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シナリオガイド

リストレイター最大の危機!?叶えるのはスウィップの願い?それとも――
シナリオ名:ようこそ! リンド・ユング・フートへ 3 / 担当マスター: 寺岡 志乃

    ここはリンド・ユング・フート。
    人の無意識の底にある、知識の源。
    そこを流れる1つの川、1つの夢、それは1つの意識――――――



「ここ、どこだろ?」

 リーレン・リーン(りーれん・りーん)は辺りをぐるっと見渡しました。
 360度、さまざまな所に本がぎっしり詰まった本棚がふよふよ浮いています。
 浮いているだけではありません。
 飛・ん・で います。
 しかも背景は、どピンクを基調とした七色の壁に、キラキラ光る星のような点々…。
 上も下もなく、前も後ろもない空間。

「あー、そっかぁ。夢かぁ」

 リーレンはあっさり結論づけて、ぽんと手を打ちました。

「どうせ夢なら、おいしーパフェのある喫茶店の方がいいのになー。パフェ食べ放題の夢ならよかったのに」

 とかぶつぶつつぶやいていたら。

「いやもうそれいいだろ」

 シパーーン、とどこから出したのか緑のスリッパで後ろから松原 タケシ(まつばら・たけし)が後頭部をはたきました。

「いたーーーーいっ。何すんのよっ、タケシ!」
「3回目なんだからいいかげんすぐ思い出せッ!! ここはリンド・ユング・フートだ! 集団無意識世界の図書館!」
「リンド・ユング……? ――あーっ! スウィップちゃん!」

 後頭部から手を放し、リーレンは周囲をキョロキョロ見渡します。
 すると――――――いました。
 というか、ありました。
 マンガの中でしか見たことないような真っ黒いおどろおどろ線に取り囲まれた中、体育座わりをしたスウィップ スウェップ(すうぃっぷ・すうぇっぷ)の丸まった背中が。

「うあー。どうしたんだろ? なんか、すんごく落ち込んでるみたい」

 ぱたぱたぱた。2人は波打つ道なき道を走って、スウィップの元までたどり着きます。

「スウィップちゃ――」

 近づく気配で2人に気づいたスウィップは、キッと振り返るやいなや、手元のタクトを突き出しました。
 パカーーーンと、カウンター気味にリーレンのあごに入ります。

「いったーーーーいっ!!
 な、何するのよスウィップちゃん!! あご割れちゃうかと思ったじゃない!」

 リーレンはそう言って怒ろうとしましたが、スウィップを見た瞬間、その文句は口から出なくなってしまいました。
 2人をにらみつける両目から、ポロポロポロポロ涙がこぼれていたからです。

「あ、あの……スウィップちゃん?」
「どうした? スウィップ。食いすぎで腹でも痛いのか? ――いたっ、いたっいたっ」

 ぽかぽかと、タクトがタケシの頭めがけて振り下ろされます。

「うわ、ちょ、ごめん! ごめんって! ちょっと冗談言ってみただけだってっ」
「ばかばかばかっ! 全部あなたたちのせいなんだからーっ!!」
「わ、分かった、分かったからとりあえず叩くのやめーーっ!」

 タクトを持つ手をなんとか掴み、タケシたちはスウィップを押さえ込みます。
 ポロポロ涙をこぼしながらスウィップが語ったのは、つまりこういうことでした。

 前回リストレーションした『オペラ座の怪人』があまりにひどすぎて、検閲官のお叱りを受けたというのです。

「……あー……まぁ、ウケを狙いすぎた感はあったよなぁ」
「ってゆーか、スウィップちゃんの願望自体、それだったんじゃん。あたしたちはそれをかなえただけ――」
「わ。ばか、それ禁句!」

 タケシはあわててリーレンの口をふさぎましたが、遅く、それを聞いたスウィップの目には、再び涙がもりもりと――――。

 氷の検閲官を笑わせたい、それが前回のスウィップの希望でした。
 そうして呼び込まれたリストレイターたちによって、彼女の望み通りにリストラされた本は、しかし氷の検閲官の笑いを誘うどころかあきれを買ってしまったのでした。

「あのー、スウィップ…?」

 おそるおそる声をかけたタケシの前に、1冊の大判の本が突き出されます。

「今回、あなたたちがリストラするのはこれよ!」
「――え? でも、これ…」

 渡された本の表紙を見て、タケシは眉を寄せます。
 何かの間違いじゃ…? そう、訊き返そうとした彼に、スウィップはさらに言いました。

「彼が言ったの!『新書はきみには少し難しすぎたようだね。ここから始めてもらうべきだったようだ』って!」

 口にすることでそのときのことを思い出してしまったのか、スウィップは、再びポロポロ涙をこぼし始めます。
 その涙をゴシゴシっと袖口でこすり落として、彼女は言いました。


「今度は真面目にリストレーションしてね! 今度失敗したら、ただの司書に降格させられちゃうかもしれないんだから!」


「って言ってもなぁ…」

 タケシは、いかにも弱ったといった顔でポリポリ頭を掻きます。

「なになに?」

 ひょこっと覗き込むリーレン。
 彼の手に握られた本の表紙に書かれていた文字は――――――『マッチ売りの少女』
 次の瞬間。

「どっ、童話なの!?」

 リーレンの大声が、リンド・ユング・フート中に響き渡ったのでした。

担当マスターより

▼担当マスター

寺岡 志乃

▼マスターコメント

 こんにちは、または初めまして、寺岡 志乃といいます。
 こちらのシナリオは、お騒がせ、何でもアリのドリームイベントシナリオになります。
 今回で3回目になりますが1話完結のシナリオですので、初めての方でも問題なく参加できます。


 現在、集団無意識界の図書館リンド・ユング・フートでは、皆さんの無意識における知識を食い荒らす謎の存在が暴れています。そのため、いくつかの書物(知識)が食い荒らされてしまいました。
 その修復をお手伝いしていただきたいというのが、スウィップ・スウェップからのお願いです。


 修復してもらう本は『マッチ売りの少女』。この本の中では今、雪の降るおおみそかの昼の街の光景しかありません
 もちろんリンド・ユング・フートへ来た全員がこの話を知っているはずなのですが、そこから先を全く覚えていません
 『マッチ売りの少女』というタイトル以外、全くド忘れ状態です。

 ちなみに『マッチ売りの少女』の主たる場面は以下のようになります。

 【1】おおみそかの雪の降る街のシーン。
 【2】はだしでマッチを売り歩く少女のシーン。
 【3】マッチが売れず、空腹で凍えているシーン。
 【4】おおみそかを祝うパーティーを開いている家を覗くシーン。
 【5】家に帰れないと泣くシーン。
 【6】マッチに火をつけ、幻を見るシーン。
 【7】死んだおばあさんと再会するシーン。
 【8】早朝凍死した少女が見つかるシーン。

 このうちのどれかのシーンでもいいし、それ以外のシーンでも構いません。
 この通りの進行でも、はたまたオリジナリティあふれる創作でも、それは皆さんのお好みで。
 どのシーンで何をするか、アクションに盛り込んでください。

 ※少女の名前がないとシナリオを書く上で支障が出そうなので、便宜上このシナリオの中では少女の名前を『セラ』とします。
  セラは8歳です。


 修復の方法としまして、タケシとリーレンに呼ばれてリンド・ユング・フートにやってきた皆さんは、スウィップ・スウェップの用意した扉をくぐり、本の中に入ります。そしていくつかの場面で少女や脇役たちを説得したり誘導したりして、お話を作っていただきます。
 (服装はスウィップが整えてくれます。そのため服装・武装欄は参照しません)

「きっとここはこうに違いない!」
「この方がいいよね!」
「マッチなら全部わたしが買ってあげる!」
「おれが少女になって、代わりに売り歩いてやるよ!」
「わたしがおごってあげるから一緒にごはんしよ!」

 そんなふうに場面場面を作り上げていってください。もちろんラストも好きに作ってくださって構いません。
 必ずしも上の【1】〜【8】の展開通りにする必要はありません。
 ただ、どこに入れればいいか分からなくなるので「【3】で食事に連れて行く!」とかいうふうに場所指定は入れてください。
 (「世界を堪能する」といった、リストレーションに関係ないアクションをされる場合は入れる必要はありません)

 登場人物になりかわって動くこともアリ! 一度目にしたものなら女性でも男性でも、はたまた犬・鳥にだってなれます!
 ここは本の世界で、皆さんはクリエイター権限を持ちますので何でも自由創作が可能なのです!

 でも、あまりに話の本位とかけ離れた荒唐無稽なもの・想像でしか知らないものを創り出すことはできません。創造は「知っている」ことが条件となります。知らないものは作ってもかなりお粗末な出来となります。
 ただし、スウィップは皆さんのクリエイター権限よりも上のライブラリアン権限を持っていますので、逸脱行為が目にあまると強制排除をかけてきます。くれぐれも悪ノリにはご注意くださいね。


 なお、このことにより現実世界での本作品自体の改編はできません。あくまでこれは人々の無意識下の認識(知識)の創作です。
 もっとも、していることはインプリンティングですから、現実世界でオリジナルを読んだとしても、今後はこの内容のように認識して記憶に残ることになりますが……。


 今回、この本の修復が無事完了しましたら、氷の検閲官もスウィップの仕事ぶりを見直してくれるかも?


 皆さんのアクションで作られる『マッチ売りの少女』を、楽しみにお待ちしております。

▼サンプルアクション

・登場人物を動かす

・登場人物になる

・世界を堪能する

▼予約受付締切日 (既に締切を迎えました)

2011年12月20日10:30まで

▼参加者募集締切日(既に締切を迎えました)

2011年12月21日10:30まで

▼アクション締切日(既に締切を迎えました)

2011年12月25日10:30まで

▼リアクション公開予定日(現在公開中です)

2012年01月10日


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