薔薇の学舎

　霧に包まれた魔族の都タシガン。ジェイダス・観世院（じぇいだす・かんぜいん）が校長を務める薔薇の学舎もこの都市の中にあります。
「美しい……」
　ジェイダスは校長室より、馬小屋に繋がれている白馬たちを見降ろしていました。いずれも薔薇の学者に通う生徒達の愛馬で、毛並みが良く気品にあふれています。
「美しい者がその身体を預けるものには、それ相応の美しさが伴っていなくては……そうは思わないか、ルドルフ？」
　ジェイダスの後ろには、13人しかいないイエニチェリの一人、ルドルフ・メンデルスゾーン（るどるふ・めんでるすぞーん）が控えています。
「ですが、美しさには強さが伴っていなければ意味を成さないかと」
　するとジェイダスは藍色の前髪を描き上げ、高らかに笑い出します。
「くっくっく、その通りだよルドルフ！」
　ジェイダスはひとしきり笑った後、ゆっくりとルドルフに近づき、彼の頬に手を伸ばしました。
　床に映る二人のシルエットがわずかですが重なりました。
「いかがでしょう、我が校の生徒の乗馬の腕前を他校の生徒と競わせてみるというのは？」
「私も同じことを考えていたところだよ。蒼空学園の小型飛空艇、イルミンスールの空飛ぶ箒、シャンバラ教導団の軍用バイク、波羅蜜多実業高等学校のスパイクバイク……いずれにも、美でも強さでも勝らなければならない」
「はい」
「各校長に連絡を頼むよ。このジェイダス・観世院がレースを主催する、とね」
　ジェイダスはルドルフにレースの概要を伝えていきます。
　コースはタシガン市街一周です。美しさはもちろん、強さも求められるレースですから、二人乗りで他の参加者を妨害しても問題ないそうです。ただ、チェックポイントが地上に設置されるそうですから、霧が濃いタシガンです、小型飛空艇や空飛ぶ箒で上空からチェックポイントを探すのは難しいと予想されます。
　また、乗り物を持っていない生徒には、所属する学校に応じた乗り物が貸し出されるそうです。
　ただし、百合園女学院の生徒には乗り物は貸し出されませんので、他の参加者と相乗りしてください。この機の『白馬の王子様』を見つけてみてはいかがでしょうか。
「最後に優勝商品だけど……私から100万Ｇ相当のものを贈ろう」
「恐悦至極に存じます」

　後日、ルドルフの名前で、各学園にジェイダス主催のレースのお知らせが届きました。
　ジェイダス個人の主催ということで、学園を問わず参加できます。
　霧が多く視界の悪いタシガンでは、スピードの出しすぎには注意が必要です。ちなみに、小型飛空艇はスクーター並みのスピードが出ます。

　はたして、優勝という栄光は誰のものになるのでしょうか？

霧深きタシガンで第1回ジェイダス杯が開幕します！

レースに使用する乗り物は、薔薇の学舎の生徒ならば白馬、
シャンバラ教導団生ならば軍用バイク、パラ実生ならばスパイクバイク、
蒼空学園生ならば小型飛空挺、インスミール魔法学校生ならば空飛ぶ箒となります。
それ以外の乗り物による参加は不可です。

百合園の生徒は乗り物を借りることはできませんので、相乗りが必須となります。
逆ナンするのも良し、王子様の訪れを待つのも良し、
パラ実生にさらわれるのも良し！お好みのシチュエーションでどうぞ。

二人乗りをすれば、一人が運転に集中できるため、
もう一人がナビゲートや妨害工作、妨害防御に専念できる
というメリットがありますが、
代わりに「スピードが落ちる」というデメリットがあります。

その他の注意事項は以下の通りです。

霧対策として暗視スコープ等の特殊装備を持参したり、
妨害用のランチャー等、乗り物に特殊改造を施すことはできません。
レースの前に罠を張ることもできません。

また、チェックポイントは全部で３カ所です。
「通過の証」が置いてあるだけの場所もありますが、
吸血鬼が待ちかまえているチェックポイントもあります。

皆さんの知恵と勇気で、華麗なる勝利を手に入れてください！

・堅実に走る

・他者を妨害する

・白馬の王子様を探す