし、やはり気になるね……」
アラム・シューニャが半ば翳のような自分の姿を見つめながら言いました。
「なんとか力になってあげたいわ……」
ルシア・ミュー・アルテミス（るしあ・みゅーあるてみす）はそれを聞いて夏來　香菜（なつき・かな）に言いました。
「長い間関わってきたのだし、もちろん何とかしなくっちゃ！」
「そうだな、そろそろ他人との交流を持ったほうがいいだろうな……」
アクリトが考え深げに返答しました。何か深く思うところがあるのか、アピスとアラムをじっと見つめながら……。

　こんにちは、鷺沼　聖子（さぎぬま　せいこ）です。冷え込む日が続いていますし、皆様風邪など引かれないようどうか十分気をつけてくださいね。

このシナリオには学校による差はなく、またグランドシナリオやキャンペーンシナリオに参加したことがなくとも、噂に聞いた、友人からどういうことがあったか聞いているなどの設定でどなたでも参加していただけます。

このシナリオでできることは……。

・護衛の少女にアクションをかける。
・ゴダートにアクションをかける。
・また、アピス、レナトゥス、アラムをはじめ、香菜やルシア、もそのことに大きな関心を持っていますから、彼らを誘って共に行動したり、あるいは彼らと個々にじっくり話し合うこともできます。
・アクリトに話を聞いてみることもできます。
・スポーンの街が舞台ですので、単に観光にいらしてももちろんかまいません。


次に行動範囲です。

・スポーンたちの街。空京の街に似て、ショッピングや公園の散策、ゲームセンターで遊んだりできます。
・湖の湖畔。大半は岩山なのですが、なだらかな草原が広がる場があり、そこでは美しい野の草花などが花をつけており、ピクニックにもってこいです。その奥に小さな林もあります。

皆さんの行動の結果で、ゴダートとリナ、レーネ、フランセスの心を開かせることができるかもしれません。アラムやアピス、レナトゥス、スポーンたちの何かもまた、変わってくるかもしれません。
どうぞ、彼らに―彼女らに、働きかけてみてあげてください！

・あんなに傲慢だったのに、へこんだ姿はなんなんだ？

・公園を散策しながら人の心について話をしたい。

・ちょっと高級なバーで、カクテルを飲みながらお話しましょっ。

・湖畔に誘って野原を散策しながら話そうか。