薔薇の学舎

　鉄格子を眺めながら桜井静香（さくらい・しずか）は、これまでのことを思い返していました。

　まずは2020年12月21日の夕方。
　　校長室で血まみれで倒れているラズィーヤ・ヴァイシャリー（らずぃーや・う゛ぁいしゃりー）を発見。
　　そのとき時間が巻き戻り、21日が何度も繰り返されるループが発生し、ラズィーヤが幾度も殺される悪夢のような日が続きました。
　　静香自身がラズィーヤを心の底からパートナーと認めた事で、どうにかこのループからは脱出に成功したものの。

　しかし2020年12月22日の早朝。
　　静香は自分の身体が完全な女性のものになっており、しかも時間のループが再び始まっていました。
　　はじめのうちはわけのわからない事態に弱気になり、誰か任せで22日を繰り返していた静香でしたけれど。
　　生徒達に励まされ、ようやく他の誰でもなく自分が事態を収拾させるべく、動き始めました。
　　その結果明らかにされた犯人は、なんと静香の友人の西川亜美（にしかわ・あみ）でした。
　　亜美は猿の手という謎のアイテムを使い、静香の心の奥にある願望を叶えていたのですが。
　　静香は亜美からの助けを拒否し。その結果激昂した亜美は、今度は自分の願望を叶えることにしたのです。

　そして今日、2020年12月23日の真昼。

「亜美……どうして、こんなことを……」

　桜井静香は、なぜか身体が西川亜美のものへと変貌しており。
　そのことを誰も信じてくれぬまま、学院のどこかの部屋に閉じ込められていました。
　しばらく暴れていた静香でしたが。体力を消耗するだけだと悟り、今はおとなしくしています。

「これが、亜美の願いなのかな？　僕になって学院を掌握するのが」

　真偽を確かめようにも、朝方にやって来た亜美はもちろん、誰もここには近づいてこず。
　それからなにもできぬまま、太陽の白い光が動いていくさまを見つめるだけで、一日が終わりました。

　★　☆　★　☆　★　☆　★　☆　★　☆　★　☆　★　☆　★　☆

　気がつけば静香は、また12月23日の真昼にいました。
　日にちがなぜ繰り返されているのかわかったのかというと。
　小窓にいた雀が、前回とまったく同じさえずり方をして、まったく同じように逃げていったからでした。

「ループさえ起きていなければ、もうとっくにクリスマスも過ぎて新年明けてる頃なのに」

　わずかにナーバスになりかける静香ですが、今回は気合を入れなおしました。

「そうだ。またループしているってことは、亜美の心にもきっと迷いはあるんだ」

　これまで十何回とループを経験して甲斐あって、意外に早く静香は立ち直ることができました。

「なんとか、ここを脱出して亜美と話をしなくちゃ！」

　しかも亜美を助けたいとさえ思う姿勢すら見せ始めていました。

「さて。それでどうやって、ここ出よう」

　もっとも、その意気込みだけで部屋から出られるわけではありませんでしたが。


　その頃。
　桜井静香の身体を乗っ取った西川亜美は、校長室で頭を抱えていました。

（今回もループしているのね。ワタシの願いを叶えさせないつもりなのかしら……）

「静香さん、聞いていますの？」

　ハッと顔をあげれば、ラズィーヤがこちらを不思議そうに見つめながら、厳重に密封された鉄の箱を小脇に抱えていました。

「とりあえずわたくしは、もう少しコレについて調べてみますわね。願いを叶えてくれるアイテムなんて、興味をそそられますし」

　箱の中に入っているのは押収された猿の手と呼ばれるもので、時折ガタガタと震動しています。

（これまで、あんな風に自分から動くことはなかったのに。ワタシの魂を取ろうとでもいうの？　そんなこと絶対させないわ！）

　そんなことを思いながら、顔だけはにこりと微笑み。

「お願いするよ。でも、扱いには十分注意してね」

　とだけ言っておきました。
　心の奥で、危険なことはこの女にやらせればいいだろうと、ほくそえみながら。

百合園女学院のキャンペーンシナリオ、第三回です。
これまでと同様に抽選では百合園が有利になっております。

今回、静香はループに捕まっている上に、亜美の身体になっているため学院の生徒達すら敵という状況です。
いかにして彼女を助け、ループを脱出するか……皆さんのアクションに期待しています。

今回のキャンペーンでも特別なルールがあります。
ただし前二回までとは若干異なる点もあります。

●ルール１『ループに気付く！』

今回も掲示板の「あいさつ」スレッドに書き込みを行ったキャラクターは、どこかのタイミングでループに気付くことができます。
異常に気付いたという前提でアクションを書いてください。ＭＣがあいさつしていればＬＣも気付くことができます。
あえてどちらかを気付かせないアクションの際は、そのようにアクションに明記しておいてください。

●ルール２『偽静香の護衛につく』

「あいさつ」スレッドに書き込みを行わなかった人は、ループに気付くことができません。
そのかわり、「偽静香の護衛につく」アクションを実行できます。

◎ルール３『静香が偽物だと気付く』

そして。今回はもうひとつこのルールがあります。
ルール３については、ループを認識していようといまいと気付くことは可能です。
ただしこれは、桜井静香、西川亜美のどちらかと会話をかわしたことのある人間に限られます。
勿論【静香サーキュレーション】シナリオだけでなく、別シナリオで静香と話したことがあれば大丈夫です。
加えて『静香が亜美になって、亜美が静香になっている』と気付くことができるのは、静香と亜美の両方と会話したことのある人間だけです。


さらに。
ＮＰＣに対するアクションも多少変更があります。アクションをかけられるキャラクターは以下の通りですが、

・高原　瀬蓮
・アイリス・ブルーエアリアル
・桜谷　鈴子
・ミルミ・ルリマーレン
・ライナ・クラッキル
・村上　琴理
・セレスティアーナ・アジュア
・泉美緒

今回彼女たちは、偽静香の命を受けて亜美の姿をした静香を捕まえるよう言われています。
要するに敵役です。
それゆえ、彼女たちをなんとか説得して味方につけたほうがよさそうです。
でないと力でねじふせることをしなくてはいけなくなるかも……？


今回も、シナリオの舞台は基本的には百合園校舎内となっています。
校外に出るアクションは成功率が下がりますのでご注意ください。

それでは、これまでのシナリオに参加してくれた方も、そうでない方も、皆さんのご参加をお待ちしております。

・本物の静香と一緒に行動する！

・ループを抜け出したい

・協力者を集めよう！

・亜美（？）を捕まえておく

・静香（？）の護衛を頑張ろう