――二週間前――
「こすこん、ってなに?」
空京、桜の森公園。空京の片隅にある広大というほどでもなく、小さいというほどでもなく、ほどほどの規模の、季節になれば桜が綺麗な公園です。今はあいにく、枯れ木のようですが。
そこに住まう地祇、さくらは、渡された書類のタイトルを読んで首を傾げました。
「コスプレコンテスト、の略よ。今うちのサークルで、ハロウィンに合わせて企画してるんだけど、よかったらまた、会場として公園を貸してくれないかしら」
蒼空学園レクリエーション研究会会長、ノリコ・ラージャードは、差し出した書類を一枚めくってさくらに示します。
そこには、当日のタイムテーブル(仮)から、スタッフの分担表(予定)、果ては会場配置図(仮)までが、既に公園を使えるものとして組上げられていました。抜け目がありません。
「つまり、コスプレの完成度を競う大会ってこと?」
こすぷれ、ならさくらも知っています。いろいろな衣装を着て楽しむ遊びです。有名な漫画やアニメーションのキャラクターに扮したり、中には、実在の有名人の格好をまねる人もいますし、自分のオリジナルキャラクターを作り出してなりきる人も居ます。それを専門にしている「コスプレイヤー」というクラスまであることも、さくらは知っています。
「競うのは完成度だけじゃないけどね。大体合ってるわ」
さくらの答えに、ノリコは満足そうに頷きます。
「別にいいけど、どうしてウチなの?」
「景色の綺麗なところでコスプレしたい! って人は多いのよ」
そう言ってウインクひとつ。
かくして、空京コスプレコンテストは開催の運びとなったのでした。
そして、本日。
桜の森公園には、色とりどりの衣装を纏った人々の姿がありました。
折しも今日はハロウィン当日。会場はオレンジと黒を基調とした飾り付けがされ、とても賑やかです。
普段からこっそり、あるいはおおっぴらにコスプレを楽しんでいる人達は、さあ出番とばかりに自慢の衣装で着飾って居ますし、普段はコスプレなど縁がない、という人も、会場のハロウィンムードに後押しされて、マントを纏ったりカチューシャを付けたり、ささやかな仮装を楽しんでいます。
さあ、あなたも是非、ご一緒に。