薔薇の学舎

　蒼空学園の校庭のベンチに腰を下ろし、水筒から注いだお茶を一口。
　ほ、と白い息をついて、白鞘　琴子（しらさや・ことこ）は空を見上げました。
　空はまだ冬の灰色。
　けれど、春はもうすぐそこまで来ています。
　
　ひなまつりの歌を一節口ずさんで、琴子はこの時季に故郷日本で行われる行事を思います。
　
　　　赤い雛壇、桃の花。
　　　　お内裏さまとお雛様。
　　　　　ちらし寿司に潮汁。
　　　　　　白緑桃の菱餅にひなあられ。
　　　　　　　　笑いさざめく女の子の声。
　
「懐かしいですわね……」
　桃の節句の頃にはまた日本に里帰りしようかと考えて、琴子は思い直しました。
　今年はここで桃の節句を迎えてみようかと。
「でしたら、何か趣向を凝らしたいですわね……」
　お茶を飲み飲み、琴子は考えるのでした。
　
　
　
　　　――　琴子からのお誘い　――
　
　３月３日、空京にて曲水の宴と流し雛の真似事をしようと思いますの。
　ホテルに滞在しているお客様に日本の春の様子をお見せする催し物をする、ということで、素敵な日本庭園を無料でお借りしましたの。
　そこで、催し物にご参加いただける方を募っていますの。
　
　曲水の宴は、遣り水を流れてくる盃が、自分の前を通り過ぎるまでに、お題にそった俳句を詠んでいただくというもの。
　お題は……『春』、あるいは『大切な人に伝えたい言葉』といたしましょうか。
　といっても、正しく俳句になっている必要はありません。
　『五・七・五』の区切りになっていればそれで構いませんの。
　詠めましたら、盃を取り上げて飲んで下さいましね。詠めなければ、盃はそのままに。
　盃の中身は、成人している方は白酒。未成年の方は甘酒です。成人していらっしゃる方でも、甘酒が良いという方はそうさせていただきますわね。
　こちらは、男性は衣冠束帯の殿上人、女性は十二単、あるいは小袿、となります。まるで平安絵巻のようですわね。
　
　流し雛はご存知の方も多いですわね。
　流し雛の方法は２つ。
　まずはこちら……空京神社で、紙の形代をいただいてきましたの。
　こちらに罪穢れやをうつして、遣り水に流すのです。
　もうひとつは……この和紙の人形。顔にあたる部分に願い事を書いた紙を差し込み、願いを抱かせて桃舟に乗せて流すのです。
　無病息災を願う方は形代。願いがある方は和紙人形をお使い下さいましね。
　
　そんな行事は……という方は、庭を歩いてみませんこと？
　梅林というほどの本数はないのですけれど、白梅、紅梅が見頃だそうですわ。
　お独りでゆっくり、２人肩を寄せ合って、お友だち同士で仲良く。
　ゆっくりと梅の香を楽しんでくださいまし。
　
　あらそれも気が進みませんの？
　ではやはり、これでしょうか。
　ちらし寿司に潮汁、ひなあられ。
　桃の節句に似合いそうな食べ物もちゃあんとありますのよ。
　ホテル側に準備してもらうつもりですけれど、差し入れしてくださる方も大歓迎ですわ。
　
　わたくしは裏方で会場の準備、飾り付け、最後の片づけ等をいたします。
　こちらを手伝っていただけるのも、とても有り難いですわ。
　
　では。
　３月３日、皆様のご参加を楽しみにお待ちしておりますわ。
　

　
　皆さまこんにちは。桜月うさぎです。
　
　今回は、雛祭りの時季に似合いそうなものをぎゅーっと詰め込んでみました。
　曲水の宴も流し雛も、行われる場所によってルールはいろいろあるようですけれど、今回は空京流、ということで、小難しいことは気にせず雰囲気を楽しんで下さいませ。
　
　舞台は空京なので、どの学園の方もどうぞ。初心者でもお気軽に。もちろん玄人さんも遠慮なく〜、のシナリオです。
　お友だちと楽しんでいただいても、デートに使っていただいても、お独りでのんびりしていただいても、琴子と過ごしてくださっても構いません。
　
　ホテル側の好意で、会場費、貸衣装、料理は無料です。その代わり、ホテルに滞在しているお客さんが見物にやってきます。半ば、催し物のアルバイト、ですね〜。写真を撮られたり、なんて可能性もありますので、そういうのが厭な方は何か対策を講じておいてくださいね。
　
　では……。
　早春のひととき、皆さまとのんびり過ごせるのを楽しみにしています。
　

・曲水の宴に参加する

・雛流しに参加する

・梅花の下をそぞろ歩く

・ひなまつりの料理を楽しむ

・裏方で奮闘する