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嘆きの邂逅(最終回/全6回)

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シナリオガイド

決断の時、未来を決めろ!
シナリオ名:嘆きの邂逅(最終回/全6回) / 担当マスター: 川岸満里亜

「分かりました。……以前教えていただいた拠点に、キメラが数匹向ったとの情報も入っています。もし……手が空きましたら、そちらにもお力を貸していただけないでしょうか」
 ラズィーヤ・ヴァイシャリー(らずぃーや・う゛ぁいしゃりー)のその言葉に、携帯電話の先からくすりと軽い息が響いてきました。
『これまでは、こちらの報告を聞くだけでしたが。貴女が私に頼みごとですか?』
「……ええ、頼りにしていますもの」
 軽く目を伏せて、ラズィーヤはそう言いました。
『随分切羽詰っているようですね』
 いつもとは違うラズィーヤの反応に、電話の相手朱 黎明(しゅ・れいめい)は、彼女から余裕が消えていることに気付きます。
『貴女はしかめっ面よりも笑顔の方が素敵だ』
 そんな黎明の言葉に、ラズィーヤはいつものように「笑顔をお見せできるよう、素敵な報告を期待いたしますわ」と返して、軽く微笑みながら電話を切りました。
「離宮の状況は依然悪いようですが、ご指示などありますか?」
 菓子と茶をトレーに乗せて、元人質、現助手のエミール・キャステン(えみーる・きゃすてん)がラズィーヤに近づきました。
「現場の……神楽崎 優子(かぐらざき・ゆうこ)さんの判断に、お任せいたしますわ」
 にっこりとラズィーヤは笑みを見せました。
「その素敵な笑顔の裏で何を考えておられますやら?」
 エミールもまた笑みを浮かべて、けれども真っ直ぐに心を覗き込むような目でラズィーヤを見ています。
マリザ・システルース(まりざ・しすてるーす)さんからは、ヴァイシャリー家はどうして離宮の上に家を建てたのかという疑問が出ているようですよ?」
 深夜。寝る時間もほとんど取れない2人も、少しの間だけ休憩をとることにします。
「わたくしは……」
 ソファーに身を深く沈めて、扇で軽く仰ぎながらラズィーヤはエミールを見ずに語り始めます。
「離宮を浮上させたい、のです。ヴァイシャリー家に権利のある古代の宝や技術が眠っているのなら、当然手に入れることを目指すべきでしょう?」
「私欲の為ですか?」
「そんな風に見えます?」
 にっこり微笑み顔を向けたラズィーヤに、エミールは「冗談です」と首を左右に振りました。
「わたくしは、シャンバラの繁栄を願っています。ヴァイシャリーの貴族と民が幸せであることも。その為に――力は必要なのですわ。これからも戦乱が続くでしょうから。攻める力ではなく、護る力が必要なのです。防衛力は、敵の攻撃力よりはるかに勝ってなければ護りたい人々を護れはしません」
 エミールが先ほど冗談で言ったように、力を求めるならば私欲の為、圧政を行うためだと危険視する者も出ます。ラズィーヤは内心を語ることが出来ない立場にあるのです。
「街に被害が出るとなると、お父様も民からも反対が出るでしょう。ただ……離宮に向ったヴァイシャリーの民数百人に帰る手段がないとなったらどうでしょう」
「計算どおりな状況だと?」
「いいえ、計算で答えなど出せはしませんわ。ですが、想定の範囲内ではあります。予想外の事件も多発して……かなり苦しい状況であることも事実ですわ」
 もしかしたら、とラズィーヤは言葉を続けました。
 もしかしたら、ヴァイシャリー家の祖先は、被害を受けるのは自分の家だけにするために、離宮の上の地を私有地としたのかもしれない、と。
 離宮が眠っていると思われる場所に存在しているのは、ヴァイシャリー家と、ヴァイシャリー家が建てた百合園女学院、ヴァイシャリー家に連なる貴族の邸宅、その他ほぼヴァイシャリー家と縁のある建物だけのようで、一般人の建造物は殆どないと思われます。
「……さて。長丁場になります。脳の疲労には糖分が不可欠ですよ」
 そう言って、エミールはクッキーと砂糖を沢山入れたミルクティーをラズィーヤに出しました。
 ミルクティーを一口飲んで、ラズィーヤはそっと息をつきました。……再び、携帯電話が鳴り出します。

 ヴァイシャリー家と繋がりのある大病院の一室を借りて、白百合団団長の桜谷 鈴子(さくらたに・すずこ)は白百合団員と、協力し続けてくれている他校の信頼の置ける協力者を集めて会議を行っていました。
 この病院は早河 綾(はやかわ・あや)が入院している病院でもあります。
 また、先日人質交換に向った際に、重傷を負ったメンバーも入院しており、怪我を押して会議に出席しています。
 アレナ・ミセファヌス(あれな・みせふぁぬす)の姿もありますが、彼女は真っ青で今にも倒れそうに見えます。
「キメラの被害に遭った街の人々が続々と運び込まれています。この病院内は現在警備体制が整っていますので、桜井校長と一般の百合園生にはここで救護活動を手伝っていただきます」
 街では避難の呼びかけや誘導も行われており、自衛のできる生徒は引き続きそちらに回ってもらうつもりだと鈴子は言葉を続けました。
「多方面からラズィーヤ様の下に集まった情報と、極秘調査により組織の本拠地が判明しました。また、綾さんの記憶を頼りに作り出した組織の首領のモンタージュ写真と似顔絵が完成しております」
 鈴子は印しのつけられた地図と、髭を生やした中年男性の写真、似顔絵の含まれた資料を皆に配りました。
 現在の本拠地は歓楽街の外れにあるようです。大きな工場のような建物のようです。
 地図には『紫焔会』と書き込まれています。従業員数は100名前後のようです。
「ファビオさんとお知り合いの占い師、リーア・エルレンさんの占いによると、ファビオさんもどうやらその辺りにいるようです。おそらくは内部で拘束されているものと思われます。私は少数精鋭で白百合団員と他校の協力者の方と共に、裏口から本部に突入し救出を目指します」
 しかし、他に指揮を任せられる白百合団の班長や、信頼の置ける人物がいるようならば、指揮は任せて、自分は退路の確保に動くと鈴子は言いました。
「また、ヴァイシャリー家の許可の下、同時に組織本部とキマクにある拠点の1つの制圧を目指したいと思います。本部の方は白百合団を中心とし、他校の方と警備兵の方にもご助力いただけると思います。拠点の方は白百合団員達の他に出来れば神楽崎分校の方に動いていただければと思っています。情報流出に気をつけてくだされば、パラ実生を雇うなどしていただいて構いません。こちらは百合園ではなくヴァイシャリー家からの依頼となり、報酬はヴァイシャリー家の方で用意してくださるはずです」
「あの……っ」
 それまで俯いて黙っていた桜井 静香(さくらい・しずか)が声を上げました。
「もしそのどこかにメニエスさんがいたら、怪我させないようにして連れてきてほしいんだ。綾さんのように、何か深い事情があって、加担してるんだと思う、から」
「わ、私もいいですか」
 思い切って手を上げたのは、リーアに付き添っていた関谷 未憂(せきや・みゆう)でした。
イリィさんの誘拐に関わったと思われる……少年ですが、彼も何か事情がある……かもしれません。リーアさんを助けて下さった方も、そうでしたし」
 組織の一員である高崎 悠司(たかさき・ゆうじ)と未憂は何度か一緒に出かけたことがある仲です。
 彼の関与を写真を見て知ってから、何か理由があってであってほしいと未憂は胸に秘めていました。
「わかりました。お2人に関しては、手荒なことは極力避けるよう説明しておきます。ただ、相手が攻撃を加えてきた場合は……現場の判断にお任せすることになります」
 静香と未憂は鈴子のその言葉に神妙な顔で頷きました。
「それから……ファビオさんの救出は非常に困難だと思います。正直、成功の可能性が見えません。自分達の命を最優先に、すべきだと、私は思います……。向われる方は、無理はしないよう……ご覚悟お願いします」
 言って、鈴子は深く頭を下げました。
「私は、離宮に行きます。優子さんの……側に」
 続いて、アレナが青い顔のまま微笑みながら言います。
「離宮の再封印は私が適任だと、思います。優子さんもそうしろと言うと思います。だけど……一緒に残るって言ってくれるはずです、絶対」
 それから離宮に行く予定の者達に目を向けて、アレナはお願いをしたのです。
「無理やりでも、優子さんは地上に帰還させてください。お願いします」

 キマクの拠点では、移転の準備が始まっています。
 組織の幹部であるコリスは避難してきたジィグラ研究所の所長と共に、舎弟に満たないパラ実生を中心とした使いパシリに命令を下します。
「キメラを5匹貸す。準備が終わるまで、この拠点を死守しろ。功績を収めた者は俺の舎弟にしてやる」
「功績はどう判断するんですか?」
 そう質問をしたのは、何か目的があり、組織に関わっているマスクと名乗る男性です。
「忠誠心だな。どれだけ身を挺せるかってところか」
「……わかりました」
 マスクの目が真剣な輝きを放ちます。

 使用人居住区の地下にある機関室にいたソフィア・フリークスは、監視カメラの映像で、地下道に契約者やヴァイシャリー軍人が侵入していることに気付きました。
 しばらく様子を見た後、桐生 円(きりゅう・まどか)を部屋に残して、ソフィアは彼等の後方に光条兵器使いをテレポートで送りました。
「生き残れない、ね」
 仲間達が囲まれていく様子に、円も焦りを感じました。
 彼等は爆弾をセットすると、迷うことなく爆破を行いました。
 激しい揺れと爆音が響き渡ります。
 機関室には大人1人がなんとか通過できるくらいの穴が開きました。
 爆発で監視カメラが壊れたようで、現場を映していたモニターにはもう何も映っていません。
 爆薬を仕掛けた者や、付近にいた者は敵も味方も生きてはいないでしょう。
「タイム、リミットね……」
 ソフィアは僅かに自嘲気味な笑みを見せました。
「北塔の封印解かなきゃ。兵の送り込みも私が直接しなきゃいけないわね。――皆、滅ぼすわ。ヴァイシャリーに理想郷を築くために」
 ソフィアはそう言った後、くすりと暗い目で微笑みました。
「一緒に行く? それともここに残って隠れてる? 来てもいい事は何もないわよ、円」

担当マスターより

▼担当マスター

川岸満里亜

▼マスターコメント

こちらのシナリオは、百合園女学院のキャンペーンシナリオです。
第5回までは『闇組織編』『離宮編』と、分割して行ってきましたが、最終回は1本で行わせていただきます。
引き続き、離宮絡みは相談推奨です。

このシナリオではPL情報とPC情報の違いにご注意下さい。ガイドやリアクションに載っていても、知る手段のない情報は知っているとして行動することができません。
情報を交換できる状態のPC間で情報の受け渡しをする際には、双方のアクション欄にその旨お書きください。

基本的にはこれまでに築かれたお立場や、PCの思いから行くべき場所、行動を決めていただければと思います。

ダブルアクションにご注意ください。リアクションでの描写は原則1PC1シーンです。状況によって複数シーンに登場する方もいるとは思いますが、アクションは原則1つの事柄への行動にして下さい。MCとLCは基本的には一緒に行動をしてください。

四天王の称号をお持ちのPCは、キマクでの行動の際のみ、舎弟を従えた行動を可といたします。

●地上
避難に関してのご提案と、5回の両リアクションでの迅速なキメラ対策により、地上の避難状況は概ね順調です。
避難は頑丈な造りの建物に行われています。
獣系キメラが街に入り込んで暴れており、負傷者が出ていますが、死者まで出てはいません。
飛行系キメラは現在北塔の上辺りに集まっています。

●離宮
以下の4つの決着が考えられます。
1)早急に南へ撤退し、女王器の増幅の力を利用し、百合園女学院校庭に全員転送。一緒に転送してしまった兵器を校庭で殲滅。女王の血を受け継ぐ者の1人が離宮に残り離宮を封印。
2)最後まで、全ての兵器の破壊を目指す。任務を全うした後(失敗時は全滅)、生き残ったもので離宮を調査し、資料を持って地上へ帰還。他に方法が見付からなければ、女王の血を受け継ぐ者の1人が離宮に残り離宮を封印。
3)ぎりぎりまで防戦し、6騎士全員を離宮に呼び、味方全員帰還させた後、6騎士の誰かが残り再封印。
4)離宮を浮上させて、地上で決着をつける。
※特に説得がなければ、神楽崎優子は2)を目指します。これまでの展開的理由で3)の実現は不可能かと思います。
※兵器の破壊が終了したとしても、再封印は施す必要があります。外部からの離宮への侵入を完全に防ぐ為と、封印(結界)が不安定な状態だと将来的に陥没などの被害が発生する可能性があるためです。

●金の腕輪(PC情報にすることのできないPL情報です)
爆破装置と盗聴器が埋め込まれています。回線は携帯電話と同じです。半年くらいで電池が切れます。
(嵌めている本人は「組織への反逆行為を行った場合や、無理やり外そうとした場合爆発する」と説明を受けています)

●備考
転送術者は地上に戻ってきています(離宮にいた方で、正当な理由がある方は一緒に戻ってきたとして構いません)。
序盤に離宮への物資と援軍の転送が行われます。
東塔の状況が悪いため、ファビオの封印を解いて、直接送ることが本部で検討されます。特に意見出ず、妨害もなければ転送は東塔に行われます。
同時に、組織本部制圧、侵入作戦が開始されます。
(ファビオの封印が解かれたことを敵が知った時点で、ファビオは用済み、邪魔な存在となります)
本部制圧(奇襲)、侵入は白百合団の任務になります。一般の百合園生は知りえない作戦になります。
封印術は6騎士と、神子、アレナは知っています。レイルが女王器を使い封印を施す場合は事前に封印術を誰かが教えなければなりません。

●このシナリオ内の人物、兵器の強さ(このシナリオのみの目安です)
ヒグザ、6騎士、超熟練契約者>熟練契約者、白百合団班長NPC>平均レベルの契約者>経験の浅い契約者、無名白百合団員NPC、キメラ>機械系人造人間、石像(魔道兵器)>一般の契約者百合園生NPC(武器&戦う意思有)>光条兵器使い>ヴァイシャリー軍人

例えば、キメラと白百合団員NPCの場合、実力伯仲となり戦った場合、互いにただでは済まされません。白百合団班長NPCとキメラでは班長NPCの方が強いですが、班長NPCVSキメラ2体ならキメラの方が圧倒的に有利です。
神楽崎優子とアレナ・ミセファヌスは実力が出せる状態ではありません。

【関係NPCの動向】
ラズィーヤ・ヴァイシャリー(自宅待機)
桜井静香(病院で救護活動指揮)
桜谷鈴子(組織本部潜入もしくは退路確保)
ライナ・クラッキル(連絡要員として神楽崎分校待機)
神楽崎優子(離宮、指揮官)
アレナ・ミセファヌス(離宮に向う。再封印を行う際には、人柱として立候補)
レイル・ヴァイシャリー(別宅待機。女王器使用訓練中)
アユナ・リルミナル(ヴァイシャリー家に呼ばれる(友人は同行可能)。ファビオの封印解除を命じられる)
ミクル・フレイバディ(かなり回復。アユナに協力)
ミルミ・ルリマーレン(ジュリオの子孫。ヴァイシャリー家に呼ばれる(友人は同行可能)。ジュリオの封印解除を命じられるかも)
ラザン・ハルザナク(ルリマーレン家執事。必要に応じて登場)
パイス・アルリダ(本部への案内人として登場するかも)
ミズバ・カナスリール(白百合団員。必要に応じて登場)
リーア・エルレン(ほぼ全快。本部潜入班に同行)
早河綾(病院に入院中)
マスク(キマク拠点。応戦)

●扉絵イラスト(左から。敬称略)
SFM0000736 桐生 円(賢しきソフィアのパートナー)
SFM0002825 樹月 刀真(先遣調査隊隊長、攻略隊隊長)
SNM9998988 神楽崎 優子(離宮対策総指揮官、白百合団副団長、神楽崎分校総長)
SNL9999010 ラズィーヤ・ヴァイシャリー(6首長家ヴァイシャリー家一人娘、離宮対策本部長)
SFM0005135 朱 黎明(ラズィーヤの影の助力者)
SFM0007325 崩城 亜璃珠(神楽崎分校分校長)
SFM0004185 ロザリンド・セリナ(白百合団班長)
SNL9998987 アレナ・ミセファヌス(十二星華、神楽崎優子のパートナー)

ご登場いただいたPCの皆様、素敵なイラストを描いてくださった円原彩絵師様、ありがとうございます。

それでは、アクション楽しみにお待ちしております。

▼サンプルアクション

・ヴァイシャリーでキメラ迎撃

・キマク闇組織拠点襲撃

・闇組織本拠地襲撃

・離宮の兵器を破壊する

・守りたい人がいる

▼予約受付締切日 (予約枠が残っている為延長されています)

2010年07月24日10:30まで

▼参加者募集締切日(既に締切を迎えました)

2010年07月25日10:30まで

▼アクション締切日(既に締切を迎えました)

2010年07月29日10:30まで

▼リアクション公開予定日(現在公開中です)

2010年09月02日


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