薔薇の学舎

「学園の傍で洞窟を見つけたんだ。肝試し大会に使ってみないか？」

　誰かがそんな事を言い出しました。
　折りしも季節は夏真っ盛り。
　エネルギーに満ち溢れている蒼空学園の生徒であれば、どんな企画でも盛り上がる……いえ、盛り上げてみせるはず。
　肝試しを知らないパラミタ人のパートナー達も、興味深々といった様子。
　気がつけば他校生までも巻き込んだ、一大イベントになろうとしていました。

「暗がりにパートナーと二人きり……」
「怖がるあの子を守って、男気を見せるチャンス！」
「ドサクサに紛れて、彼に抱きつけるかも……」
「脅かす側なら、チェーンソーを使いたい放題だぜェェェェ！」

　多くの生徒は、そのような淡い期待といささかの誤解を抱きながら、着々と肝試し大会の準備を進めていました。

　そして肝試し大会当日……

「遅いなぁ。準備はまだ終わらないのかな？」
「だよな。仕掛け側が洞窟に入って、もう三十分も経ってる」
「トラブルが起きていなければいいけれど……」


「キャアアアアアアアアアアアアアアアアァァッ！」


　そのような不安は、洞窟の中から聞こえた悲鳴に裏打ちされました。
　髪を振り乱し、ボロボロの衣服をまとった女生徒が一人、足を引きずりながら洞窟の奥から逃げてくるではありませんか。
　そして彼女を追って、洞窟中から溢れ出さんばかりの人影が……
　いえ、『以前はヒトだったモノ』たちの影が見えたのです。

「ゾ、ゾンビか？！」
「なんて数だ……こいつらがツァンダの街を襲ったら……」
「それに、洞窟内の人たちも助けなきゃ！」
「ヒャッハァー!　チェーンソーで、ブッた斬り放題だぜェェェェェ！」

　このようにして、真夏の夜に繰り広げられる惨劇の幕が、切って落とされたのでした。
　

皆さん、こんにちは。マスターの刻環　響と申します。
今回は夏らしく、ホラーテイストのシナリオをご用意いたしました。
街一つを壊滅に追い込むかもしれない未曾有の危機に、生徒達はどう立ち向かうのか？
学園の垣根を越えて結ばれる絆で、どうかこの難局を乗り越えてくださいね。

状況について補足しますね。
舞台となる洞窟は鍾乳洞で、形成されてから長い年月が経過しています。
洞窟内は深部に向かってなだらかに下っているものの、ケイビングを必要とする程の高低差はありません。
入り口から遠くないところに鍾乳石、石筍に彩られた巨大な空間があります。
巨大空間には過去に多数の人間が生活した痕跡が残されており、洞窟内を加工した痕跡も見られますが、詳細の把握には調査が必要です。
そこからは複数の通路状の穴が延びていますが、詳細は不明。その穴からもゾンビが湧き出しているようです。

・とにかく洞窟内に斬り込んで、ゾンビの数を減らす

・洞窟入り口に救護施設を作り、バックアップをしながら漏れ出るゾンビを仕留める

・極力戦闘は避け、洞窟内メンバーの救助を急ぐ

・ゾンビ大量発生の理由を探るべく、洞窟内で別行動を取る