タシガン空峡沿岸部のツァンダに所属する小さな街≪ヴィ・デ・クル≫。
この街の噴水広場に設置された掲示板にパーティー会場でのアルバイト募集が貼りだされました。
また同様の内容の手紙が、生徒達の自宅にも届けられました。
あなたは話だけでも聞いてみようと、指定された宿屋に向かいました。
そこではジェイナスと名乗る20代前半の男性は、優しく笑いかけてあなたを向かい入れました。
「よく来てくれた。俺はジェイナス。当日、会場の警備にあたる。よろしくな」
自己紹介を終えるとジェイナスは、猫耳をつけた機晶姫の女の子を紹介しました。
「この子は会場内で来賓の対応をしてもらう、メイドのあゆむだ」
「あゆむです。頑張ってパーティーを大成功させます。よろしくお願いします!」
気合たっぷりで宣言するあゆむ。するとジェイナスは軽く咳払いをしました。
「あゆむ。そうではないだろう」
「あ、そうでした」
あゆむは恥ずかしげに頬を染め、小さく舌を出しました。
「あゆむは全力でパーティーの邪魔します!!」
あゆむの「邪魔する」発言に驚くあなたに対して、ジェイナスが事情を説明しました。
「実は今回のパーティーは、俺の親友であるミッツ・レアナンドを婚約させようと、その親父さんが開いたお見合いなんだ」
ジェイナスは会場にはミッツの実家の財力目当ての女性が多く参加していることを話しました。
もちろん、ポミエラ・ヴェスティンのように純粋にパーティーを楽しみに来た来賓もいるのですが……。
「そういえばミッツは「理由はどうあれパーティーに来てもらったんだから楽しんでもらいたいよな」とか言っていたな」
ジェイナスは口角を上げて少しだけ笑っていました。
今回の目指すべき目標。それは『パーティーは無事成功したが、お見合いは失敗した』ということになるのです。
「望まない結婚は絶対に許せません! ミッツさんには幸せな結婚をしてもらいたいと思います!」
「詳しい方法はあゆむと会場に向かう者達で話し合ってくれ。俺は≪灼熱の猿王――タル≫、≪雷鳴の魔人使い――アンダ≫の対策を練ることにしよう」
拳を握りしめて意気込むあゆむに対して、ジェイナスは冷静な態度でミッツが≪アヴァス≫に命を狙われている情報を手に入れたことを話しました。
「彼らは私情により独断で動いている……ほんと、迷惑な奴らだよ」
ジェイナスは一瞬だけ表情を歪めて舌打ちをしましたが、すぐに笑顔であなたに手を差し伸べます。
「俺はミッツ・レアナンドに研究を続けてもらうために手伝う。君も気が向いたら力を貸してくれか?」
思惑渦巻くパーティーが、まもなく開かれようとしているのです……。